第62話.明るい兆し
月曜日になり、また1週間の億劫な学校生活が幕を開けた。
金曜日はみずなからDMが来て、土曜日に事務所まで行き、日曜日には3期生で作戦会議。
週末が濃ゆすぎて、休んだ感覚がしないんだよね……。
そんなことを考えながら朝の支度を終わらせ、学校に向かうべくマンションを出ると、近くで祐希が待っていた。
「よっ」
「あれ、祐希じゃん。僕より早いなんて珍しい。どうしたの?」
いつもは僕が先に学校に向かってて、後ろから祐希が走って追いつく感じなのに。
「ちょっと凪の耳に入れておいたほうが良さそうなことがあってな」
「え、昨日の今日なのに?」
「あの後、俺んちと凪の家の間に公園があるだろ? あそこを突っ切って家に帰ろうとしたら、ブランコに泣いてる女の子がいたんだよ」
「祐希、人を泣かせたらだめだよ?」
「なんでそうなるんだよ! まぁ、さすがに見捨てれなかったからその子の方に近寄ったんだよ」
「祐希、誘拐とかしたらだめだよ?」
「だからなんでそうなる!? そしたらその子の顔が傷だらけだったんだよ」
「公園で怪我したんじゃない?」
「それが、古傷から真新しい傷まであったんだよな。それも大量に」
大量って……想像するだけでも痛々しいよ……。
「いじめとか、もしかしたらDVとかにあってるのかな……」
「どうやら昔は両方だったらしいんだが、今は不登校だからDVだけ続いてるみたいだ」
「うわぁ……」
「けど、凪の耳に入れてほしいのはそこじゃなくてだな」
「もう十分僕も痛いんだけど……」
「すまんがこれまで聞いてくれ。その子がこう言ってたんだよ。今はお父さんにやりたくもないことをやらされてる、そのときにチャットで助けを求めてるけど、誰も気づいてくれない。あ、あと俺が通報してもうまく隠されてるから意味が無いとも言ってたな」
……知ってる。それと同じような情報を僕は知ってる。
「え、待って。つまりみずなはこの近くに住んで──」
「おっと、もう大通りだ。さすがにこの辺からは話せなそうだし、また後で3期生全員に伝えるときにな。とりあえず、そう、とだけ言っておくわ。あと、まだみずなって確定したわけではないからな!」
そう言って、祐希はまったく別の話題を始めるも、僕はその子が気になりすぎて、あまりその話を聞いてなかった。
偶然にしても、これは大きすぎる情報すぎる……!




