七夕特別編.男友達での七夕
「今日七夕だね〜」
「そういえばそうだっけか」
「祐希はもうちょっと日付に興味を持とうね?」
そんなことを、恒例にもなってきた3人での昼食を食べているときに、早乙女くんが話してくる。
7月7日。それは年に1度、織姫と彦星が天の川を渡って出会える特別な日。
「あ、そういえば、今日近くの神社で七夕祭りするらしいよ」
「へぇ〜。僕、友達いなかったから、そういうお祭り行ったことないんだよね〜」
「あ……ご、ごめんね? 気が回ってなくて……」
「あ、いやいや、そういう意味じゃないから! 全然気にしなくていいよ!」
「そういうことなら、このあと3人で一緒に神社行かね?」
祐希がそういった瞬間、もう慣れてきた視線がクラスから飛んでくる。
「おっ、それは僕も賛成〜。何気に、凪と祐希と学校以外で過ごしたことなかったしね」
「……え、それ僕死なない?」
「いやなんで」
「だって、2人とも容姿は整ってる方じゃん? その中に、誰がどう見ても陰キャって分かる人が入ったら、そりゃあねぇ……」
「それじゃあ、僕が凪の髪型とかセットしてあげるからさ」
「なんも変わんないと思うけど……そこまで言うならちょっとだけだよ?」
「めっちゃイケメンになったりしてな」
「凪は僕の家に来てほしいけど、場所わからないよね? 凪がよければ、学校終わってそのままうちに来てもいいけど」
「1人暮らしだから、全然行けるよ〜」
「なら祐希は先に神社行って待ってて」
「りょ〜かい」
ということで、視線に怯えながら僕は神社に行くそうです。
最後の授業が終わり、帰りのHRも終えたあと、僕は早乙女くんを連れてすぐに教室を出た。早く神社に行きたかっただけで、別にクラスの視線が痛かったわけではない。
☆
早乙女くんがバッチリ整えてあげるって言ってたのに、髪を少し整えただけで終わってた気がした……。
これって、手入れのしようがなかった、ってことなのでは……?
髪が横に流され、メガネも外しているので、いつも以上に太陽の光を直接感じる。慣れてない光でちょっと眩しい。
そうして、早乙女くんと神社まで歩いていると、同じく神社に向かっているであろう人たちとも当然すれ違う。
「……ねぇ、あの2人さ、めっちゃかっこよくない?」「ほんとだ、やば」「俳優かなんかかな?」「目の保養〜!」
その度に声が聞こえた気がするけど、距離もあったし祭りで普段より騒がしいこともあって何と言っているかは聞こえなかった。
まぁそりゃそうだよねぇ……。いくら整えてもらったからって、早乙女くんが隣りにいるし、もともとの僕の容姿もあるし……。
声が聞こえるたびに早乙女くんが苦笑してた気がするけど、何だったんだろ。
そうしていると、神社前でスマホを見ながら待ってる祐希の姿が見えた。
「祐希、おまたせ」
「おっ、凪は随分印象変わったな」
「でしょ? 髪上げるだけで全然変わったんだよね」
「普段からしたら……いや、凪がするわけないか」
祐希がなにか言った気がするけど、周りの騒がしさにかき消されてよく聞こえなかった。
「んじゃ、早速中行くか。凪も長い間ここにいるのもきついだろうし」
「ありがと。すっごい助かる……」
境内に入ると、めちゃくちゃ派手というわけでもないけど、七夕らしさを感じる飾り付けになっていた。
「う〜ん、何する?」
「あっ、あそこに短冊かけれる場所あるし、みんなで書かない?」
「ん、七夕らしくていいかも」
そうして僕らは短冊を書きに向かう。
笹には、既にたくさんの短冊がかけられていた。
子供の字で【かぞくでたのしくくらせますように】といったものから、【もっとゲームがうまくなりたい】、【お金ほしい】などなd……いや、これは書いたらだめでしょ。
「2人とも何書くんだ?」
「僕はこれかな」
そう言って、早乙女くんは「もっとみんなと仲良くなれますように」と書いた。こういうのをすぐに書くところは早乙女くんらしい。
「俺も決まってるけど、多分凪と同じだと思う」
「僕もそんな気がするんだよね。まぁ、僕はもう一個あるけど」
そして僕と祐希は短冊に書き、お互いに見せあった。
【もっとゲームがうまくなりたい!】
【もっとゲームがうまくなりたいです。もっと友達を増やしたいです。】
「そういえば、祐希はゲームうまかったけど、凪も?」
「まぁ人並みには。っていうか、なんで祐希がうまいって知ってるの?」
「ちょっと前に翔んち行って、一緒にゲームしたんだよな。そのときは、凪はクラスにまだ馴染めてなさそうだったから呼ばなかったけど」
「そういうことね」
「それなら、今度一緒にゲームしない?」
「次は3人で、だな」
「うん!」
そうして、男友達3人での七夕は幕を閉じた。
(凪も今日みたいな格好で学校に行けば、友達なんていくらでもできると思うんだけどね)
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