第42話.第2の目標
木曜日。初配信までついにあと3日となった。ネットでも徐々に盛り上がりを見せつつある。
そんな中、その盛り上がりの中心の1人である僕は──。
「スヤァ……」
今までと何も変わらない生活を送っていた。
いやだって、なんにもすることないもん!
強いて言うなら、チャンネル名を【神宮寺零 Rei ch / Mix Live】に変えることと、つぶやいたりして宣伝することとかあるんだけど、チャンネル名は別にすぐできるし、宣伝しなくても既にチャンネル登録者が25万人もいるし……。
なんなら祐希たちすらそんなに忙しそうにしてないしね。VTuberとして配信するのは普段とは違うらしくて、慣れは必要ってのは一緒にゲームしながら言ってたけど、ゲームしながらだから信憑性は低め。
優奈とりーは、ちゃんと……って言い方もおかしいけど、忙しそうにはしているんだけど、数分遅れでチャットに返信できるレベルだからね。
そんなことを考えていると4限目の終わりを告げるチャイムがなった。おはようございます。
まぁそんなことはどうでもよくて、僕は明らかに配信を始める前と後で変わったことがあるんだよね。
それは──。
「凪〜、昼飯食おうぜ〜」
一般的に陽キャに分類される祐希と、学校でも普通に話せるようになった。
これはほんとにすごい進歩で、他のクラスメイトが陽キャだと思ってる祐希が僕と話してるってことで、みんなとも少しだけど話すようになった。今までは学校ではあんまり関わってなかったんだよね。
さらにさらに。
「今日は僕もこっちで一緒に食べようかな?」
周りの女子たちからの視線を感じながら歩いて来た早乙女くんは、近くにあった適当な席に座ろうとする。
その席は、早乙女くんのことが好きな女子の席だったみたいで、「あっ……!」という小さな断末魔が聞こえたような気がするけど、そんなことはお構いなしに座る。
まぁそれはよくないけどいいとして、たまにだけど早乙女くんとも学校で話すようになった。まるで小学生時代と同じように。もちろん、これも祐希と僕がよく話し始めたおかげなんだけどね。
……一緒にご飯を食べるのは今日が初めてだけど。
「今日は、じゃなくて初めてじゃん……」
「あれ、いつものメンバーと食べなくてよかったの?」
「凪と祐希がどんな話してるのかなって気になっちゃって」
「主にアニメとゲームとVの話しかしてないぞ?」
とまぁ、こんな感じに学校での交友関係が増えてきたんだよね。
「あ〜、それそれ。僕、VTuber? ってのがよくわかんないんだよね〜」
「え、僕達にそんなこと言ったら大量に解説しちゃうけど、大丈夫?」
「というか、解説するから聞け」
「あ、言わないほうがよかったかも……」
そうして、お昼休みは徹底的に早乙女くんにVについて叩き込んだ。
☆
放課後になると、また一つ今までと変わったことがある。
〔今日凪の家行っていいか?〕
〔今日は大丈夫だよ〜〕
〔え、なら私も行っていい?〕
〔おけ〜〕
みのとよく遊ぶようになったことと、みのが敬語を使わなくなってきたこと。
学校ではもちろん敬語なんだけど、放課後で周りに人がいない時はタメ口で話すようになったんだよね。
そもそも、敬語だとしても学校で話すように鳴った事自体が成長なんだけどね。
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こんなふうに、僕の生活は配信を始めることで大きく変わり始めた。
それは、VTuberを通して今までは知らなかった『人との接し方』を覚えたことが一番関係すると思う。
きゅいあさんにそうらさん、りーにみか。
祐希に優奈、りーに早乙女くん、そしてみの。
配信をしなかったら関わらなかったであろう人ともたくさん関わってこれた。
今までみたいな陰キャで学校生活を送ってきたら、絶対に関われないであろう人とも知り合えた。
はじめはここまで続くと思ってなかったけど、今となってはもっと配信したいと思えるようになってきた。
【陰キャを抜け出す】というこっちでの目標は達成できつつある。もちろん、これからももっと他の人と話せるように努力はするけどね。
なら、次に目指すはもちろん──。
日本1のVTuber、だよね!
ここまでの閑話含め44話をお読みいただきありがとうございます!
今回の話で1章は完結となります! ここまで失踪せずに頑張れたのも、皆さんの応援あってのものです! 本当にありがとうございます!!!ヾ(。>﹏<。)ノ゛✧*。
初配信までいかないんかい、と思ったそこのあなた! 訳ありなので許してください……!
最後に、
「1章面白かった!」
「2章楽しみ!」
「このちゃんのこと忘れてない……?」
と思った方もそうでない方も、感想と評価、ブクマといいねをしてくれると嬉しいです!
もちろん、このちゃんのことは忘れていませんからね?
っていうか、このちゃんって実際にいるVTuberの……。




