8話
「今日の仕事もこれで終わりだ。お疲れ様」
「ありがとうございます。ルイス王子」
私は今日も生徒会の仕事を手伝っていた。
もちろん、今日もロビンは来ていない。
私が帰ろうと椅子から立ち上がったところで、ルイス王子に声をかけられた。
「大切な話がある」
「何でしょうか」
ルイス王子から初めて大切な話、という言葉が出てきて、私は思わず姿勢を正した。
「君を側近候補に推薦させて欲しいんだ」
「え……?」
ルイス王子の言葉は信じられないものだった。
私は驚愕した。
ルイス王子の側近に、私が?
これまでの歴史の中で王子に対して女性の側近がついたことは一度もない。
それだけに、私を側近に推薦するという言葉は衝撃だった。
「わ、私がルイス王子の側近ですか?」
「ああ。メアリーには今まで生徒会の仕事を手伝ってもらっていたのに報酬を用意できなくて申し訳ない。もっと早く側近にするべきだったね」
ルイス王子に謝罪されて私は恐縮する。
「そんな。顔を上げてください。でも、本当に私が側近候補だなんて、いいんですか?」
「もちろん。君の仕事の能力はとても優秀だし、それに人柄もとても良い。だから嫌でなければ側近になって欲しいんだ」
私は嬉しかった。
今までロビンは私がどれだけ尽しても褒めることもしないし、報酬も用意しなかった。
ルイスが用意してくれた側近候補という報酬はとても素晴らしいものだった。
もし側近になれば貴族として大きな権力を持つことができる。それは公爵家よりもだ。
ロビンと婚約を破棄した今、側近という地位はとても魅力的な話だった。
個人的にルイス王子は人として好感が持てるし、側近として働いてみたいと思う。
この話は断る理由がない。
「ありがとうございます」
そして私は側近の話を承諾して、生徒会室を後にした。
しかし──
「待て! メアリー!」
私が廊下を歩いていると、ロビンが私を引き止めた。
背後に数人貴族を連れて。
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