4話
翌日、私はいつも通り学園の生徒会室で仕事をこなしていた。
本当なら来る必要なんてないのに、もうここに来るのが習慣になっていて、今日も来てしまった。
「ルイス王子、終わりました」
私は終わった仕事の書類を生徒会長であるルイス王子の元まで持っていった。
「ああ、ありがとう。メアリー」
ルイスは机から顔を上げ、ニコリと笑ってそれを受け取った。
ルイス王子。
ロビンが側近として仕える王子であり、第一王子でもある。
容姿端麗で成績優秀。それに品行方正と人として完璧な王子だ。
私のような伯爵家でも礼を言うぐらいだから、ルイス王子の人の良さが分かる。
ロビンは一度も私に礼を行ったことなんて無いのに。
「あと一つ、これの計算だけ頼めるかな」
「任せてください」
これぐらいの量ならすぐに終わるし問題ないので、私はルイス王子から差し出された紙を受け取る。
しかしルイス王子は申し訳なさそうに眉を下げた。
「すまない。君は本当は生徒会じゃないのに」
私は表向きの理由はロビンの手伝いで生徒会を手伝っている。
もっとも、ロビンは最近一度も生徒会に来ていないが。
「いえ、いいんです。私が好きでやっていることですから」
実際、ルイス王子が生徒会運営のために私の何倍も努力しているのは知っているから、手伝うこと自体は嫌ではない。
「ありがとうメアリー。いつも本当に感謝しているよ。それと話は変わるんだけど。最近、ロビンが何故生徒会室に来ないのか知らないかい?」
ロビンが生徒会に来ない理由。
それはきっとあの平民のデイジーと会っているからだろう。
しかし、ルイス王子に私とロビンの問題を伝えてもいいのだろうか。
ルイス王子は優しい人だ。
ルイス王子が今の私の状況を知れば、きっと解決に向けて動き出すだろう。
ルイス王子は只でさえ多忙だ。
生徒会の運営に、成績の維持、公務を毎日こなしている。
それなのに、これ以上仕事を増やすなんて、私には出来ない。
だから私はルイス王子に、婚約破棄のことはまだ伝えないことにした。
「……すみません。分かりません」
「……そっか、ありがとう。今度直接ロビンに聞くことにするよ」
ルイス王子は朗らかに笑った。
その後、私は仕事を終えて帰った。
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