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3話


「は?」


 私が婚約解消を申し出ると、ロビンは一瞬何を言われたのか分からないようだった。


「な、何でそんなことを……」


「私が分不相応だと気づいたからです。ロビン様の言葉で目が覚めました。こんな人間がロビン様の婚約者ではいられませんので、婚約を解消させて下さい」


 私は恭しく、ロビンに対して頭を下げる。

 これはロビンと今すぐにでも婚約を解消するための方便だった。

 私は全く反省などしていないので少し棒読みになったが、ロビンは騙されたようだ。


 ロビンは焦り始めた。


「べ、別に婚約は解消しなくてもいいんじゃないか? ほら、君だってそれなりに頑張っているだろう?」


 ロビンはあれだけ私を相応しくないと罵倒していたのに、手の平を返して婚約解消を引き留めようとしてきた。

 さっきまでと、言っていることが無茶苦茶だ。


(やっぱり引き留めようとするのね……)


 あれだけ私を否定して、人格まで否定して、それでもまだしがみついて来るロビンを、私は軽蔑した。


「君には妾の立場を用意している、それで満足だろう?」


 妾という立場で、十分。

 ロビンはついに、私へそう言い始めた。


 その時、今まで私の中で必死に抑えてきた何かが、プツンと切れる音がした。


「分かりました」


 私が肯定の言葉を述べるとロビンはホッとしたような表情になった。


「婚約解消が駄目なら、婚約破棄させていただきます」


「ちょ、ちょっと待ってくれ! 婚約破棄だって!?」


 ロビンはこれまでに無いほど焦り始める。

 それもそうだろう。


 婚約解消は双方の合意があって成り立つ穏便な方法だ。

 そして婚約破棄はその逆、相手側に問題があった場合叩きつけられる一方的な方法。


 当然婚約破棄された側はそれ相応の汚名を被せられることになる。


「仕方ありませんよね? だって、婚約を解消しましょう、という私の譲歩を断ったんですから」


 先に私は手を差し伸べたのだ。

 そしてロビンはそれを振り払った。

 だから、次の手段として私が少々手荒な方法を取るのは当たり前だ。


「そもそも、何故私を引き留めるんですか? あなたはその女性と結婚するのでしょう?」


「それは……君がいないと他の貴族たちに僕が侮られるだろう」


(何それ。結局自分の都合じゃない)


 つまりはロビンの都合だけで婚約破棄したくない、ということだ。

 しかも全て保身のため。


 私を虚仮にするのも大概にして欲しい。


「はぁ……」


 私は大きくため息をついた。

 するとロビンは馬鹿にされたと思ったのか、むっとした表情になり、怒り始めた。


「君はさっきからワガママばかりだ。少しは僕の面子を考えてくれてもいいだろう? ずっと婚約者だったんだから」


 ハッ。

 面子を考えてくれ? ずっと婚約者だった?

 それは、こちらの台詞だ。


「ロビン様こそ、先程からワガママばかりですよね? 少しは私の面子と気持ちを考えてくれてもいいんじゃありませんか? ずっと婚約者だったのですから」


 私は明確に嘲笑をこめてロビンを馬鹿にした。


「ッ!!」


 バチン!

 ロビンはまた私の頬を叩いた。


「……また暴力ですか」


「もういい! 出ていってくれ!」


 ロビンは私の言葉を遮り、叫ぶ。

 どうやら図星をつかれて手が出たらしい。


 本当に子供っぽい。


 もうこんな人の相手はしたくなかったし、出ていってくれと言われたので、私は素直に従うことにした。


「それでは、ご機嫌よう」


 私は優雅に礼をして部屋から出ていく。


 背後から「クソッ!」と声が聞こえてきたが、無視をした。


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