表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/23

不必要な元ニート


 ダンジョンは割と大きく、生徒十人程度が横に並んでも問題ない道幅があった。

 生徒がよく出入りしているため入り口近くは整備されており、ダンジョンと言うには些か拍子抜けだ。

 ダンジョン内の情報は物として持ち帰ることができないようになっており、先駆者の情報は言伝やダンジョン外での書き残しでしか手に入らない。

 そのため、既存のダンジョンであっても完全に安全な探索にはならないのだ。

 そのはずなのだが、


「これなら俺要らなかったろ」


 あまりにも難易度が低すぎる。いや、まだ入ってすぐだからそうなってるだけだろうが、それにしても楽だ。

 現れる魔物はスケルトンが主で魔法を使えば簡単に倒すことができる。現にダンジョンに入ってからは俺が生徒に何か指示することは無く、生徒の自主判断のみで対処で着ていた。


「まあ、そうかもしれないわ。先生は必要なかったかもね」


 俺は帰りたかった。ちょっと張り切ってダンジョンにきたのに拍子抜けにもほどがある。

 ダンジョンマスターは一体何を考えてるんだ。入ってくるものを拒まず、ダンジョン内の魔物は適当。ダンジョンはまだ奥地まで探索されていないというが、奥地なら過酷なのか? 

 ただただひたすら長い道が続いてるみたいなオチじゃないだろうな。


 そう愚痴るも生徒たちは俺の愚痴を無視してドンドン先に進んでいく。俺の出番はなかった。


 スケルトンなどのアンデッドがちょくちょく顔を出し、その度に生徒が魔法で蹴散らしていく。生徒たちが使う魔法が第四階魔法が精々で、それほど強くないはずなのだが、余裕だった。

 洞窟は薄暗く、足取りはそこまで早くなかったが、初見にしては完璧なまでに安定感がある。初めてのダンジョンにしては特筆すべき点が何一つないことから、俺は本格的に自分の存在価値をゼロに置くしかなかった。


 やがて、洞窟のような暗い場所から明るい壁に変わった。生徒が何やら話し合いをする。


「遺跡でしょうか」


「先輩方の話だと遺跡があって、そこからが長いと聞きました。今日はここで引き返しますか?」


 賢い生徒だ。猪突猛進に進むのではなく、安全策を考えている。これもう俺要らないだろ。

 ここに来るまでにも割と時間を使っていたため、今日はここいらで帰るのも手だろう。


 だが、アイネは反対した。


「もう少し進みましょう。今日中に遺跡の特徴を肌で分かっていれば今日帰ってからの対策の情報も増えるわ」


 いくら先輩にアドバイスを貰っているとはいえ、実体験には及ばない。

 ダンジョン内の情報は言伝にしか共有できないことからも実体験の大切さは重要だとわかる。ルルも同じ判断のようだった。


「まだ魔力には余裕があるですから、先に進んでも大丈夫だとは思うですよ」


 俺は何も言わず生徒たちの話し合いを眺めていた。本当に俺は要らなかったのかもしれない。

 とはいえ、俺にも好奇心というものはある。具体的にはこのダンジョンの目的だった。ダンジョンマスターはどんな意図があってこのダンジョンを運営しているのか。興味がある。


 単独行動ができれば……。まあ、万が一ってこともあるし、生徒から目を離すのはダメか。サナを見つけて押し付けるか? いや、それは流石に文句言われるよな。


 そうこうしているうちに生徒たちは進むことを決めたようだった。

 俺に確認を取って遺跡の方へ進んでいく。

 と、遺跡に足を踏み入れて、俺はふと気づいた。


 この遺跡って地理的に多分学院の真下にあるな。


 このダンジョンは学院の近くに入口があり、ダンジョンが奥深くなるごとに地下へと進んでいく。基本的にダンジョンは異空間へとつながっており、外の空間とは別の広大な広さを持つと言われるが、それにしたってダンジョンに入ってすぐが異空間というわけではない。

 このダンジョンの場合は、遺跡に入った瞬間に異空間となっているようだ。そして、その遺跡の入り口の座標が丁度学院の地下。

 偶然か、それとも必然か。


 俺は念のため生徒たちに引き返すように提案することにした。

 反応は良くなかった。


「えー、先生急に喋ったと思ったら何ですかそれ」


「せっかく話が纏まったんですから口挟まないでくださいよ」


 まあ、俺がいれば大抵はなんとかなるだろ。上級生は普通に遺跡の探索もやってるみたいだしな。俺は反論を諦めた。

 ダンジョンの奥へと進んでいく。

 サナは無事にやれてるだろうかと一瞬思ったが、サナは俺よりも要領が良い。もしかしたら既にダンジョンマスターの目的にも察しがついているかもしれない。


 遺跡の探索は良好で、その日は何事もなく授業を終えられた。俺のパーティもサナのパーティも無事にダンジョンの入り口で合流する。

 だが、俺の憂慮は晴れなかった。サナに言って、その場で生徒たちを解散させた後、教師権限で再びダンジョンに入る。


ブクマ感想よければください

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ