第56話 竜騎士
竜騎士との戦いはどうなるのでしょう。
竜騎士は東の砦を順に襲っているそうです。
今の時点で竜騎士の数は5騎、全て飛竜に乗って現れ飛竜のブレスで攻撃するそうです。
このブレスは、火炎の魔術と考えられていて飛竜の種族固有で、魔術を行使する時は口を大きく開ける必要がある事から、口内奥に魔術陣があると言われています。
火炎の到達距離は30ヒロ(45m)ぐらいあります。
竜騎士の攻撃方法は飛竜のブレス以外に、上空からの弓や槍などを投擲する方法や単純に物を落とす事などです。
これまで魔術で攻撃したことはありません。
帝国は竜騎士に対抗するため弓、投げ槍、投石、魔術では火、水、風、土、光、闇を使って対峙してきたそうですが、ことごとく失敗の連続だそうです。
変わった物では、音や匂いなども使われたそうです。
失敗の主な原因は竜騎士が空に居る事です、しかも空を動き回り狙いを付けても打つまでに移動してしまい攻撃が当たらない。
竜騎士の厄介な所は、その攻撃だけで無く砦の中が一目瞭然に暴かれてしまうことです。
これまでに、落とされた砦は尽く竜騎士に弱点を見破られて、そこを攻められ破れています。
この守勢になった状況は帝国の統治へも影響が出ていて、各地で反乱の勢いが増しているそうです。
このように帝国を振り回している竜騎士ですが、運用は砦への偵察とブレスでの攻撃ぐらいしか行っていません。
今の竜騎士は、砦を落とす兵種として戦術的に運用している様に思います。
私の見るところ、砦を落とす兵種として運用するよりも、戦略的に運用した方が良いように思います。
例えば、地形図の作成や伝令、偵察、情報攪乱などに使った方がより効果的じゃないかな、そして戦略的目標に高空より焼夷弾みたいなものを作って落とす方が敵への有効な打撃になるでしょう。
私の考えは置いておくとして、火球砲部隊の対竜騎士戦ですが、ドミナント要塞にはなかなか来ません、そろそろどこかの砦に出張って行きたいのですが、将軍の許可が下りないのです。
次に狙う砦が何処か分からないのもあるでしょうが、ドミナント要塞に竜騎士が来た時の用心棒として離したくないのでしょう。
しかし待ってる間に冬が来てしまいます。
今は10月の20日、早ければ雪が降って来ても不思議ではありません。
今日も待ちぼうけかなと思っていると、昼頃レタから飛竜かもしれない飛空する物体を把握したと脳内会話で連絡があった。
火球砲部隊に戦闘準備の命令を出し、家(神域の部屋)から馬車の中へと出る。
レタが命令の伝達を済ませて馬車に入って来る。
「飛竜で間違いないの?」と聞けば。
「飛竜とそれに乗る人間で間違い無いで在ります」とレタ。
「現在の方向と距離、それに速さは?」知りたいことを掻い摘んで聞く。
「東より、5騎が一列となって、650ヒロ(約1km)先、高度300ヒロ(450m)を時速5ワーク(時速7.5km)の速度でこちらに向かっています」
意外と遅いですね、目標は要塞で間違いないでしょう。
「レタ、戦闘用意」
帝国軍の法律などたいして整備されているわけでは無いので、敵が奇襲で攻めてきている場合、勝手に戦闘を始めても誰も文句は言いません、命令系統も違いますしね。
馬車の外へ出ます、東を見ると1列にならんだ飛竜が見えます。
「目標、東、上空300ヒロ、距離500ヒロの飛竜、打ち方用意」
1番、2番の火球砲が砲口を東へ向けます、砲の角度も近づいて来る飛竜に向いています。
高度は変わらず300ヒロ(450m)、距離350ヒロ(約520m)になったので、命令します。「うてっー」
相変わらずおかしな音です。「ポンポンポンポンポンポン…」と発砲の音がして、しばらくして「ドゴン、バン、ドゴン…」と炸裂する音になります。
当たらないように、だいぶ前の方で炸裂するように打ったのですが、5匹の飛竜が地上付近までふらふらと落ちてきて、慌てて体制を立て直すと東へ逃げていきました。
その時飛竜が足に抱えていた物を落したのを見たので、何かここへ落とすつもりだったのかもしれません。
「打ち方、止めーッ」火球砲毎に6級の魔石で14,5発撃ったようです。
竜騎士たちは飛竜に乗っているのがハッキリ見えました。
砲撃の炸裂があり飛竜が一旦落ち始めた時、竜騎士は気絶しているように見えました。
火球砲の魔術陣が炸裂した場合、効果範囲は10ヒロ(15m)、しかし衝撃波は超音速でさらに遠くまで届くようです、今回竜騎士が気絶したように見えたのは炸裂した場所から30ヒロ~50ヒロ(45~75m)ぐらいに近づいた場所へ届いた衝撃波が、乗っていた竜騎士を気絶させたのでしょう。
30ヒロ(45m)以上離れているので殺しては無いでしょう。
アイザックス将軍のバリディン副官がやって来て、城館の将軍の部屋まで来るように命令を伝えにきた。
レタに後は任せ、私とアイの2人で将軍の部屋へ赴くと、将軍は上機嫌で出迎えてくれた。
余程竜騎士を追い返したのがうれしかったのか、「カスミ部隊長、よくやったこれで竜騎士に火球砲が使えるとわかった。」
「すみやかに、火球砲を2門渡す様に、此方の兵を出すので彼らに操作を教える様に。」
と火球砲を早く使いたい様です。
承諾して、将軍が書いた竜騎士への火球砲の効果を文章にした火球砲の受け取り承諾書に私もサインをする。
火球砲部隊に戻ると警戒態勢は取っていたが、竜騎士が戻ってくる様子は無く、私も戻ると直ぐに戦闘の終わりを告げた。
この後の作業の為に、部隊へ火球砲2門を帝国へ貸し出す契約が成功して、直ぐにも帝国兵が火球砲を受け取りにくることを伝え。
彼らに火球砲の訓練を付ければ帰れる事を告げる。
1号車のアル隊長が質問してくる。「カスミ部隊長殿、帝国兵を訓練するのに何日を見込んでおられますの?」
基礎的な知識などの座学は実技訓練の中で教えれば良いので、2部隊へ同時に教えるとして。
「基本的な取り扱い訓練と座学に1日、整備、調整訓練に1日、標的に照準を合わせるまでの模擬訓練に1日、実際に射撃する訓練に3日、の6日と予備1日で合計7日かな」
と計算しながら答える。
今度は、ドン隊長が質問する。「カスミ殿下、ア!、すまんだすカスミ部隊長殿」
彼は火球砲の開発からかかわっていたので、何時もわたしを呼ぶのに殿下呼びをする。
「いや、気を付ければ良い、それで質問は何?」
「は、エッと隊長殿、帝国に引き渡す砲の準備は出来ていやすが、固定しないと訓練できやせん、この広場に杭でも打つだか?」
「そうですね、堀へ向かって2列杭を打ちましょう」
と、将軍に火球砲の威力を見せた時の状況を思い出しながら答えた。
アイとナミに帝国への貸し出し用火球砲2門を馬車から運び出してもらう。
それを、ドンたちが打った杭に縛り付け訓練へのデモンストレーションとして最初に打って見せるのも良いでしょう。
花火に驚いて逃げてしまいましたね。




