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魔術師、異世界をソロで往く 帝国編  作者: 迷子のハッチ
第6章 神聖ロマナム帝国帝都ミンスター
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第48話 帝都ミンスターへ(3)

騎馬隊との争いになりそうです。

 『お嬢様、騎馬隊の隊長は黒馬に乗った兜に黄色い鳥の羽を付けた男です』

 『この男少しは戦えるようです、隙があるようで無い、油断ならないと判断しますです』

 『騎馬隊に魔力持ちは、着飾った鎧をまとう男の左の男だけです、ほかは剣か槍、弓を持つものが10名いますです』


 レタが立て続けに騎馬隊の情報を脳内会話で知らせる、向こうの騎馬隊に聞こえないように注意しているのだろう。


 私はこの状況が何を示しているのか考えていた。

 先ず、私と騎馬隊に知己は無い、いや騎馬隊の中に一方的に私を知っている者が居る可能性はある。

 が、可能性は低いので、今それを考えるのは無駄だと言える。


 偶然ここへ来たとは見えない、何らかの目的をもってここまで来た、ここで昼の休憩と食事を取る積りで河原へ降りようとして私達を見つけた。

 と考えるのが自然でしょう、問題は私達を見つけてからの彼等の対応です。


 河原の土手に来るまでおかしな態度は無かった。

 おかしな対応をしたのはナミが土手に近づいた時だ。


 私達を逃がさ無いと言う意図を持ってナミが上がろうとした土手に騎馬を3騎出した。

 今彼らを見ても、此方の事を知って行動しているとは想えない。


 彼らが此方をどう見ているか分かりません、仕方がありません受け身ですが相手の話を聞いてから行動を決めましょう。


 『レタ、守りに専念してください、彼らと話して行動を決めます』

 レタへ守りに専念するように指示する。


 どうにも彼らが此方を見る目が獣じみてると感じるのは先入観(ベルベンボネ市の件)があるからかしら。

 (相手は貴族だ、戦いに勝っても後を引くことは間違いない、私達は先ほどの村で顔を知られているし身元が知れるかもしれない by大姉)

 (カスミ!逃げるも兵法ですよ by大姉)


 騎馬隊が近づいてきて半包囲する、川方向へは逃げられるけど水量は6月なので多い。


 彼らも堀が作られた所を見ているので、魔術師が居る事は分かっているのだろう、着飾った鎧の男を後方に置いて、先ほど隊長だろうと見た男が前に出てきた。


 「女、お前たちはこのオルカ男爵領で不審な行動をしているので連行する、抵抗するな!」

 とストレートな拘束発言をしてきた。


 レタが前に出て男に向けてきっぱりと言う「一昨日来やがれ!バカチン共であります」

 あらまぁ。(… by大姉&by妹)


 アイが掘りに炎の壁を出して騎馬の侵入を阻む、次に矢避けの風の壁で矢に対処できるようにする。


 ナミが潜んだ叢や木の陰から河原の石を投げて馬から騎士を打ち落とす。

 真先に打ち落としたのが魔術師の男で、次に着飾った鎧の男を打ち落とした。


 7人ほど打ち落としたころ、隊長と思しき男が2人ほど選び元来た方へ伝令として出る様命令して、他の隊員に下馬の命令を出した。


 しかし、それは遅かった、覚悟を決めた私が石礫を50個出して一人に2個打ち出した。


 それは鎧と兜に当たり強い衝撃を与えた。

 伝令に出ようとした2騎は私の石礫が当たったても行こうとして、ナミに打ち落とされていた。


 川原にコロコロ転がる32名の男たち。

 触るのが嫌なのでレタに埋める様に言うと、レタの指示を受けたアイがあっという間に、全員穴に落として首から上と右手だけ出して埋めた。

 埋めた周りは硬くしたので、一晩ぐらいでは抜け出せないでしょう。

 右手を出したのはレタによると調書を取る時サイン(魔紋印)させるためだとか。


 意外と弱かった隊長の男、それに他の隊員も石礫で簡単に打ち落とせた。

 一番意外だったのは魔術師だろうと思っていた男だった。

 魔術師では無く、会計などの男爵家の出納を担当する男だった。

 (マントにナイフのみとか紛らわし格好ね by大姉)

 (その男、魔力は少しだけどあるみたいね by小姉)

 しかし、馬から落ちた男達はなんで反撃の一つも出来なかったんでしょうね。

 (質量のある石を早いスピードぶつけたんだ、丁度下馬しようとしていた所へ当たったんだろうな、想定外だっただろうね by大姉)

 (落ちたら直ぐ埋めちゃったから反撃のしようが無かったんじゃない by妹)

 たぶんそれね、アイの落とし穴の魔術、今回の一番のお手柄よ。


 後を言い出しっぺのレタに任せた。

 (レタって切れたら口が悪くなるのね by大姉)

 (私としては騎馬隊の隊長が不審な行動と感じた理由を聞いてから、どうするか決めようと思ってたの by小姉)

 (レタはカスミに危害が少しでも及びそうなら動いて当り前よ by妹)


 レタは男たちを取り調べ、今回の狼藉について告白文を書かせ魔紋でサインをさせた。


 騎馬隊は春の収穫後の納税の監視に村々を回っている途中で、たまたま昼を取るため河原へ降りようとここへ来たと言っている。


 ナミが土手に近づいた時、騎馬で土手の上に移動したのは、やはり私たちを一人も逃さないためにしたと言っている。


 私達を逃がさず拘束するのは何故なのか聞くと、これまでも道の途中で見つけた若い女を捕まえてオルカ男爵の次男が楽しみ、おこぼれを皆で玩具にして楽しんだそうです。

 (こいつら屑の上に腐っているわ by大姉)

 (こんな貴族ばかりなのかしら by小姉)

 (男ってこんなことするのね by妹)


 更に過去の悪事を調べ上げ分かった悪事を一つ一つ文章にしていき、全員に魔紋でサインをさせた。


 特に悪辣なオルカ男爵次男イリヤ・オルカ・ベルネと男爵領衛視隊長ベリア・ホークの2名は悪事全てに謝罪と反省を書かせ、コピーを書いてそれぞれに魔紋を押させた。


 夜は河原に放置して、私達は彼等から見えない場所で家(神域の部屋)に帰った。

 馬は彼等から引き離し、少し離れた草原に柵の代わりに土を盛り上げて囲った。

 馬用に池を掘って水を入れたので、彼等を解放するまで大丈夫だろう。

 終わったのは次の日の昼過ぎで、雨が降らなくてよかったと思った。

 (もっと弱らせればいいのに by妹)

 (リンチはダメよ by小姉)

 (一応飲み食いはさせたわよ、弱った人には回復薬も飲ませたし、アイが by大姉)


 土の中から解放された男たちからはとてもひどい匂いがしたのでそのまま放置した、勝手に川で洗うでしょう。

 解放された彼らはしばらく川でゴソゴソしていたが、馬を見つけるとサッサと去っていった。


 私たちは彼らから見えない場所で家へ帰り、今回の成果の書類を纏めて、提出出来る様にコピーを複数取ったり、時系列に揃えたりして編めた。


 これはオルカ男爵にも一部渡す予定、告発書と込みで帝都でね。

 提出先は神聖ロマナム帝国尚書省と神聖ロマナム帝国駐在ヴァン国大使館の2ヶ所へ出す予定です。


 今回の件上手く帝国に罪を裁かせれば、私達にとって帝国への貸になるので今後の行動に自由度が増すと期待したい。


 出発出来たのは、ここにきて4日たった、飛空の旅を初めて11日目だった。

 1日待ったのは、ナミにオルカ男爵の対応を調べてもらうのに掛かった時間です。


 ひどい目にあったけど、これから起こす帝都での騒動を考えると書き換えがすんなりと進みそう。


 何時もの様に飛空で空に上がり、上空100mで飛空服を展開、更に上昇する。

 500mで水平飛空に切り替え一路帝都を目指す。


 無理をしない事にしたので時速15km程の遅い速度で飛ぶ。


 午前午後合わせて4時間ぐらいで飛空をやめる、それでも60kmは飛ぶことになる。

 最初の6日間、如何に無理をし続けたのか今は分かる。


 順調に飛空し、途中村や町には寄らないことにした。


 それより早く帝都に付かないとオルカ男爵が何らかの対処をするかもしれない。


 オルカ男爵が領に居るのはナミに確認してもらったから間違いない。

 この件はオルカ男爵からすると、どこの誰かもわからない女たちに32人もの騎馬隊が手玉に取られ、弱みを握られた重大事態だった。


 オルカ男爵は直ぐに所属する此処一帯の纏め役で寄り親のスダーネンコ侯爵の家宰に大金を献金しもみ消しを頼んで帝都へ馬車で向かった。


 スダーネンコ侯爵は保守系で血統派貴族の1つ、ベルベンボネのボネ伯爵と同じミオヘルンのボネ公爵の派閥に属している。


 これ以上はナミがオルカ男爵領で調べるにも限界があった。

 でもボネ公爵の名が分かったのは大きいと思う、ナミの大手柄です。

 (ナミ凄い忍者 by妹)

 (うんこれは貴重な情報が手に入ったねナミでかしたよ by大姉)


 3人に褒められてナミは張り切ってパンを焼くそうです。


 「パンは神技の料理に欠かせません、精進するでござる」


 そういうわけでゆっくり急いでいるわけです。

 私は空を真直ぐ飛んで行くのでゆっくりでも十分早く着くのです。


 空の旅を初めて15日目帝都に着きました。


案ずるより産むが易しと言いますが、カスミ姉妹の杞憂だったようですね。

レタの戦力の判断は自分が基準になりますので、魔術以外の戦闘力を比べればほとんどの男性が同じか強いになると言う事にまだカスミは気が付いていません。

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