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第41話 (閑話)ボネ準男爵

ボネ準男爵の心の中です。

 ベルベンボネ市の領代官ボネ準男爵は西門からの報告に狂喜していた。


 数か月前帝都より密かに情報を集める様に指示された件に、今日引っかかった人物が居ると言う。

 しかも好都合にもトラブルを起こしてくれたと報告にある。


 確認のためにも気の利いた者をやって調べる必要がある。


 早速ボネ家の家宰をしている、ターネンシュトラを西門へやる事にする、彼なら信頼できるし頭も良い、我が一族に仕える忠実な僕だから安心だ。


 その家宰ターネンシュトラから、事を穏便に収め、問題の殿下を領主館へ丁重に招くことが出来たと伝言が来た。


 ターネンシュトラによくやったと伝言し、殿下の受け入れ準備を行うよう指示を出した、部屋は2階の奥の皇帝も泊まった由緒ある部屋にしよう。


 殿下の逗留を1日でも長くするのに、丁度良い問題があった。

 衛兵の調査で、ベルベンボネ市の黒の森ダンジョン近くにスタンビートを引き起こす、子ダンジョンが出来ているのが分かった件だが使えそうだ。


 この件を使って彼の殿下をしばらく領主館へ引き止める事にしよう。

 子ダンジョンを退治すればお礼を出す必要がある事に託けて、こちらに引き込めるようなお礼をすれば良い。

 先ずは殿下にお会いすることだな。


 正餐にお招きしたカスミ・ヴァン・シルフィード殿下は見た目は11か12ぐらいの御歳に見える。

 長命族であらせられる殿下の御年は36と聞いている、その見た目の差に流石妖精族の王族で在られると感心してしまった。


 着ておられるのは革の鎧の裏にミスリルを張り付けた流石王族と言える高価な物です。

 共に食事を取りお酒を酌み交わす中で、殿下の人となりを理解できたなら良いのですが。

 しかし驚きました、食器全てがミスリルとは、最初殿下の家臣が食器をセットしているのを見てその輝きに魅入られてしまいました。

 これほどミスリルを大量にしかも普段使いしているのを見るのは皇帝の正餐に招かれても無いでしょう。


 お酒が入って殿下のお話も少し砕けた物に成って来たので、頃合いを見て子ダンジョンの件を切り出します。


 私が子ダンジョンを『ダンジョンではと思える場所』と言ったのがお気に召したのか、しきりに『ダンジョンではと思える場所』と言われ、見てみたいとまで仰られた。

 掴みは良いようです、後はしばらく逗留されるように『ダンジョンではと思える場所』に何回か行ってみるのも良いでしょうね。


 殿下に催促されるままに、馬車で『ダンジョンではと思える場所』へ案内させていただきました。


 驚いたことに殿下は無詠唱で魔力光を行使され、『ダンジョンではと思える場所』がダンジョンであることを看破されてしまいました。

 魔術の力量はとんでもなく高いとお見受けします。


 物事は一旦進み始めると止まらない物です。

 殿下がダンジョンに入りたいとおっしゃられたのですが、御止めすると家来の方にダンジョンの探索を御命じなられました。


 処が、衛兵と一緒にと仰られたはずなのですが、家臣の一人が「先払いする」と一人でダンジョンへ入ってしまわれたのです。


 慌てて衛兵に対蜘蛛用に準備していた、弓と槍を持たせて後を追うように指示しました。

 衛兵は何度もこの子ダンジョンへ潜ったことがあるので、殿下の家臣の方が中の蜘蛛型魔物と遭遇しても対処できるでしょう。

 しかし、衛兵たちが直ぐに戻って来てしまいました、何があったのでしょう。


 衛兵の後ろから殿下の家臣の方々が付いてくるのが分かったので、直ぐに中の蜘蛛に追い返されたのだろうと思い衛兵に問い質すべく近づいた所。


 殿下の家臣がダンジョンコアと思しきクリスタルを持って殿下にお渡ししているのを見てしまいました。

 殿下御自身でダンジョンコアを鑑定なされたようで、問題が一気に片付いてしまいました。


 この子ダンジョンは出来立てではありますが、最初から100ヒロ(150m)以上の長さがあって中で分岐を繰り返して迷宮に成っています。

 何度も入ったこともある衛兵でも中で迷うほどです。


 如何すれば1コル(15分)ぐらいの間にダンジョンコアのある部屋に行き、ダンジョンボスを倒し、ダンジョンコアを手に入れて戻ってこれるのでしょう?


 初めて入るダンジョンにも拘らず、殿下は中は蜘蛛系の魔物が出ると予測されておられました。


 家臣の方々も真直ぐ行って、真直ぐ帰って来たような速さでダンジョンコアを御持ち帰りになりました。


 驚愕する事態ですが、この後の事を考えるとゆっくりしていられません。

 ダンジョンコアが無くなれば、子ダンジョンは神の恩寵ダンジョンと違って崩壊しますし、中の魔物が外へ出てきます。


 スタンビートに備えて増員した傭兵や冒険者をここへ呼ぶ必要があります。

 衛兵もダンジョン崩壊に備えさせなければなりません。


 妻に殿下の対応と報酬に潜ませる諸々を託すしかありません。

 手短に妻と打ち合わせて、殿下とその家臣を馬車で妻諸共領主館へ戻します。


 ダンジョンが無い場所では魔物はダンジョンに吸収されないので消えずに残ります。

 今回は早目にダンジョンコアの回収が出来ましたので、夜7時(午前0時)までに全て終わりました。


 成果は、蜘蛛型の魔物36匹や他の魔物数匹を退治して、こちらの被害はけが人は出ましたが死者は0、雇った傭兵や冒険者に十分な報酬を払えます。


 魔物を解体し皮や牙、蜘蛛型からは魔糸が取れます。

 神の恩寵ダンジョンのドロップ品とは違い、この魔物からは品質の高い低いの違いが出ますが確実に期待できます。


 ここまでくれば後を衛兵長辺りに任せられます。

 馬車に乗り疲かれた体に活を入れ領主館へ帰ります。


 殿下への報酬の件、気になります。


ボネ準男爵もカスミもお互いに勘違いしています。

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