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第40話 空の旅(4)

これまでと違うダンジョンです。

 話し合いの結果、昼11時(午後4時)から『ダンジョンではと思える場所』を見に行くことになった。

 今日の所はダンジョンかどうか見て見るだけと話しているが、私はダンジョンなら中へ入りたいなと思っている。

 (入れる様なら入って見よう、ここに何泊もしたくないからな by大姉)


 私はナミを連れて借りている部屋まで下がって来た。

 少し酔いを醒ました方が良いでしょう。

 レタとアイは正餐会場に残って、ボネ準男爵の家臣と食事会を交代しながら行っている。

 アイが帰って来て、ナミが出ていく、しばらくしてレタが戻る。

 ナミが戻るまでにレタとアイは執事服と侍女服からいつものボディースーツと鎧と武器へと戦える様に着替える。

 ナミが馬車の用意が出来たと伝言を携えて戻って来た。


 馬車でその『ダンジョンではと思える場所』まで1時間程、日の長くなってきた今頃では冬の倍ぐらい時間が長くなってる気がする。


 『ダンジョンではと思える場所』に着くと、そこは窪地に成っていて窪地の奥に地下への洞窟がある。


 『ダンジョンではと思える場所』はその洞窟がそうらしい。


 魔力可視化の魔術を行使しながら洞窟へ近寄ります。

 私の周りを淡い光が取り巻きます、やがて光は洞窟へと吸い込まれ消えていきます。

 間違いありませんね、この洞窟はダンジョン化しています。


 魔力光が洞窟へと吸い込まれるのを見ていた周りの人は、深刻な顔をしています。

 ボネ準男爵と夫人が顔を見合わせて、頷くと。

 「殿下、この現象はダンジョンでしょうか?」とボネ準男爵が聞く。


 「そうですね、ダンジョン化していると思いますが、ダンジョンに成っているかどうかは中に入ってダンジョンコアを見てみないと分かりません」


 私とレタの空間把握では洞窟の2階にダンジョンコアがある事が分かっています。

 恐らくですが、今コアを取ればこのダンジョン化は終わるでしょう。

 (神の恩寵ダンジョンとは違うねここは by大姉)

 (神の恩寵ダンジョンなら、1階は10級の魔物が出るはずなのに、ここは8級の蜘蛛型が洞窟の入り口までいるよ by妹)


 「ボネ準男爵殿、このダンジョンに入ってみようと思います、出てくる魔物も虫系の恐らく蜘蛛だと思います」ダンジョンに入る事を希望して見ます。


 「お待ちください、危険な事は衛兵にやらせます。殿下はどうか後ろで見守っていただきたい。」まぁそうですね、そう言うでしょうね、ボネ準男爵の立場だと。

 (うんうん、だが断る! by妹)


 仕方ないので、「レタ、ナミ衛兵の方と一緒にダンジョンへ行って下さい」

 「はい、わかりましたでございます」、「は、先行するでござる」

 あらら、ナミが突っ込んじゃった。

 「レタ急いでナミを追ってください」

 (予定通りに早く終わらせるのが一番さ by大姉)


 「申し訳ございません、家臣が勇んでダンジョンへ入ってしまいました」

 と一応この場の責任者であるボネ準男爵へ釈明する。


 慌てたのは、ボネ準男爵と衛兵の皆さんでした。

 「急げ装備を付けるんだ、中は虫系が出るそうだから槍と弓を用意しろ。」

 と矢継ぎ早の命令を出しています。

 意外と適格な命令なので、状況を判断出来る人ですね。

 (レタとナミなら、もう2階まで行ってるよ、今から行っても遅いよね by妹)


 ボネ準男爵に急かされて、5人の衛兵が洞窟へと入って行きます。

 しかし、1コル(15分)程で帰ってきました。

 レタとナミが戻って来たからです。


 「お嬢様、ナミがこれを手に入れました」

 とレタが差し出したのは1個のクリスタルでした。


 手に取って、鑑定します。

 ダンジョンコア成りかけ。

 制作者 黒の森ダンジョン。

 制作年月日 39日と12コル前。


 「おや、ボネ準男爵殿、このダンジョンコア成りかけだそうですよ」

 とボネ準男爵に告げる。


 「しかも製作者が黒の森ダンジョンだそうです」

 「なんですと、やはり神の恩寵ダンジョンでは無かったのですね。」


 ボネ準男爵殿は、神の恩寵ダンジョンでは無かったことに一番安心したようですね。

 (何だか安心したと言う顔では無くて、予想外な事で力が抜けたみたいな感じなのよね by妹)


 ボネ準男爵は、残って今回の件の後かたずけをするそうなので、私達はボネ準男爵夫人と領主館へと帰る事になった。

 領主館へ泊る事になったので、婦人と帰る馬車の中で色々打ち合わせをした。


 具体的には、今回の報酬について話し合った。

 私達は旅の途中と言う事もあって、お金は重くて受け取りたく無い。

 (いや、お金はいくらあっても良いよね by妹)

 (いや、貴族的にはお金より伝手や情報の方がより良いと考えるのさ by大姉)


 魔法袋も旅に必要な物で一杯なので、出来れば情報や伝手が欲しい事などの条件を伝えると夫人も良く分かっているのか幾つかの事が報酬として決まった。


 一つ、帝都ミンスターのボネ伯爵家の別宅を夏(6,7,8月)の間貸し出す。

 一つ、その時必要なら帝都の服飾店ヴァルボネ商会へ紹介状を出す。


 一つ、ボネ伯爵に夏の社交会で便宜を図ってもらう、と言うのもあったがこれは断った。

 報酬としては政治的な問題になりそうな事は避けた方が良いし、帝都での夏の社交会は出ない事にしているので、便宜を図ってもらう件は拒否した。

 夫人は3つ目が本命だったようで結構がっかりしていた。


 2つの報酬だけでも破格の物だと私は思うんだけど、婦人は少なすぎると3つ目を未練たらしく蒸し返そうとする。


 館にも着いたので、婦人に2つの報酬だけで十分だと、さっさと馬車から降りて部屋へと引き上げた。

 (ボネ伯爵側はカスミと関わり合いを深めたいのかな by大姉)

 (帝都の別宅を借りる時、挨拶に行くからそれで充分じゃないかな by小姉)

 (ボネ伯爵って独身かも、ボネ準男爵の兄だと歳は40歳ぐらいかなカスミは37歳、釣り合いそうね by妹)

 (実際は11歳よ、釣り合うかの前に私が嫌 by小姉)


 念のためナミにボネ準男爵たちの意図を探らせることにした。

 レタとアイは一晩泊まる部屋の準備と夕食の準備をしている。


 今いる部屋は領主館2階の一番奥で高位の貴族が泊まる客間になる。

 馬車内での話で、食事はボネ準男爵が後処理で遅くしか帰れないので、各自で取る事になると夫人が申し訳なさそうに言うので、こちらとしては助かるため快く承諾した。


 朝食は家族でも貴族は個人で取るのが当たり前なので、明日は朝食後、挨拶してここをでることを夫人に伝えている。


帝国では、準男爵は爵位持ちの継承者(子爵)以外の親類が名乗る名誉爵です。

彼は、領地の経営で手腕を振るう有能な人なのですが、中間管理職の悲哀がありますね。

先の事になりますが、彼は棚ぼたで次期伯爵となるかもしれません。

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