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第39話 空の旅(3)

ベルン市の途中にある都市に着きます。

 翌日昼3時(午前8時)に家(神域の部屋)を飛び立つ。

 この頃夜が短い気がする、ただ疲れているだけなのかしら眠気が取れない。


 川沿いに南東へ、今日は曇りがちな天気で風が強い、雨が降るかもしれない。


 昼前に雨が降り出した。

 近くの村の鐘が6回鳴るのを聞いたので、今は昼6時(午前11時)だけど、あんまり飛べていない、大体50㎞ぐらいかな。


 今日は家で雨宿りだね。

 雨で翼が濡れると途端に飛びにくくなる、雨を弾く様にコーティングしているがそれでも飛空性能が落ちる。


 森の中で家に入り、雨が上がるのを待つことにする。

 この辺は6月から雨期とかあるのかな、4月や引きこもっていた5月は雨の日も多かったけど。


 家に入って、トイレに行って、お風呂で疲れを取ります。

 皆が心配してくれて、早く寝ろと言うので。

 あまり食欲がありませんし、お昼は軽目にして、お昼寝しようと思います。

 雨に濡れて少し熱が出たようで、念のため錬金やスキルの研究は休んで休養を取ります。


 翌日には元気になった。

 若い体は体調が下がるのも早いけど回復もすごく早い。


 朝ごはんにホワイトアスパラガスのバター焼きハム添えが出た、ナミの新しいレシピで一昨日の村で教えてもらったって。

 とっても美味しかったです、ごちそうさまでした。

 (アイの評価だと料理の腕は農家の娘さんぐらいだって by妹)

 (教えてくれたのは農家の若奥さんだよ、春の定番の料理だって by大姉)


 張り切って飛び立ちました、今日はカラッと良く晴れてて飛空日和、飛んでて気持ちが良いですね。


 昼10時(午後3)ごろには人家が多くなってきて、眼下に大きな都市が見えてきた。


 恐らく、ベルべンボネ市だろう、門に繋がる街道の側の森が見えるとこまで飛んで、人の目の届かない奥から森に入り街道近くまで移動した。

 ここはベルン市までの中間地点にある大きな都市になる。

 セルボネ市からほぼ170km、ベルン市まで約140km。

 ここから大河エルベが南へ向きを変える。


 今日はこのベルべンボネ市の観光だよ、皆。


 森の中に降りると、家(神域の部屋)に入って着替える。

 ボディースーツは変わらないけど、いつものコートとブーツに着替える。


 ベルべンボネ市に入るのは私、レタ、アイ、ナミの4人、市内で何かあっても対応できるからね。


 市内に入るのに入市税銀貨4枚、セルボネ市と同じだけどこの町では憲兵では無くて衛兵と言ってた。


 ここベルべンボネ市はボネ伯爵の領都でもある。

 (ベルべンはベル『ベルンの古い言い方』へ、ベン『途中とか向かう』の意味 by小姉)


 ボネ伯爵領は肥沃な農業生産地で、交通の要衝と言う恵まれた土地で、ボネ伯爵家が先祖代々領主をしている。


 で、なんでこうなった?

 入市税を払った後、身分証として傭兵ギルドの銅板を見せたら、魔術師なら魔術師の証みたいなものがあれば見せてくれと言われた。


 それで、認定書を見せると、いきなり取り上げて持って行こうとしたので、急いで取り返した(ナミが認定書を掴んで取ろうとした衛兵の手を掃った by妹)で、周りを衛兵が囲んでいます。


 衛兵の偉い人が出てきて言うには衛兵への反抗罪で拘束するとのことなので、こちらも貴族に対する反抗的な行為は侮辱罪だと反論。(主にレタが言ってる by妹)


 貴族なら身分証を見せてみろと言うので、神聖ロマナム帝国発行の身分証を見せる。

 (取られないように押えてますレタが by妹)


 ヴァン国の身分証明書まで見せたのに、外国人は貴族として扱うけど帝国の法に従う義務があるとかごねる。

 結局、ボネ伯爵家から家宰の人が来て、双方の誤解で事件は何もなかったことになった。

 でも、その処理の中で私の見せたヴァン国の身分証から王族なのがばれてボネ伯爵家に招待される事になってしまった。

 (ただの設定なのに by妹)

 (そうだけど、あの宙に浮いてた奴が作った設定だから by大姉)

 (王族の立ち居振る舞いぐらいは出来ますけど着る服がありません by小姉)


 「お嬢様、最初に着ていたブリガンダインの鎧一式とマントなら身分に合い相応しい物でありまする」とレタ。


 「鎧一式とマントならヴァン国の魔術師の正装と言っても良いでしょう」アイも。


 まぁ、そうかもしれないけど鎧一式とマントを着て食事とか野暮ったいよね、よっぽど田舎の国だと思われてしまうわ。


 「他に着るものがありませんのでありまする」とレタがダメ押しをしてくる。

 仕方が無いので、着替えることにする。


 ここは、ボネ伯爵家の領主館、その一室を私達の控室として使っている。

 私がブリガンダインの鎧一式とマントを身に着け、レタは執事服を、アイは侍女服、ナミはいつもの装備一式。

 (王族に専属の護衛はお約束よ by妹)


 招待されたのは、ボネ伯爵家の領主の弟で領代官のボネ準男爵一家との正餐。

 急遽行われることになったので、正餐と言っても簡単な物になると思う。


 こういった招待では、客は自前の食器を持参(使用人が)する。


 会場となる正餐会場は大広間に設えてあった、広間に入ると先に来て待っていた主人側のボネ準男爵とその妻のヘレン準男爵夫人から歓迎の挨拶があった。


 ボネ準男爵は固太りの黒髭を丁寧に顎の下へのばした30代中ごろの男で、婦人は痩せてはいるが力強く切れのある動きをする、鼻にそばかすのある栗色の髪の愛嬌のある人でした。


 私も「この繁栄するボネ伯爵家の領主館に招待されて、領代官のボネ準男爵とヘレン準男爵夫人に会えてうれしく思う」との返礼を言う。

 (決まり文句だけど、礼儀は大切さ by大姉)


 ボネ準男爵から席に着く様に案内されたので、レタが引く椅子に腰かける。

 テーブルには、挨拶する間にアイが並べた食器一式(全てミスリル製なんだけどこれしか無いのよね by妹)が並んでいる。

 ナミは少し離れた私の後ろ側に控えている。


 食事はレタが給仕し、食べ終えた食器はアイが下げる。

 パンは私用にレタがパン篭から取り出す。

 食事を始める食前の祈りをボネ準男爵が唱え終わり「神に感謝を」の言葉で食事が始まる。

 レタが順次食卓に持ち込まれる大皿に盛られた料理から、一番最初に私の皿に取り分ける。


 取り分ける順番は、私次にボネ準男爵最後にヘレン準男爵夫人とそれぞれの専属の家臣達が取り分けて、食卓に並べる。

 食事の進行は各自のマイペースで食べ終わる(食器をお皿に置く)と家臣が下げ、次の料理を取り分けて持ってくる。


 給仕もお皿を下げるのも左側から、右側は飲み物を掴む側なので家臣は行かない。

 (右手文化の弊害よ! by妹)


 お酒は葡萄酒が用意されていて、レタが私用のボトルの味見(毒見ね by妹)をした後グラスへ注いでくれる。

 (お酒のんでだいじょうぶなの? by妹)

 (酔ったりなんかしませんよ by小姉)


 最初は静かに始まった食事だけど、お酒が進むにつれて口が軽くなり、様々な話題を話すことになった。

 (少し酔ってない? by妹)

 

 ヴァン国での生活(王宮、王族の話)で王族が3家に分かれていることが珍しいのか盛んに質問してきた。

 こちらもボネ伯爵領でとれる野菜やこの領独自の物産について聞いて見た。

 (絶対酔ってるよね by妹)


 以外にもボネ準男爵とヘレン準男爵夫人もこの領での物産品に詳しく、野菜の品種改良の困難な課題や牛の品種改良への情熱を語ってくれた。

 (酔って変な約束とかしないでよ by妹)



 粗方料理も終わり、デザートとお茶になったころ、ボネ準男爵が切り出した。

 「殿下はダンジョンへ入ることを魔術の修行の1つと考え、実行されておられるそうですな。」


 「はい、私はダンジョンでは特段に効き目のある魔術の修行ができると確信しております」この質問の先が杞憂でなければ良いのですが。


 「実は、ボネ伯爵領の黒の森ダンジョン近くに神の恩寵ダンジョンではと思える場所があるのです。」

 「魔術師であればダンジョンかどうか判断できると?」やはりこちらでしたか。

 (魔術師を必要とする何かがあると思ってた by大姉)


 「はい、そうなのです、魔術師の方でしたら魔力を調べると魔力がダンジョンに吸い寄せられるのが分かると聞いていたのです。」

 「魔力可視化の魔術を掛ければ判るかもしれませんね」


 魔力可視化の魔術は、自分の魔力を周囲に出す魔術にプラスして自分の魔力に燐光と言うわずかな光を出す魔術を掛けると、魔力が周囲を漂う様を光で見れる魔術です。


 魔術の二重掛けをするのでスキル3以上の能力が無いと出来ないでしょう。

 「その件が門での出来事の裏の事情ですか?」と聞いて見るのも一興でしょう。

 (一興ってなに一興って、酔って気持ちが大きくなってない? by妹)


 「はい、その通りでございます、魔術師の方がベルべンボネ市に見えられたら知らせる様通達を出しており申した。真にご迷惑をおかけしました。」言葉だけでなく椅子から立ち上がり夫人と共にお辞儀(夫人はカーテシー)をする。

 「いえ、お互いの誤解と言うことで済んだことですお直り下さい」


 二人が椅子に再度座ったのを見て切り出す。

 「魔力可視化の魔術でしたら従者が使えますから確認だけなら直ぐに出来ます」

 「でも、問題はダンジョンであった時です、貴方はどうなさりたいのですか?」

 ダンジョンが出来るのを待っているのであれば放置していても良いのです。

 (この酔っぱらいが、何約束してんのよ by妹)


 「それをお話するのに少し前提となる知ってほしい知識があります。」

 とボネ準男爵は真面目な顔で話し始めた。


 「実は、森ダンジョンの近くに住んでいる者は森ダンジョンが大きくなったり、小さくなったりすることを知っています。」

 「森ダンジョンは魔物を倒し続ければ小さくなるのです。」

 「逆に放置していると大きくなるのです。」

 「ところが、偶に魔物の居ない少し離れた場所まで森ダンジョンの魔物がスタンビートを起こして森ダンジョンが急激に大きくなることがあります。」

 「通常でしたら森ダンジョンから魔物は出て来ません、このスタンビート以外では。」

 「この時森ダンジョンの多方面から魔物が在る1点に向かって集まると言われています。」


 「その場所が『ダンジョンではと思える場所』ではないかと私は思っているのです。」


 話が終わると私は今の話から見えてくる彼が思っている事を考える。

 「一度その『ダンジョンではと思える場所』を見てみるしかないでしょうね」

 (スタンビートかダンジョン討伐か面白いね by大姉)


 「ありがとうございます。」


事件発生

これが、カスミの冒険に大きな変化を及ぼす切っ掛けになります。

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