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魔術師、異世界をソロで往く 帝国編  作者: 迷子のハッチ
第4章 セルボネ市で暗躍
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第36話 (閑話)セルボネ市評議会の長い一日

長い日になった事でしょう

 市の憲兵隊長からその知らせが評議会議長ターメネク・アルボネ・ヴェルナに届いたのは、昼食を取ろうかと思う時間だった。


 「憲兵長その話は本当の事なのかね?」

 「はい、南の闇ギルドとの連絡員を務めているヤヒドはこれまでも有益な情報を持ってくる信用のある人間です。」

 「人物は信頼は出来ませんが。持ってくる情報は信用の置ける物です。」


 「そう言われても、突拍子もない出来事ですから、他に連絡が付く人はいないのですか?」


 「西の頭は金さえ出せば情報が買えたのですが、今回は無理でしょうから。」

 「まさか、北の老人までとはのう。信じられんが、いまだに連絡が取れんのは事実じゃ。」


 「いつまでも、情報を集めて時間を潰す事はできん。」

 「執行評議会を開く、執行評議会議員を招集せよ。」


 執行評議会議長ターメネクは秘書に各議員宛の手紙を書かせると、自分も議員会館へと移動していった。


 現在セルボネ市の評議会議員は100名を超えて居る。

 しかし、内実は6人の派閥に大きく分かれていて細かな派は無数にある。


 今現在開かれようとしている執行評議会は6人の執行評議会議員で集まって日々の議題を調整する会議と成っている。


会議室へ移動しながら、付いてきている憲兵隊長へ部下に動員をかける様に命令する。

 「しかし議長、動員を掛けるにはせめて執行評議会議員の過半数の賛成が必要です。」


 「そのくらいは理解しとる。」

 「だから、動員を掛ける命令を出すと伝えるだけじゃ。」

 「賛同は今回の件なら間違い無いじゃろうしな。」

 イライラしながらアルボネ評議会議長が憲兵隊長を睨みつける。


 「畏まりました。動員の命令を出すとの連絡を出します。」

 憲兵隊長は引き連れている部下の内の一人に憲兵隊の隊舎に行くように命令する。


 アルボネ評議会議長は、走り去っていく憲兵の後ろ姿を見ながら、近づいた評議会の扉を自分で開けた。


 アルボネ評議会議長が円形の会議席北側の議長席に座った。

 たいして待つことも無く、執行評議会議員の全てが揃った。


 彼等6人は市執行評議会の議長か議員なので普段は経営する商会の名前で呼ばれる。


 セルボネの名は敬称の『セ』を付けた元は『ルボネ』家の支配する土地の名前だった。


 ルボネ家が神聖ロマナム帝国の中で没落して行くと、代わりに分家であった者達が『セ』の代わりに独自の文字を当てて自分の家を呼ぶようになった。


 因みに議長のアルボネのアは「アーコ」(水の意味から転じて酒精)のア。

 副議長のタルボネのタは「タール」(火の意味から炭)のタ。

 前にも閑話で出た、議員のカルボネのカは「カワ」(皮から皮革)のカ。

 議員のヴァルボネのヴァは「ヴァフ」(糸のことから衣服)のヴァ。

 議員のギルボネのギは「ギブツ」(金属のことから鍛冶)のギ。


 ただし、最も若いチアヌク・カルボネ・ギネアはカルボネ商会から独立したギネア商会の議員なので『ギネア商会』と呼ばれる。


 カルボネ商会長がアルボネ議長に全員が揃ったのを見て質問した。

 「アルボネ商会さんよ、俺の所に来た知らせは本当だったのか?」

 残りの4人の評議員も注目して、議長のアルボネ商会長を見ている。


 「憲兵隊が彼等と関係のある者からの情報として知らせてきた。」

 「それに、別の者の状況から同じ情報が上がって来ている。」


 副議長のタルボネ商会長が議長へ確かめる様に言葉を選びながら言った。

 「アルボネ商会さん、この件に付いて何か知ってませんか?」


 「いや、タルボネ商会さん私も寝耳に水じゃった。何も知らんかったよ。」

 議長のアルボネ商会長は事を起こしたのが自分で無いと強調する。


 「誰がこんな事をしでかしたんだ?」若いギネア商会長が怒りを抑えて言う。

 彼が一番闇ギルドに近い位置にいたからか、今回の件では一番被害が多いだろう。


 「まだ分からん。」議長のアルボネ商会長は切って捨てる様に言う。


 「で、何か手を打ったのか?」とヴァルボネ商会長が聞く。


 「そうだ今出来る事があるなら早くするべきだな。」とギルボネ商会長が切羽詰まった様に半ば腰を浮かして議長に促す。


 「では、私より動議を出そう。」議長のアルボネ商会長が機を捕らえて言う。

 「憲兵隊に動員命令を出す。」回りを見回して吐き出すように言った。


 「ムッ!」、「それは!」、「そこまでか…!」等の驚きと納得の溜息が周りから漏れる。

 「決議を取る、良いかな?」と急ぎたい議長のアルボネ商会長。


 「待った!内容は?どうなのか。」カルボネ商会長が異議を出す。


 「今は内容より、対応の速さが重要と考える。」議長のアルボネ商会長。


 「非常事態の宣言を出すのか?」カルボネ商会長。


 「いや、非常事態は宣言しない。」議長のアルボネ商会長。

 「宣言より、事態が起こった場合に憲兵を素早く動かせる方が対応できる。」


 「なんだと!市民に被害が出たらどうするんだ!」ヴァルボネ商会長。

 「非常事態の宣言が先だろう。」カルボネ商会長。

 「俺は動員令に反対だ!先に非常事態の宣言をするんだ。」


 「動員令を掛けなきゃ、何もできないぞ!」ギネア商会長。

 「非常事態の宣言では、議長を除いた執行評議委員の多数決で独裁監が決まるのを狙ってるだろう。副議長のタルボネ商会長!」ギルボネ商会長が叫ぶ。


 「動員令は議長管轄の憲兵だよな!」ヴァルボネ商会長。


 「何か事が起こった時、非常事態の宣言は出すのか?」副議長のタルボネ商会長

 「いや、市民に多数の被害が出ない限り出さん。」議長のアルボネ商会長。


 「…」

 「…」

 「…」

 「…」

 「…」

 「…」


 日も暮れ、夜8時(午前1時)になっても怒鳴り合い、つかみ合い、罵詈雑言の会議が続く。

 昼1時(午前6時)頃に、妥協案が纏まり。


 「全員の賛成で、2つの動議と1つの修正案を可決する。」力無く、疲れ果て、声も枯れて議長のアルボネ商会長が宣言する。


 議長から憲兵への動員命令が出された。


 それと同時にセルボネ市へ非常事態の宣言が出され、独裁官に副議長エウシウル・タルボネ・エルギナ、タルボネ商会長が選任された。


 そして特例として非常事態の間憲兵への指揮権を議長へ一任することが付記された。


 執行評議会に集まった、6人は帰る事無く翌日も執行評議会室に詰めたままだった。


人間3人居れば派閥が出来るそうですから。

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