第35話 (閑話)ガーウィンさんとセルボネ市評議会議員カルボネ商会長の会話(2)
2回目の登場です。
ガーウィンは魔術師のカスミ殿との会話を早々に切り上げると、辻馬車を拾ってカルボネ商会へと向かった。
1時間程辻馬車に揺られて着いたのは、セルボネ市の中心部に位置するカルボネ商会の裏の入り口だった。
ガーウィンの顔はカルボネ商会員のほとんどが知っているので、咎め建てされずに建物の中まで入っていく。
廊下を歩いていると、向こうからやって来た商会員の一人に声を掛けた。
「あのうテイラーどん今時間あるかぁ?」
「ウィーか、どうした問題でも起こったか?」
「いんや、旦那様が気にしておられなさった魔術師殿がセルボネ市に見えなさったでの、ちょっとお知らせば~しておこうと思てでがす。」
「ちょっと待ってろ、旦那様なら先ほど帰られたところだ。」
しばらく廊下で待っていたガーウィンがカルボネ商会長の部屋へ入れたのは2コル程後だった。
部屋へ入るとカルボネが、
「テイラーの言うにはあの魔術師の方がセルボネ市へ見えられているそうだね。」
「へぇ、そうでがす。先ほど傭兵ギルドで会ってきたでやんす。」
「会ったって? いつまで居るのか聞いたかい?」
「へぇ、ここのダンジョンへ入るっち言ってたでがんす。」
「カスミ殿は一人だったかい。」
「へぇ、お一人でやんした。」
「ダンジョンに入ろうってお人が1人とは考えにくい、どこかのクランと契約でもして入るのかもしれないね。」
「どういたしやしょう。」
カスミ殿への渡りは付けておきたい、しかしまだこちらの用意が出来ていません。
今のままでは、議長派の推薦人が頼りないことを証明するにはやや弱いですね。
副議長派の推薦人は自爆してしまいましたから追加で推薦は無理でしょう。
問題は従弟殿ですね、彼の推薦人は3人の中で一番の由緒ある帝国立ミンスター魔術学院を出ていますからね。
実力は別ですけど。
実力では議長派、名を取るなら従弟殿、副議長派をこちらに取り込むことが出来れば早いのですが。
よし、早めにカスミ殿の実力を見てもらおう。
「ガーウィン、カスミ殿がダンジョンから戻られたら、連絡を取ってほしい。」
「へぇい、かしこまりやした。」
まぁ、それもカスミ殿が引き受けてくれたならですね。
2人は、その魔術師がダンジョンから出てきた時、セルボネ市がてんやわんやの大騒ぎになるなんて思いもしなかった。
特に何かある訳ではない、伏線でもないカスミと関わった人達のお話です。
ただ、ガーウィンさんはカスミを通してナミに影響を及ぼしています。




