第31話・2 ダンジョン攻略を延期した理由(1)ー2
お買い物はレタ達にお任せの様ですね。
人気の無い路地の壁に神域の部屋の扉を出す。
周りの警戒は十分行い、見ている者は居ない。
神域の部屋の中で、ウエストバッグを空にして、今換金した銀貨と銅貨を入れる。
レタにウエストバッグを渡し、アイとナミを連れて必要な生活物資を袋買い樽買いする様に指示。
レタは馬車屋で人が引く荷車を借りれないか聞いて見ると言ってる。
全て任せると伝え、風呂へ入りに行く。
お茶を飲みながらレタからの連絡を待つ。
1刻ほどたった時レタからほぼ買い物が終わったと連絡がきた。
レタたち3人だけなのを確認して扉を開ける。
私が出て、アイとナミが扉から中へ入る。
アイとナミは買い物をしたウエストポーチを持って入ったので、私とレタが荷車を返しに行く間部屋で買い物の整理をしていてもらう。
この路地は倉庫が多く人が住んでいないので神域の部屋の扉を出し入れするのに最適なようだ。
荷車を返したらここに戻って来ることにする。
馬車屋さんに荷車を返して戻る(銀貨2枚と銅貨50枚先払い、返すと保証金銀貨2枚が返る)、そろそろ夜1時位(午後6時)かな。
「主様、30人の敵であります。こ奴ら馬車屋にいる間に増えたです」
立ち回りしやすそうな広場がすぐ側にあります、そこで襲ってくるのでしょう。
「レタ、迎え撃ちます」
馬車屋近くのうらぶれた広場を通るとパラパラとスリ変じて強盗どもが2,30人出てきた。
人数を揃えたのは私が魔術を使って氷柱を出したからかな、対抗するため人を集めたのだろう。
「やっと見つけたぞ、小娘が妖精族だろうとこの人数なら叩き潰せるぜ。」声の大きな髭ずらの大男が私を見て叫ぶ。
「貴方に恨まれてる記憶は無いのだが」と聞いて見ると。
「こちとらアクアラの町からお前に散々虚仮にされてんだ。生かしちゃおけねぇ」
そう言うと大ぶりのナイフを抜いた。
レタが『主様、こ奴ら魔術対策に護符を持っているであります。2,3発程度防げる魔力が込められているであります』大男を睨みながら脳内会話で言ってくる。
『分かった。こいつらには電撃の継続ダメージを使う、離れてなさい』レタに攻撃方法を伝える。
聖域はボディースーツに付与しているけど、念のため体に沿って聖域を張る。
レタが大きく離れると同時に。
大男がナイフを振り回して「ヤッツケロ!」と声を張り上げる。
10人程が一気にナイフを腰に構えぶつかる様に近寄って来る。
残りの男たちも包囲の輪を縮める。
私の電撃魔術が毎秒1本、私を中心に周囲に降って来る。
最初の数発は効果が無く、男たちがナイフを腰で構え体ごとぶつかってくる。
体を前後左右から揺さぶられてグラグラと体が揺れる。
聖域を張っていたので何とか無事だったが、衝撃は強かった。
倒れなかったのは、男たちが私を中心にしてぶつかったから。
一瞬の膠着状態ができる、私も男たちも動けない。
そんな膠着状態の場面に続けて無数の電撃が降りかかる。
1分以上電撃を継続する魔術の行使は魔力を1800以上使う。
先ず一般の魔術師では行使出来ない。
当然生きた者など一人も居ない。
殺すつもりで掛かって来た者達を許す積りは無いしその余裕も無い。
まだ気を抜けない。
周りに転がっている強盗だった者達、その遥か遠くで一人の女が隠れていた樽の影から密かに離れた。
空間把握でしか確認できない程離れている。
レタに女の後を付ける事を伝える。
強盗を片付けたので周りに人が居なくなった。
神域の扉を開け、アイとナミが扉から出てくる。
ナミが逃げた女の後を追って闇に消えていく。
人の判別は空間把握が質量の存在の把握だと分かった時から考えていた。
質量の偏在のパターンが判別できれば個人の判別はパターンの違いで付く。
今逃げている女のパターンを記憶して空間把握で追跡すれば、1㎞離れた場所から追跡できる。
扉を消して私達も追跡を開始する。
ナミが女の近くまで追いついたようだ。
映像と音声を送って来た。
「嘘だ、嘘だ、嘘だ… 」
「30人いたのに… 」
「殺された、殺された、殺された… 」
小さく同じことを繰り返し喋っている。
この女の辿り付く所は恐らくスリの元締めだろう。
女の報告で、どのように元締め達が反応するか知る必要がある。
レタに潜入の可能性を問うと、ナミなら出来ると答えてきた。
レタに潜入の指令を出し、映像と音声を記録するように伝える。
やがて女が1軒の宿屋に入って行く。
俗にいう盗賊宿の一種だろう。
ここに元締め達が居るのだろうか?
しばらくすると、ナミから映像と音声が流れて来た。
まさかアクアラの町からのスリとの因縁がこうなるとは。
カスミに取って迷惑極まりない事です。




