第10話 アクアラの町(1)
名も無き世界の初めての町、冷静を装っていますが、カスミは緊張しています。
目的はダンジョンの情報を探すことです。
街道沿いに北から西へと空を行くこと2時間ほど、大きな川のほとりに川湊のある町が見えてきた。
ここが馬車隊の目的地だろう。
大きな川へいくつかの支流が流れ込んでいる。
その支流に沿って水車が無数に軒を連ね回っています。
町は城壁でぐるりと囲まれていて、高い塔や大きな建物は町の北側、港に近い場所にあります。
町の賑わいの中心部は南の広場がある方みたいですね。
そこでは大きい建物が広場の回りを囲むように十件以上建っていて、ここが繫栄している町なのだと見るだけで分かりました。
大きな広場にはテントが幾つも張っていて人で混雑しています。
どうやら市場のようですから、町に着いたらここでお買い物をしましょう。
上から見る光景は、この世界で生きていく私への希望のように見えました。
乱雑で喧騒にあふれる人の住む町は、とても面白く心惹かれる光景です。
空から降りてきて人々を脅かすつもりは無いので。
人の居ない街道沿いで、町からだいぶ離れた場所に降りました。
初めての飛空での飛行でしたが、体力、神力の消耗が大きいです。
街道は平に整地され砕いた石で舗装され、両脇は固く焼き締められたレンガで出来ている。
地面の下になるほど大きな礫が敷き詰められ間に砂が詰められている。
その様が空間把握で克明に把握できる。
水はけは良さそうね。
(道のゴミは近所の人が掃除してるの? by妹)
この街道が魔術で作られているのが残った微量な魔力痕から分かります。
穴掘りと整地の魔術が使える魔術師が一人いれば、街道を整備しながら街道から街道へ移動していくだけで近辺のほどんどの需要が賄えそうです。
一日に100メートルも作れば十分だと思う。
(道の補修だけならいけるかな? それでも3人の残留魔力痕があるね by大姉)
街道を歩いていく前にベルトポーチから布を出して鼻と口元を覆う。
マントのフードを頭から被り、左手の槍を左のポシェットへ入れて両手を開ける。
町へ向かって、街道を歩いていく。
砂利道は固く踏みしめられていて、意外と歩きやすい。
時々馬車が通り過ぎる、すると馬の落とし物が街道に出現する。
砂利道の土はほとんど、この落とし物の成れの果てだろう。
マントを体にしっかり纏、新鮮な落とし物をよけながら歩く。
アクアラの町へ近づくと木で作られた窓の少ない家が街道沿いに多くなってきた。
町の壁はまだ遠いけど、既に市街地に入っているのね。
しばらく前から匂いが強くなってきていて、とっても臭いです。
先ほどから通り過ぎる馬車の多くに毛皮が積まれていましたが。
それから考えると匂いの素は毛皮を鞣した時出る匂いでしょう。
木や草などのタンニンはこんな匂いだったかな?
まぁ毛皮から出る匂いの方が臭さの原因だろうけど。
町壁までたどり着くと壁に作られた門は開け広げられ、誰でも素通り可能だった。
門番も居ませんね。
町の中は石畳が一面に敷かれ。
道の左右に歩道は有りませんが、馬車が2台余裕ですれ違う幅があります。
側溝が道の真ん中にありますが、とても浅いので馬車がその上を平気で通っています。
私は門を通り大通りを真直ぐ市場の広場へと歩いていきます。
まずは、市場でお買い物です。
町中は木の枠をレンガで埋めて壁にした作りの家が多く。
2階建てや3階建ての建物が並んで居ます。
人通りも多く中々の賑わいです。
道の中央は馬車が通るので脇を人の流れに乗って移動しています。
周りの建物は出入口がレンガの壁に穴を開けただけで。
枠に板を打ち付けた板戸を取り付けてます。
そこを人や馬車が出入りしています。
建物の1階部分には鉄格子の嵌った窓がありますが、擦りガラス?の様な物が嵌った木枠の窓なので、部屋の中は見えません。
歩道が無いので馬車が通る時挽かれないように壁際を歩るかないと危険です。
驚いたことに人は右側通行でした。
戦乙女の世界は左側通行だったけど、日本と同じ右側通行なのは面白いですね。
街道に降り立ってから感覚として1時間ぐらい歩いたかな。
日の出を昼1時(午前6時)、3時間ぐらいたった今は昼4時(午前9時)になったぐらいです。
この世界では日の出から日の入りを12分割して1分割を1時間としています。
前の世界のような定時法じゃないので、1時間の長さは年間を通じて変化します。
ちなみに0時と言う数え方は無し、そもそも0が無いから。
(いやいやいや、0は知られていますよ by大姉)
昼12時の次は夜1時になります。
要するに時間の区切りも1個2個と数えるのと同じに昼1時、昼2時と数えているのでしょう。
ですからどのくらいの時間が経過したのかは、コルの単位を使って分けているのだと思います。
さっきの3時間ぐらいたったは、12コルぐらいたったと言うのでしょうね。又は刻(2時間)を使うかですね。
何てややこしいのかしら、日本の単位で考えて、話す時に変換すればいいかな?
(そんなわけないでしょ、ちゃんとこっちの単位に慣れなさい by大姉)
遠くから「いらっしゃい!いらっしゃい!」とか「へい、まいど!」と言う掛け声が聞こえて来た。
市場が近くなったのだろう。
門から市場迄大通りが通じていて、人通りも多い。
ここは繁栄している都市のようです。
まだまだカスミの冒険は続きます。




