僕は今日大好きな人へ告白します!
処女作になります。読んで頂ければ嬉しいです。
これは僕、望月 春が大好きな人神崎 月ちゃんへ告白する日の長いようで短い物語。
◇◇◇
「・・・る、はーるー起きなさい‼」
「起きてるよ、お母さん・・・すぴぃ」
「起きてないでしょ・・寝ている春の布団は没収です!」
「うぅ~~~寒いぃ・・・」
「12月だから寒いのは当たり前よ!早く起きて朝ごはん食べなさい」
お母さんがそう言い残してリビングへ戻っていった。昨日?いや今日か告白することを決めた途端に緊張して全然眠れず、寝たのは深夜4時頃だったから今めちゃめちゃ眠いよ~。だけど今日は遅刻せず登校して、彼女との時間を取らないと。
パジャマから制服に着替えてリビングへ行くと、お母さんが朝食の準備が終わって椅子に座って待っていた。
「春が早く来ないからお母さんお腹空いちゃった」
「ごめんごめん、すぐに食べるよ。いただきます」
「はい、召し上がれ。お母さんもいただきます」
やっぱりお母さんのご飯は美味しい。高校2年生だけど家族仲はとても良く、両親も学生からの付き合いらしいけどいまだに仲良しだ。家族仲が良い弊害か、幼馴染達からはマザコンだとからかわれたりしている。
「ごちそうさま。今日はすぐに学校へ行くね」
いつもはリビングの少しのんびりしてから登校するけど、絶対落ち着かないなので早めに学校へ行く予定。少し気合を入れなければ緊張で学校に行きたくなくなっちゃう。
「お粗末様。春、気合が入った顔してる何かあるの?」
「えっ・・・お母さん分かるの?」
「そりゃ分かるわよ。何年春のお母さんやってると思っているの」
「実は・・・今日好きな人に告白する予定で、家に居ても落ち着かないと思うから早めに学校に行こうかなって」
「まぁ告白!だれだれお母さんが知ってる人?まさか麗奈ちゃん!?」
「違うよ!麗奈は直樹と付き合ってるんだから。お母さんの知らない人だから。でももし付き合えたら、いつか紹介するよ」
「わかったわ春の紹介を待っているわね。それにしても麗奈ちゃんと直樹くんが付き合ってるなんて、ママ友に共有しないと!」
麗奈と直樹は僕をマザコンとからかってくる幼馴染達。元々お母さん同士が仲良く家も近所だから小さい時から一緒にいる腐れ縁だ。1ヶ月前直樹が麗奈に告白をして付き合うことになったが、その後も幼馴染との関係が変わることがなかったのは僕としてはとても嬉しかった。
「じゃあ準備して行ってくる!」
「いってらっしゃい。頑張ってね」
「ありがとう。行ってきます」
準備を整えて僕は家を飛び出した。
ちなみに髪型はいつも以上に気合を入れてセットした。
◇◇◇
登校しながら今日どうやって告白しようか考えなくちゃ。まずは放課後時間があるか聞いてから、問題なければ二人きりになって告白をする感じになると思うけど、どこで告白するかだよな~。うぅ~告白するの初めてだから場所なんてわからないよ・・・。一人で考えて良い案が出ないから、告白して成功した直樹に助けてもらおう。
まずは彼女に放課後時間があるかを二人きりで聞きたいがここは問題ないと思っている。彼女は誰より早く登校して、読書をしていることで有名だからだ。今日は早く家を出たし多分二人きりの時間を作れるはず・・・。段々不安になってきた僕は歩くスピードを速め学校へ向かう。
◇◇◇
学校に着き教室前まで来たけど、いつもは気軽に開けている扉が今日はダンジョンのラスボス前に扉かと思うくらい圧を感じる。自分のほっぺを叩き気合を入れ教室の扉を開ける。
居た彼女だ・・・。やっぱりめちゃめちゃ可愛い。今日も今日とて一人で読書をしている。
「あら?望月さんおはようございます。今日はお早い登校なのですね」
「ルナちゃんおはよう!なんか早く起きちゃって学校に来ちゃった」
咄嗟に恥ずかしくて早く登校した理由を誤魔化してしまった。ちなみに彼女は男女問わず誰に対しても苗字にさん付けで呼んでいる。
「ふふ。早く起きちゃったなら仕方ないですね」
やらかした恥ずかしい・・・!!!
「ルナちゃんは今日も早いね。いつも読書してるけど何読んでるの?」
「今日は昨日買った新刊のミステリー小説を読んでいます。とても面白くて今日中に最後まで読みたいと思っているの。」
「えっ今日中に最後まで・・・」
もしかしてすぐに帰宅して本を読む予定なのかな?
「?そうですけど?何かあったのですか?」
「いや~放課後時間があったら、久しぶりにルナちゃんと話したいと思ってたというか・・・」
「あら?それならもう7割近く読み終わってますから、そんなに長い時間じゃなかったら大丈夫ですよ」
「・・・本当⁉約束だよ!!!」
「はい約束です」
笑顔が眩しすぎる・・・・。浄化される~~~~~。
「やった!たのし・・・」
「おっす春今日は早いな!」
今いいころなんだから邪魔するなよ直樹!いつも遅いくせになんで今日に限ってこんな早く登校してくるんだよ。
「春っちおっは~」
「・・・直樹、麗奈おはよう。相変わらず一緒に登校してきたの?」
「おうよ!当たり前じゃん」
「今日は春っちも一緒に登校しようと思って家に行ったら、向日葵さんからもう春っち学校に行ったって聞いて急いで来たんだよ!」
幼馴染達が早く登校してきたのは僕が原因だった・・・。ちなみに向日葵さんとは僕のお母さんの名前だ。
「直樹達のイチャイチャに僕を巻き込むな!」
「えぇ~嬉しいくせに~。ルナっちもおはよう!春っちと何か話してた?邪魔しちゃったかな?」
「白石さんおはようございます。大丈夫ですよ。放課後にお話しをする約束をしていただけですから」
「へぇー春との神崎さんが放課後に約束ねぇ~」
「なっ!?何か問題がある?」
「くっくっく・・・いや何もないぜ。」
直樹のやつニヤニヤしながら言うな!これは気づかれているのか?わからん・・・。まぁどうせこの後告白する場所について相談する予定だったから、遅いか早いかの差だから気にしないがニヤニヤされるのはイラッとするな~。
その後少し四人で話しているといるとチャイムが鳴り、担任の先生が教室に来たので自分の席に着席して大人しくHRに臨んだ。
◇◇◇
午前中の授業が終わり、やっとお昼休みになった。放課後が近づいてくる度に緊張が増してきて、今日は全然授業に集中できなかった・・・。
「春昼飯食べようぜ~」
「春っちお昼たーべよ!」
「食べよう食べよう。今日はどこで食べる?」
「なーんか春が話があるみたいだから、あまり人が裏庭のベンチがいいだろ」
ぐぬぬぬーーー、やっぱり直樹は何か感づいているみたい。
「えっなにない?春っち何か話しがあるの~?」
「・・・うん、まぁ、裏庭に行ってから話すよ」
そう言って三人一緒に裏庭に向かい、周りを見渡すと予想通り人通りがほとんどなく、内緒の話をするには都合が良いな。
「春からの話は気になるが、まずは飯食べようぜ。腹減って全然授業に集中できなかったわ!」
「いやいや、直くんお腹空いてなくても授業に集中できてないじゃん!」
「そうだぞ直樹空腹のせいにするのは男らしくないよ」
「麗奈と春も言ってくれるぜ、特に春はこの後覚えてろよ」
あぁ~この流れはまずいな、この後絶対普通以上にからかわれるやつだ。
「直樹!今日お弁当に唐揚げが多く入っているから、少し食べて欲しいな~」
「向日葵さんの弁当は美味しいからな、ありがたく頂こう。春は向日葵さんに感謝するんだな」
「・・・はい」
その後、唐揚げを直樹に献上し、食べ終わるまで三人で駄弁りながらお弁当を食べた。食べ終わる頃直樹から案の定話を振ってきた。
「で春は神崎さんのことで相談があるんだろ?」
「えっなになに?ルナっちとのことで話があるって・・・まさか!!!」
「あぁそうだよ・・・。お察しの通り今日ルナちゃんに告白しようと思ってるよ」
「きゃぁーーー!!!春っちがルナちゃんに!!!全然そんな素振りなかったじゃん!春っち基本的に誰でも仲良くなれば名前で呼ぶから気付かなかった!どこが好きなったの!?」
そう言いながら肩を揺すってきた。麗奈やめてくれ食べた物が出るから~。
「麗奈落ち着いて。話す・・・話すからとりあえず揺するのやめてよ~」
「ごめんごめん!さぁさぁ春っち話すのだ!」
「わかったから!あれは夏休みが終わって、少し経った9月の下旬頃・・・」
◇◇◇
彼女のことは元々夏休みが終わるまでは、たまに話す真っ直ぐな綺麗な黒髪の美人なクラスメイトと思っていた。その気持ちが変わったのは夏休みの宿題で作成した作文がきっかけだった。
その作文は一見普通の日常を物語にしたものだったが、気づかれないと思い自分の中の生き方とか周りとの関係の葛藤を作文の端々に忍ばせていた。そしてその物語が作文コンクールで金賞を受賞したが、やはり先生と幼馴染達を除く友人達は僕の葛藤の気づくことなく、良い物語だと絶賛してきた。もちろん褒められるは嬉しかったが、自分自身が気づかれないように忍ばせたとはいえ、やはり幼馴染達以外に気づかれなかったことに少し落胆していた。
その時彼女が現れ僕に言った。
『望月さん夏休みの作文とても良く出来ていましたね。ただ私の勘違いなら申し訳ないのですが、何か悩み事があれば私でよければ相談に乗りますよ。とても良い文章なのに何故かとても心が締め付けられるような気がして・・・。』
その時僕は泣くのを必死に我慢して、きっと不細工な顔をしていたと思う。それほどに嬉しかった、誰にも気づいてもらえなかった僕の心に触れてくれた気がしたから。
だから僕は答えた、ただ・・・『ありがとう』と。
その返事を聞いた彼女は困った顔をしながら、祈るよう・・・
『いつか私が望月さんの力になれるよう』
と言ってその場を去っていった。
多分僕が泣くのを我慢しているのに気づいて、気を遣ってくれたんだと思う。それ以降僕は彼女を目で追うことが増えていき、いつの間にか僕の心の中心には彼女がいた。
◇◇◇
「って言うわけで、ルナちゃんへの気持ちが募ってきて告白しようと思ったの」
「なるほどね~。確かに春っちのあの作文は私たち以外に気づく人はいないと思ってたけど、まさかルナっちがね~。」
「春はひねくれものだからな」
「言うなって・・・自分でも多少理解しているつもりだから」
「まぁまぁ。でも春っちって、顔も整っているし、スタイルも良いし、コミュ力もあるし、告白すればいけると思うけどな~」
「じゃあもし僕が麗奈に告白がしてたら成功する?」
「はっはっはっー、いや私はノーマルだから無理だな~。」
「僕がアブノーマル的な感じ言うのやめーい」
「まぁ麗奈は俺にぞっこんだから、いくら春でも付き合うのは無理だぜ!」
「そんなの分かってるわ!てかぞっこんってこの時代に使うか?」
「おっほん!ぞっこんにつてはいいだろ別に・・。話を戻すが俺たちに相談って告白の手伝いか?」
「無理矢理話を変えてきたな、まぁいいけど。手伝いっていうか・・・場所を・・・」
「場所?春っちは告白する場所を迷ってるの?」
「そう!告白するのは初めてだし、他の人に聞かれたくないし良い場所が思い浮かばなくて」
「なるほど、そんな春に朗報だ!今日ちょうど使える告白スポットを知っている!」
「本当!?直樹様どうか僕にその告白スポットをご教授ください!」
「よかろう!っと言いたいところではあるがそれには条件がある!」
「じょ・・条件。その条件って?」
「清掃だ!って言ってもごみがないかチェックするだけだし、ほぼごみが落ちてることはない!」
「そのくらいなら全然大丈夫だけど、なぜ清掃?」
「告白スポットと関係あるんだが、俺と麗奈は美化委員会で月一回持ち回りで、屋上にごみが飛んできてないか確認しなきゃいけないんだ。その担当は屋上のカギを借りら、翌日先生へ返却する。春なら俺が言いたいこと分かるよな?」
「あぁ!つまり告白スポットは学校の屋上!僕は直樹達の代わりに屋上にごみがないか確認し、翌日までに直樹にカギを返すってことだよね」
「その通り!ちなみにもうカギは借りてある!ほらよっ!」
そう言いながら直樹は僕にカギを投げてきた。それをしっかりとキャッチした。
「ありがとう直樹!」
そう言った直後昼休み終了のチャイムが鳴った。
「やっべ!もうこんな時間か!急いで教室に戻るぞ!春頑張れよ!」
「戻ろう!春っちならきっと上手くいくよ」
「二人ともありがとう!悔いが残らないように頑張るよ!」
そう言い合い三人で怒られない程度に廊下を走って教室に戻った。
◇◇◇
キーンコーンカーンコーン
帰りのホームルーム終了のチャイムが鳴る。いつも聞いているチャイムだが、こんなに緊張してチャイムを聞いたことはない。テスト終了のチャイムですらここまで緊張していない。今病院に行けば何らかの症状で入院する自信がある。でも入院するわけにはいかない、これからルナちゃんに告白するのだから。そう自分に言い聞かせ、まだ自分の席にいるルナちゃんのところへ向かう。
「ルナちゃんお待たせ!」
なんとか声が震えないように言えたと思う・・・。
「ふふっ・・・望月さん先ほど同じホームルームを終えたばかりなので待っていませんよ」
「そっ・・・そうだよね!ははっ」
あぁ~恥ずかしい・・・穴があったら入りたい・・・。
「それでどこでお話ししますか?私はこのままここでも大丈夫ですよ?」
「あぁ~それなんだけど・・・。実は直樹と麗奈が今日用事があるみたいで、美化委員会の手伝いをすることになって、ごみがあるか見るだけでだから簡単なんだけど、もしルナちゃんが良いならそれをやりながら話をすってことじゃダメかな?」
「私ならそれでも大丈夫ですよ。一緒やりましょう」
「ありがとう!普段は入れない場所だけどカギは預かってるから、このまま行こうか」
「はい。それにしても普段入れない場所っていうのは何か緊張しますね。ちなみにどこなのですか?」
「そうだよね!なんか特別感があってちょっと緊張するよね!場所はついてからのお楽しみで!」
そう言い僕と彼女は一緒に屋上への階段を昇っていく。
ちなみに今の僕は別の理由でめちゃめちゃ緊張しているけど・・・。
階段を昇りきり直樹から預かったカギを使い屋上へ続く扉を開けた。
「わぁ~凄いですね!私初めて屋上に来ました!やっぱり高い所からの景色はとても綺麗で、普段見ている場合でも特別に感じますね」
僕たちの通っている高校は高台に建っており、その屋上ともなれば街が一望できる。彼女はその景色を見れたのが嬉しいのか周りをきょろきょろと見ていた。その姿が珍しくとても可愛くてにやける顔を抑えるのが大変で仕方ない。
「本当に綺麗だよね!って僕も屋上の来るのは初めてだけど」
「はいっ!ありがとうございます望月さん。ここに連れてきてくれてとても嬉しいです。」
「ならよかったよ!用事があった直樹たちに感謝しなきゃだな~」
「そうですね!私も明日お礼を言いたいと思います!こんな良い景色の中で何をお話しましょうか?何かお話するのがもったいない気がしますね。望月さんとこのまま景色を堪能したいですね。この景色が次いつ見れるかわかりませんし。」
確かに彼女とこの景色を堪能したい気持ちはあるが、その気持ちをグッと我慢して今日伝えなければならないことがある。いざ告白しようと改めて決意すると、景色を見て少し落ち着いて鼓動が再び早くなってくる。でも自分の性格上今ここでためらったらもう言えない気がする。今言うしかない!
「確かにこのまま景色を堪能したいけど、実は今日ルナちゃんに伝えたいことがあるんだ・・・」
彼女が不思議そうな顔をしながら聞いてくる。
「伝えたいことですか?急に言われると何故か緊張しますね」
彼女も緊張してるみたいだ。何故か僕はそれが嬉しくもあった。伝えなければ自分の気持ちを自分の言葉で。
「僕は・・・いや私はルナちゃんが好きです。私の彼女になってくれませんか?」
自分自身でも驚くくらい出てきた言葉はとてもシンプルなものだった。でもだからこそこの気持ちは間違ってないと改めて感じた。
「・・・・えっ!?私と望月さんがですか・・・?」
「うん。夏休みに作った作文の中にあった私の葛藤に気づいてくれて、それがとても嬉しくてそれから目で追うことが増えて惹かれていったんだよ。」
「やはり何かに悩んでいたんですね」
「私は小さい頃からママの影響で女子だけど、男子っぽく振る舞っててそれが今も続いているんだけど、その時はこのままでいいのかなって悩んでたんだ。でも今は私自身この生き方に誇りを持ってるし、ママにも感謝している。」
「こんな私だけど、絶対に貴女を幸せにしてみせる!だから私と付き合ってください。」
全て伝えた・・・。これでダメでも後悔はしない。
「・・・・・わ・・私で良ければ是非・・・・///」
その瞬間彼女以外の音が匂いが景色が消えた気がした。そう思えるくらい彼女に集中していた。
「ほ・・本当にこんな僕でいいの?」
「はい。私はそんな貴女が好きです」
「うぅ・・・あ・ありがとう・・・」
前は我慢できた涙が今回は止まらなかった。本当は僕自身も不安だったんだと思う。女子なのに男子のように振る舞っている自分が、恋愛対象が女の子な自分が、彼女に受け入れてもらえるかどうか、心のどこかで怖がっていた。そんな気持ちが今溢れてしまっているんだと思う。
そんなとき彼女は僕に近づいて、優しく抱きしめてくれた。
「もう我慢しなくていいですよ。だって私は望月さん・・いえ春ちゃんの彼女なのですから」
その言葉を聞き僕は彼女を抱きしめながら泣いた。今までの泣いたことがないくらいわんわん泣いた。そして段々と落ち着き始めたころ、ゆっくりと彼女を抱いていた腕の力を緩めた。そのことに気づいた彼女も力を抜き向かい合う形になった。その時見た彼女の顔は耳まで真っ赤でとても恥ずかしそうにしていた。正直僕も大差ない顔をしている・・・いや泣いた後だから僕の方がよっぽど酷い顔だと思う。
「ありがとう。ルナちゃんのおかげで落ち着いたよ。でも春ちゃんって呼び方何だかむずがゆいんだけど・・・」
「よかったです。春ちゃん呼びいいじゃないですか!私は春ちゃんのことを一人の女性として接していきたいので、ちゃん付けが私の中で一番しっくりきます!私のことはルナでいいですから!」
予想以上のグイグイ具合に少し驚いた。彼女って距離が近づくとこんな感じなのかな?
「わ、わかったから!ルナの言う通り僕のことは春ちゃんでいいから」
「はい!それで大変申し訳ないのですが・・・。せっかく春ちゃんと付き合えたので、このまま一緒にお話しをして一緒に帰りたいのですが、今日だけはこのまま帰宅していいですか?」
「えっ!?」
正直僕は彼女が言った通り一緒話したり帰ったりしたかったからかなり戸惑った。でも彼女のことを優先したいから断ることはできないかな。
「僕はそれでもいいけど・・・。でもなんでかちょっと気になるかなーって・・あはは・・・」
「ごめんなさい。本当は春ちゃんのこと高校に入学して少し経った頃からずっと好きだったんです!だから今日は嬉しくて恥ずかしくてこれ以上一緒にいられません!」
「えっ!!!えぇーーーーーーーー!!!」
僕が驚いている間に彼女はさらに赤くなった顔をしながらで屋上の出口に走って行ってしまった。
「えっちょ・・まっ・・・」
慌てて僕は彼女を追いかけよとしたが、そこにはすでに誰にもいなかった。
「は、早すぎる!ていうかさっきの言葉を言って逃げるはズルくないかーーーー」
そう言う僕の言葉が一人の屋上にこだました。
◇◇◇
その後本当に帰ってしまった彼女のことを思いながら帰路についた。帰っている途中で直樹からメールが届いていることに気づき、内容を確認してみると『結果を聞かせろ』とのことだったので、明日直接話すと返し再び自宅に向け歩き出す。
直樹からのメールの後、彼女のことを考えながら歩いていたらいつの間にか自宅の玄関前に着いていたことに気が付いた。
「ただいまー」
「お帰りー。早くリビングにて結果を教えて!」
玄関を開けて帰宅したことを告げると、リビングからお母さんの声が聞こえた。僕の告白のことをどれだけ聞きたいのかそれだけで分かってしまった。ここで逃げるわけにもいかないので大人しくリビングへ向かう。
「ただいま」
「はいお帰りなさい!さぁさぁ座って座って結果を早く教えて!」
「わかったから!グイグイこないで!」
「はいはい!こちらへどうぞ!それでどうだった?」
「ちゃんと告白して、付き合うことになったよ!」
「まぁ!よかったじゃない!どんな子なの?」
「ありがとう。教えてもいいけど絶対夕飯の時にママに聞かれるからその時でもいい?」
「そうね、紅葉ちゃんも聞きたいと思うからその時にしましょうか」
「うん。じゃあ部屋に戻るから夕飯になったら教えて」
僕はそう言い残して自分の部屋に戻っていった。部屋に戻ると改めて今日起きたことが夢じゃないかと思うけど、彼女を抱きしめた感覚がまだこの腕に残っていることを感じ、本当に彼女と付き合えたことを実感した。
彼女のことを思い出しベットで悶えていると、お母さんから夕飯にすると言われたので乱れていた髪を整えリビングへ向かう。
リビングに着くとすでにお母さんとママが座っていたので、僕もいつも席に座った。
「春ただいま」
「ママお帰り」
「向日葵から聞いたけど、何か良い報告があるみたいね」
「うん!お母さんには既に言ったけど僕彼女ができたんだ!とっても優しい子で面白いところもあるいい子なんだ!」
「そう!よかったね!ちゃんと大切にするだよ」
「わかってる!絶対に幸せするもん!」
「紅葉ちゃんも学生時代から大切にしてくれたもんね」
「向日葵いきなり春の前で恥ずかしいことを言わないでくれ」
もういつも通りだから慣れたが、お母さんとママは隙あらばイチャイチャと二人だけの世界に入ってしまうので、僕は黙々とお母さんが作った夕飯を食べ続けた。その後二人が別世界から戻ってきたタイミングで前から気になっていたことを聞いてみた。
「お母さんとママに聞きたいことがあったんだけど、呼び方逆の方がよくない?お母さんはぽわぽわしてるし、ママはキリッとしてるから、逆のような気がしてるんだけど?」
「紅葉ちゃんは普段はキリッとしているけど、実は少女趣味で可愛いのが好きだから、呼び方も『絶対私がママがいい』って言って聞かなかったのよ」
「向日葵!!!それは絶対内緒だと言っただろ!」
「えぇ~~~~そのなこと言ってたっけ?」
その後再び二人がイチャイチャし始めて、完全に藪蛇だったことに気づき夕飯も食べ終わったので、こっそりとリビングを出てお風呂に入り自分の部屋と戻った。
そろそろ眠くなり寝ようかなと思ったとき、スマホからメールの着信音が鳴り内容を確認すると彼女からだった。
『春ちゃんもう寝ちゃってますかね?今日は告白してくれてとても嬉しかったです。恥ずかしくて先に帰ってしまってごめんなさい。私も春ちゃんのことが大好きです。それではまた明日。おやすみなさい。』
ヤバいニヤニヤが止まらない・・・・
その後10分程ニヤニヤしていたが、返事をしてないことに気づき慌てて返事を送って、幸せな気分のままいつの間にか寝落ちしてしまっていた。
「だいすきだよ・・・すぴぃ」
◇◇◇
これが幸せで溢れている僕たちの始まりの物語。
いかがだったでしょうか。
ちなみに作者は向日葵と紅葉の両親百合の推しです(笑)