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マジック・キャンセル〜最弱無敗の異世界攻略〜  作者: ぱんどらの箱/皐月凪
ユグドラシル編
3/5

一章 始まりの冒険(2)

 ゴブリン族をあまり舐めてはいけない。平気で百匹を越える集団で村を襲ってくる。力を合わせると非常に厄介な存在だ。

 

 「ここが目的地のダリナ村のようだな」


 先人を切っているサイトウは、地図を確認しながら、そう言った。


 「結構歩きましたね」


 と、ミツモト。


 「喉が渇きました、先生」


 と、チトセ。それにサイトウではなく、ミツモトが反応して、


 「この村の近くに川があるようだから、一緒に行かない?」


 「うん、ありがとう」


 (これがリア充の対応力か)


 トウマは心の中でそう呟く。

 サイトウ一行はダリナ村の敷地に入り込んだ。その近くにいた村人の少年が、不思議そうに見ていた。


 「誰ですか? ここの村人以外入ってはいけませんよ」


 「ゴブリン討伐に来た者です」

 

 少年は表情が明るくなった。


 「ありがとうございます! 今、村長呼んできますね」


 そう言って、元気よく駆け出していった。

 数分が経過して、村長らしき人物が向かって来た。白ひげを生やしていて、体格は平均より一回りおおきく、ワイルドな男性だった。


 「クエスト受けて下さってありがとうございます。ダリナ村で戦えるものがごく僅かで、ゴブリンが来る度に被害が絶大なんですよ」


 村長は十分戦えそうな体格をしているが、村長の周りにいる村人たちは、お世辞にもモンスターと渡り合えそうとは言えない。


 「大体何時くらいにゴブリンは来るのですか?」


 サイトウが村長にそう訊いた。


 「奴等は基本的に夕方に来るイメージが強いですな。ですから、来るまではこの村でゆっくりして行ってください」


 「分かりました。それまでは武器のチェックなどをしていますね」


 これからの予定が固まった。現在時刻は13時。夕方にゴブリン族が来ると言っていたため、16時にはいつでも戦闘体制に入っておきたい。そのため、3時間の猶予がる。その間で装備の確認をして、ゆっくりと休憩を取ることに決めた。

 

 取り敢えず、部屋を一つ借りることができた。四人分の武器を地面に置き、これから誰がどの武器を使うかの作戦タイムだ。

 武器はギルドで冒険者登録すると貰える簡易的な物だ。それでも、一つあたり銀貨5枚と、そこそこ値段はする。


 「剣が二つ。弓が一つ。槍が一つ。拳銃が一つ」


 武器の配布はランダムのため、自分が欲しい武器が手に入るとは限らない。

 サイトウはさあ、選べと、全ての武器を地面に並べた。


 「僕は剣がいいです」


 「僕もだね」


 エンドウとミツモトが先手必勝作戦に出る。

 

 「先生、弓矢と拳銃の弾はそれぞれ何個あるのですか?」


 と、トウマの質問だ。

 サイトウは武器を入れていたバックから、目的の物を数えた。


 「えーと、弓矢は10本で。弾は恐らく50発は撃てると思う」


 「ありがとうございます。チトセさん、好きな方を選んで」


 「えっ、ありがとう、トウマ君。じゃあ、私は弓道やっていたから、弓にしようかな」


 チトセはそう言いながら、弓を手に取る。チトセは弓道部に所属していて、全国大会に出場経験もある実力者だ。もっと自信を持ってほしいところだ。

 

 「俺は拳銃にします。先生、やり使えますか? もし、難でしたら変わりますよ」


 「大丈夫だ。生徒の意見が最優先だからな」


 「武器の使い手が決まったろころですが、俺たち戦闘経験ゼロなんですが、上手くいけますかね」


 戦闘無経験がゴブリンたちと戦えば、普段目にすることがないグロい部分を見てしまうことになるだろう。言わば、人を殺すと同じ感覚なようなものだ。


 「それは俺も分からない。この中で逃げる人も出てくるかもしれない。でも、そうなったら、そうなった時に考えればいい。今は戦闘練習しても無駄なだけだ。ゆっくりと休もう」


 このメンバーの能力(ステータス)で考えると、ゴブリン討伐は素殴りでもできると思われる。ただ、殺す時に躊躇ってしまう恐れがある。そこで返り討ちに遭って、命を落とすというのはよくある話だ。

 

 「では、各自自由時間だ」




  1




 トウマの自由時間は隠れて、速攻魔法である、<雷撃(ライトニング)>を撃つすることにした。トウマはダリナ村の近くにある森林に場所を移した。


 (よし、ここなら誰にも被害が出ない)


 できるだけ魔力を使うのは控えたい。もし、ゴブリン族が来たときに魔力が切れている状態で戦ったら、大きな支障がでる。だから、感覚を掴む程度でしようと考えていた。

 

 トウマは集中する。水の中に深く、深く、沈んでいくように。そして、手をゆっくりと伸ばし、魔力を流れているのを感じ取り、手のひらまで伝わるのを感じた瞬間。


 「<雷撃(ライトニング)>!」


 ガシャーン!


 狙っていた木に閃光の如く降り注ぐ雷。まさに刹那の出来事だった。だが、威力は凄まじかった。周りにある木も連鎖的に折れっていった。トウマは思った以上の広範囲に驚いている。

 

 (これはかなり使えるぞ)


 ただし弱点はある。ある程度狙ったところに放てるようにならないと、味方にも攻撃してしまうかもしれない。味方が近くにいなかったら、アバウトで放てる。

 その後もトウマは<雷撃(ライトニング)>を何度が撃ってみて、今すぐの実践で使えるか試してみた。

 結果、取り敢えず使ってみることにした。モンスターを倒すことにより、魔法のレベルが徐々に上がる。現在の魔法レベルは1だ。一つレベル上げるのに相当時間が必要とされている。1年に一回上がって良い方だ。一番効率の良いレベルの上げ方は、自分より格上のモンスターを倒すことである。今回はゴブリン討伐のため、経験値は少ししか上がらないだろう。




  2




 そして、16時になった。

 サイトウ一行の冒険者は村長から、ゴブリン族が来る方角を教えてもらい、ダリナ村に侵入させないように隊形を整えた。

 前衛に剣使いのエンドウとミツモト。

 その後ろの中衛に槍使いのサイトウ。

 最後の後衛に拳銃使いと弓使いのトウマとチトセ・

 前衛のエンドウとミツモトは只ガムシャラに目の前のゴブリンを斬る能力が必要だ。

 中衛のサイトウは前の二人が仕留め損ねたゴブリンを槍で突き刺す。

 後衛のトウマとチトセは恐らく一番ゴブリンを殺すことになる。前衛より前の敵を狙撃して、積極的に相手の戦力を減らす。


 数分後。先に見えるのは全身緑色の二足歩行をしている集団がいる。即ち、ゴブリン族だ。


 「もうすぐ戦いが始まる。気を引き締めろ」


 仕切り役である、サイトウがそう言葉を掛ける。

 メンバーたちはコクリと頷く。いざ勝負、となると、以前の空気と一変代わり、緊張感が漂う。

 ここでゴブリン族も馬鹿ではないため、しっかりと陣形を作り始めた。前衛には木の棒を持った部隊が配置された。その先はダリナ村からではよく分からない。

 ゴブリンの数は、横に50匹、縦に30匹。約だが、150匹だ。

 そして、前衛にいるゴブリンたちは一気に走り出した。 

 約50匹の戦力がダリナ村を襲う。


 「クキ君とチトセさん。攻撃を開始してくれ!」


 サイトウの大きな号令とともにトウマは狙撃を開始した。 


 バンッ!


 一発目は見事命中。


 (今のうちに多くの戦力をけずろう! ......ッ!? )


 トウマが驚いた光景はチトセの弓を扱う能力だった。チトセは村人から貰ったマッチ棒で弓矢に火をつけて、それをゴブリンたちが固まっているところに放っていた。


 「負けないよ、チトセさん!」


 トウマは狙撃を続ける。


 一方、前衛のエンドウとミツモトは斬るペースは遅いものも、確実にゴブリンたちを仕留められている。


 「クキ君とハナの連撃が止まらないね」


 と、エンドウ。

 ミツモトは話を聞いていなかったのか、聞こえていなかったのか、反応は全く無かった。


 「クールじゃないな、ハルキ!」


 「ん? ああ」


 今のミツモトには普段の余裕な表情が一切ない。仕方のないことだろう。一歩踏み外したら、死であるからだ。


 中衛のサイトウは<ファイヤーボルト>の速攻魔法を使いながら、前衛を逃れたゴブリンたちを一匹も残さず討伐に成功している。今のところ、後衛にゴブリンは行けていない。


 前衛で木の棒で攻めてきたゴブリンたちは、全滅した。欠かさず次の部隊が前に出た。持っている武器は、弓だった。

 弓をひいて新人冒険者達に弓矢を放った。


 「おいおい、僕たちこれ当たったら死ぬよ」


 そう嘆いていたのは、前衛を務めているエンドウだった。勿論、ミツモトも例外ではない。彼等は一歩も動けず、反攻すらもできない精神状態だった。


 「諦めるな! そこから離れるんだ!」


 と、サイトウは初めて生徒に怒号をあげるが、二人には伝わらなかった。

 およそ40本の弓矢が前衛の頭上に降り注ぐ時。


 「<雷撃(ライトニング)>!」


 ガシャーン!


 30メートル後方から速攻魔法である、<雷撃(ライトニング)>が二人に降り注ぎそうだった、弓矢を見事打ち払った。

 トウマの援護だった。


 「ふう、良かった」


 トウマは胸を撫で下ろした。

 少しでもタイミングが前後していたら、エンドウとミツモトは弓矢が体中に刺さっていた。


 「トウマ君の魔法......?」


 チトセは一瞬の出来事過ぎて、何が起きたのか理解が追いつかない。


 「ああ、そうだ。けど、今はそれどころじゃない。次の攻撃が来る前に仕留めるぞ」


 「うん!」


 「俺は弓を持ったゴブリンたちの部隊へと直接向かう。前衛の二人が戦えそうにないしな。チトセさんは」


 ここでチトセは、トウマの言葉を遮る。


 「ここで待っていて。って言うんでしょ。けど、私は絶対に付いていくからね! トウマ君一人だけだとやられるから」


 トウマが言おうとしていたことが全く同じだった。トウマは少し苦笑いしながらも。


 「ああ、そうだな。一緒に戦おう!」


 チトセは大きく頷いて、二人はゴブリンたちに向かって駆け出していった。


 「おい、待て! これ以上行ったら危ない!」


 サイトウの言葉を気にもせず、突っ込む。

 

 「馬鹿なのかあの二人は......」


 サイトウはもう戦えそうにない、エンドウとミツモトの前に立ち、護衛の形をとった。


 ゴブリンたちが弓矢を放つ前に、トウマは<雷撃(ライトニング)>を放ち、少しでも後ろにいるクラスメイトに当てさせないようにする。

 

 「フリーズ!」


 チトセも速攻魔法を習得していた。

 ゴブリンたちの足を凍らせた。


 「チトセさん、魔法使えるんだ」


 「まだトウマ君みたいに威力は十分じゃないけど」


 トウマはチトセだけでなく、クラスメイト全員の能力(ステータス)を把握できていない


 「ゴブゴゴブウゴゴブ!」


 ゴブリンの鳴き声だ。かなりのパニック状態だ。

 チトセが<フリーズ>を次々に撃ってくれるおかげで、狙撃で外さないようになった。


 (あと一発か)


 だが、次の一発で弾切れとなる。ゴブリンの残り数は100匹くらいだ。速攻魔法だけで残りを討伐しようとすると、現在の二人の魔力量では足りない。

 そして、トウマは最後の一発を撃った。


 「チトセさん、ここは一旦下がろ!」


 声を張り上げて言う。


 「いや、でも......」


 チトセは刹那の迷いがあった。それはここで戦わなくては、クラスメイトたちに迷惑をかけてしまうことだった。彼女は学級委員なのだ。仲間思いで、成績優秀、運動もできる、と。これ以上にないリーダーだ。そんな彼女は異世界という、白紙の地図を広げて旅をする、不安だらけのこの世界をできるだけ安心させたいという気持ちがある。


 「一旦下がるだけで、諦めるとは言っていないぞ! このままでは魔力が尽きて、俺ら....この村が終わってしまうかもしれない! 相手の戦力は大分削れたから、そう簡単に攻めないと思う」


 「うん、トウマ君の言う通りだね」


 チトセはトウマの案に納得した。



次回、一章 始まりの冒険(3)は2021年3月29日(月)投稿です。

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