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マジック・キャンセル〜最弱無敗の異世界攻略〜  作者: ぱんどらの箱/皐月凪
ユグドラシル編
2/5

一章 始まりの冒険(1)

 トウマは起き上がった。そして、自分の体を触り、頬を叩き、実体があるのを感じた。

 改めて、トウマはこう思った。


 「本当に異世界に来てしまった......」


 トウマに転移中の意識は全く無かった。ただ、神というのを見たとういうことは、覚えていた。


 (他の人たちが......いない)


 辺りを見渡すが、同じクラスメイトを見つけることができない。路地を歩いているのは、この街に住んでいる人だ。

 トウマは路地の方に行った。そこには店が果てしなく連なっていて、人もたくさんいる。かなりの盛り上がりを見せていた。


 (エルフがいる)


 耳が大きくてとても可愛げがある。


 「よっ!」


 「うわああッ!?」


 トウマは後ろから何者かに話しかけられ、驚きが全面に出てしまった。


 「何だエンドウか。ビックリさせないでよ」


 ここでクラスメイトのエンドウと出会う。決して中が良い訳ではないが、エンドウはどんな人でも優しく接するため、友達だとよく勘違いされやすい。


 「やっと見つけたよクキ君。一時間くらい探してたんだぞ」


 「一時間? 俺は今さっきここの世界に来たばかりだと思うが」


 「クキ君がずっと寝ていただけじゃない? そんなことより、クキ君の能力(ステータス)を見させてもらうよ」


 「能力(ステータス)なんて分かるのか?」


 「僕は分からないけど、サイトウ先生が鑑定というスキルを持っていたから、みんなの能力(ステータス)を見ることができるんだ」


 トウマは能力(ステータス)やスキルがあるということは、ただの平和の異世界ではないと思った。


 「みんな! クキ君ここにいたよ!」


 エンドウは大声で街中にいるクラスメイトを呼んだ。

 その声に気づき、トウマとエンドウの方へと近づいてきた。


 「良かった。クキ君が発見されたから、全員揃うことが出来たな」


 サイトウは教師として、必ず元の世界に連れて帰るということが勤めだと思っているから、全員の安否の確認が出来て気持ちが楽になった。


 「では、早速だが、クキ君の能力(ステータス)を見させてもらうね」


 「お願いします」


 クキ・トウマの能力(ステータス)

 Lv.2

 力:D451

 魔力:E392

 耐久:D466

 俊敏:B618 

 器用:C569

 <魔法> 

 雷撃(ライトニング)

 <スキル>

 なし


 これが現時点のトウマの能力(ステータス)だ。


 「おいおい、嘘だろ」


 「マジかよ」


 「クキ君って凄いね!」


 「えっ......」


 周りのクラスメイトたちが驚いているのに、トウマは理解が追いつけない。

 

 (あまり強くない能力(ステータス)だと思うが......)


 この世界ではレベルアップさせるのは、自分より格上に勝たなくてはいけない。だが、トウマは一度も戦っていないが、Lv.2

ということは、相当恵まれている。それに加えて、初期魔法があるということも、クラスの中では珍しい。


 「クキ君がこのクラスで一番能力(ステータス)が高いようだな」


 「本当ですか」


 「嘘をついてどうする」


 ここでトウマは自分が強いということを理解する。


 「おめでとう、クキ君。僕より強いようだね」


 勇者の格好をしてそう言うのは、ミツモトだ。


 (うわっ、何その勇者の鎧みたいの。見ていて、痛いな)


 トウマは心の中でそう思う。

 ミツモトは女子から絶大な人気を誇る。勉強ができて、運動ができて、そして、何よりイケメンだ。

 そんなミツモトの真逆の学校生活を送っている、トウマをミツモトは褒め叩いた。

 トウマにとって、少し嬉しいことなのだろうか。

 ミツモトの周りを、クラスのカーストトップの女子たちが囲んでいる。


 (何故か俺のことを睨んでいるぞ、コイツら)


 トウマが我らのミツモトより、強いのが気に食わないのだ。

 

 「さあ、全員の能力(ステータス)が分かったところで、まだ昼だから、クエストをクリアしてお金を稼ぐか」


 サイトウは冒険者ギルドがあるということは、把握済みだ。

 

 「冒険! 血が騒ぐぜ!」


 男子たちが口々に同じようなことを言う。それを女子が少し引き気味で見ている。

 女子はこういうファンタジーに憧れている人は、中々いないため、早く元の世界に帰りたいという欲が強い。

 こんな経緯で冒険者ギルドに向かうことになった。




  1




 冒険者ギルドの扉を開けると、色々な種族がいて、他種族同士で杯を交わす者がいる。


 (これが冒険者ギルドか)


 想像以上の賑やかさにトウマは拍子抜けの様子だ。

 先に進んだところには、クエストの受付嬢がいる。

 サイトウが教師として、先頭に立っている。


 「何かクエストはないですか?」


 単刀直入で訊いた。

 

 「えーと、まず冒険者登録をしてもらいたいのですけど」


 受付嬢はサイトウの後ろにいる人数に目を通す。


 「何人ぐらいいるのでしょうか......?」


 「30人です」


 30人もの大人数で、冒険者ギルドに来られた経験は恐らくないことだろう。

 

 「すみません、時間的に5人までが精一杯です」


 頭を下げながらそう言った。サイトウはそれを見て、戸惑いを見せる。


 「いえいえ謝らなくても。こんな人数で来てしまった私が馬鹿でした。で、5人でしたよね」


 「あ、はい」


 サイトウは一度生徒たちの方に振り返り、誰を選抜しようかを考える。単純に現時点での能力(ステータス)が高い順に冒険者登録させることに決めた。


 「クキ君とエンドウ君とミツモト君とチトセさん前に来てくれ」


 能力(ステータス)的に考えたら、この4人を選ぶことになる。

 

 「あと、一人は?」


 「私です」


 最後の5人目はサイトウということになる。

 

 「決まりましたね。では、この5人は私に付いてきてください」


 「少し待ってください」


 受付嬢の脚を止める。


 「この時間先生はいなくなる、他の人たちに迷惑をかけないようにな」


 「「はい」」


 トウマは改めてサイトウ先生が、責任感の強い人物だと思う瞬間だった。

 

 「この五人には冒険者登録をさせてもらいます。まず、能力(ステータス)を調べさせてもらいますね」


 「それなら私が鑑定しました」


 「鑑定スキルお持ちだったんですね、では、能力(ステータス)をこのカードに書いてください」

 

 冒険者カードの項目欄は、サイトウが鑑定したのと完全に合致していた。

 サイトウは全員の能力(ステータス)をメモして、本人に渡していたため、いつでも確認が出来る状態だ。

 ここにいる五人はすぐに項目欄を埋めることが出来た。


 「それでは回収しますね」


 受付嬢は一人一人の冒険者カードを回収して、冒険者ランクを決める仕事へと入る。

 十分が経過した。

 五人の前に受付嬢が姿を現した。


 「お持たせしました。それぞれの冒険者ランクが決定しました」


 これで冒険者登録が済んだ。

 それぞれの冒険者ランクは、トウマはBランク。エンドウはDランク。ミツモトはCランク。チトセはDランク。そしてサイトウはBランクだった。


 「これでもうクエストを受けれますか?」


 「はい、大丈夫ですよ」


 掲示されているクエスト内容は、水準ランクによって報酬は当然違う。高ランクほど硬貨が貰える。

 ドラゴン討伐:金貨10枚(SSランク)

 殺し屋の確保:金貨5枚(Sランク)

 ゴブリン討伐:金貨1枚(Aランク)

 飼い猫探し:銀貨5枚(Bランク)

 などがある。

 サイトウの考えとしては、今晩全員が夕飯を食べれることが目的のため、少ない報酬では賄うことが出来ない。かといって、ドラゴン討伐などのクエストは無謀すぎる。よって、たどり着いた答えは。


 「ゴブリン討伐でお願いします」


 「えっ、大丈夫なんですか? Aランク推奨と、書いてありますよ」


 チトセが反論する。

 この初心者パーティは、最高で冒険者ランクがBランク止まりだ。当然不安が襲うことだろう。

 

 「自分たちの一つ上のランクのクエストが一番丁度良いらしいから、余裕なクエストだと思うぞ」


 「先生、それは何処情報ですか?」


 「ん? ファンタジーアニメとかでよく観ていた」


 サイトウは当然のようにそう言ってみせる。


 「げっ、信用できませんよ、そんなの」


 周りの連中も同感の様子だ。


 (サイトウ先生って、アニメ観るんだな)


 トウマだけ違う観点に注目していた。何なら今度アニメの話でもしてみよう、と、緊張感が足りていない。いや、このくらいリラックスするのが異世界では向いているかもしれないが。


 「まあ、それでいいじゃないですか。なんか行けそうな気がしてきたし」


 と、エンドウ。

 他の四人も頷いた。


 「では、ゴブリン討伐クエストですね。毎日村に攻め込むゴブリン族を討伐できたら、報酬の金貨1枚を差し上げます」


 「はい、それでお願いします」


 これでクエスト承諾が完了した。

次回、始まりの冒険(2)は2021年3月26日(金)の午後7時頃に投稿予定です。

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