プロローグ・クラス転移
新しく連載するのは、仲間と異世界攻略していく物語です。よろしくお願いします!
九鬼冬馬はいわゆるボッチというものだ。友達は誰一人いなく、学校生活では暇あればラノベを読むオタクだ。
今日も毎朝母が作っている弁当を10分で食べ終わり、読書の態勢へと入ろうとする。どうやら紙の本ではなく、スマホを取り出して、ネット小説を読み始めた。
昼休みが終わった。冬馬のクラスは5時間目は体育だから、校庭へと向かった。
季節は夏のため、太陽は真上に高く上がっていて、直接光を浴びさせられる。
蝉はミンミンと鳴り続けて、より暑さを感じることだろう。
「これから体育の授業を始める」
体育担当教師の斎藤が、授業開始の言葉を告げる。
生徒たちの中には、既にバテている者がいる。なぜなら、この真夏の中の昼休みに、サッカーや野球をしていたからだ。バテるのは当然だろう。この授業中に倒れても可笑しくない。
20分が経過した。
ソフトボールのチーム対抗戦の真最中だ。
カキーン!
ボールを見事にバットに乗せて、良い音を鳴らす。打者である、八坂はゆっくりと走り出した。打球はグングンと伸び、やがてレフトを守っている、冬馬の頭上を大きく超えていった。
冬馬は必死にボールを追いかける。しかし、ボールを手にしている頃には、八神はホームベースを踏んでいた。
(......ん?)
冬馬は空が変な様子に気づく。校庭の範囲だけに掛かった不気味な雲。見たこともない色だった。嫌な感覚を覚えた。
そして、校庭の周りに青い結界が広がった。
「......くっ....うっ!?」
物凄い重力がかかった。
校庭にいる者全員が勢い良く地面に倒れた。
(一体、何なんだッ!)
ここで冬馬の意識は途切れた。
1
「ここは何処だ?」
トウマは目を覚ます。起き上がってみるも、痛みは消えている。
(死後の世界か、それとも......)
辺りには、トウマのクラスメイトたちがいた。
「何なんだよ」
「何よこれ」
「俺らは死んだのか?」
「そうかもね」
こんな事になってしまったら、落ち着いてられないのが普通だろう。
何もない真っ白な空間。まさに、虚無を感じさせられる。
「おい、お前ら、無駄話はするな。まだここが何処かがわからない以上、変な行動起こしたら行けないからな」
教師である、サイトウも被害を受けた。
コン、コン、コン、コン、コン、コン
誰かが歩いている音がする。
自然と生徒たちは、静かになった。彼らは恐怖を感じた。
「やあ、こんにちわ」
現れたのは髪が白く、全身白色のスーツを着ている男性だった。
「誰だお前は?」
サイトウは警戒心を強めて言う。
「人の名前先に訊くのじゃなくて、まずは自分を名乗ることが道理じゃないかな」
ここにいる者は、この男が起こした仕業だと確信した。
「俺はサイトウだ。これで満足か?」
「冷たい対応だね、サイトウ君」
「名前を名乗ってはくれないのか?」
「そうだったね、僕の名前は無いよ」
「「......」」
この男は何を言っているのかを理解できる者はいない。
「一体、お前は何を言っているんだ」
「何も変なことを言っていないよ。だって、僕、神だから」
頭のおかしい人にしか思えないだろう。自称神ということを察せる。
「お前を神と仮定した場合、何故俺らをこのような目に合わせたのだ」
「それが神に対する話し方かな? まあいいよ、それで君たちを異世界に転移させる理由は、単なる気まぐれだよ」
「気まぐれ?......そんなのに何故俺らが付き合わされなくてはいけないんだ」
サイトウはかなり強めの口調でそう言った。
「そこには理由はないよ」
「じゃあ、俺らを元の世界には返してくれる保証はあるのか?」
自称神は二つ頷いてからこう言う。
「条件を達したら、勿論元の世界に返すよ」
「その条件は何だ?」
「それは教えられないよ。教えちゃったらつまらないしね」
自称神はゲーム感覚で行っていることだ。倫理観の欠片もない。
「おっと、もうそろそろ時間だね。じゃあ、長旅に行ってらっしゃい!」
自称神は元気よく地球人を送り出した。
2年2組はこうして、異世界に転移してしまった。