間に合わなかった短編 『おにぎりが“わかやま”味だったから』
『なろうラジオ大賞2』。
“タイトルは面白そう”なワードを盛り込んだ1000文字短編。
これに間に合わず断念した作品があります。
ワードは『おにぎり』。
内容は、同棲してる彼氏に女のコが「いつから、女のコとして意識したの?」と質問したら「おにぎりが“わかやま”味だったから……」と言われてキョトンとする話。
彼氏さんね、女子人気も高く少し遊び人だったんですね。
対して女のコは、おとなしくて目立たない存在だった。
「それなのに、どうして?」って意味の質問だったんです。
彼氏さん曰く、みんなでバーベキューに行った時に女のコが気を利かせて持参したおにぎりを食べた時に、この女のコと“一緒の家に暮らして一緒に食事をする暮らし”が、自分の中でリアルな想像になった。
それがきっかけで、それまでノーマークだった女のコが、恋愛対象に変わったんだってお話。
その秘密がね、2人ともおばあちゃんが和歌山県に住んでて、それぞれ、毎年、たくさんの自家製の梅干しが送られて来てた。
彼氏さんのおばあちゃんは他界してしまってたんだけど、女のコのおばあちゃんは健在で、その日に持参したおにぎりの具が、その梅干しだったんです。
この話ね、半実話。
ボクはモテ男子でも遊び人でもなかったですけど(笑)
ボクの家は和歌山に縁も縁も無いけれど、家で梅干しを漬ける家庭は多かったんですよ。
ボクが子どもの頃は、一般的に。
時が流れて、世の中が変わっていった中で、「残念だなぁ……」と大きく感じることの1つがね、“梅干しの味”なんです。
梅干しは酸っぱい。
今の梅干しも酸っぱい。
間違いなく酸っぱい。
でもね、味は……違うんだなぁ……。
今の市販の梅干しは、健康を意識して減塩、酸っぱさをお酢でおぎなってるんです。
不味いとは言わない。
ただ、違うんです。
昔の梅干しは、梅と紫蘇と塩だけだったんじゃないかな?
今でも専門店なら手に入るかも知れない。
でもね、家庭で漬ける梅干しって、家族からのリクエストもあって、塩の量がどんどんエスカレートするんですよ(笑)
たぶんだけど、どこの家庭もそーだったんじゃないでしょうか?
この酸っぱさはね、明らかに今の酸っぱさとは別ものなんですよ。
バカ舌の味覚が鈍感なボクでも、わかるぐらい。
そして、今でも時々、無性に食べたくなるんです。
お話の結末?
女のコはおばあちゃんに梅干しの漬け方を習おうかな、とちょっと考えるって話です。
今どきの女子としてはオシャレじゃない地味な家事だけど、この恋は手放したくないから、って。