一與之齊
一與之齊、終身不改。故夫死不嫁、男子親迎。
――『礼記』郊特牲
一度夫婦となったからには、終生変わることはない。
だから夫が死んでも妻は再嫁せず、夫は婚礼の時に自ら新婦を迎えるのだ。
劉文叔が宛城に帰還したのはその五日後。まっすぐ皇帝の宮(もとの宛の郡府)に向かい、まずは昆陽勝利の報告を済ませ、当成里にある劉家の邸宅に戻る。――戻る、と言っても〈漢軍〉が宛を陥落させたのもほんの最近で、文叔がその家に入るのは初めてのこと。
未曾有の殊勲を立てての帰還とあって、劉家の者たちも興奮している。普段は大司徒府で劉伯升の下についている陰次伯も、今日は文叔に大事な話をしなければならないと、劉家の出迎えに混じっている。
閭門の前には、昆陽の英雄を一目見ようと、多くの宛の市民が集まっていた。やがて劉家の一団が現れ、歓声の中で門をくぐった。
まず最初に馬を降りたのは劉君元の夫、鄧偉卿。兜を外して顔が現れると、弾丸のように一人の少年が飛び出していく。
「父さん!」
「鄧汎!……元気だったか……」
数か月ぶりに父の腕に飛び込み、少年が泣きじゃくるのを、鄧偉卿がその背中を叩いて宥める。
「よく頑張った。……さあ、奥に入ろう」
ついでその後ろの、見るからに大柄の男は鄧少君だった。少君は怪我をしたのか、額に白布を巻いている。彼は叔父とともに歩いてきて、陰次伯と陰麗華を見つけ、目を見開いた。
「次伯……それに麗華? なんでここに……」
「ちょっと事情があって……」
言葉を濁す陰次伯の様子に、少君が首を傾げる。
「少君、無事でよかった!」
陰麗華が声をかけ、少君が頷く。だが、背後からかかる声に、少君の顔が露骨に歪む。
「麗華?……どうして、ここに?」
その声に陰麗華が満開の芙蓉のような笑顔になり、少君をすり抜けて文叔のもとに駆け寄る。
「文叔さま……! よかった。ご無事で……本当に……」
人目もはばからず文叔に抱き着いて泣き出した陰麗華と、それを抱き留める劉文叔の姿に、鄧少君は思わず顔を背ける。それを見た陰次伯は眉を寄せた。
――やっぱり。
陰次伯も以前より、鄧少君の気持ちに気づいていた。そして陰麗華にはまったくその気がないことも。しかしこの後、鄧少君にはもっと残酷な話を聞かさなければならないと思うと、次伯は胸が痛んだ。
――僕は、少君の方がイイヤツだと思うんだけど、こればっかりはな……。
次伯は抱き合って無事を喜ぶ二人に近づき、お邪魔虫候で二人に割って入った。
戻ってきた男たちが着替えを済ませ、夜は簡単な祝宴を張るというところで、陰次伯は劉文叔に面会を申し出る。もちろん、と堂内に導き入れられて、陰次伯は陰麗華と並んで牀に腰を下ろす。婢が運んできた白湯を一口飲んで、次伯は意を決して口を開いた。
「麗華が妊娠した。……ついては、今すぐにでも婚礼を挙げてもらわないと困る」
白湯を飲みかけていた文叔は、一瞬、虚を衝かれたような表情をし、しばらく大きな黒い目をぱちぱちと瞬きしていた。
「妊娠?……妊娠ってのは、要するに……」
「子供ができたんだよ! まさか身に覚えがないとか、言うつもりじゃあ……」
陰次伯が詰め寄ると、文叔は慌てて首を振る。
「そ、そんなことはない! 身に覚えならある! というか毎晩、思い出してた!」
「貴様、要するにそれは……」
「君も男ならそこは察してよ!」
困ったように首を傾げている陰麗華の前で、下世話な話はやめようと、劉文叔はコホンと咳払いした。
「ほんとに?……いや、疑ってるわけじゃなくて、信じられないっていうか、嬉しくてウソみたい! ほんとなの、麗華!」
羞恥で頬を染めて俯く陰麗華に、文叔は抱き着かんばかりだが、陰次伯がぐいっと間に入ってそれを阻止する。
「医者にも診てもらって、間違いない。だいたい計算すると来年の二月くらいに生まれる予定だ」
次伯の指摘に文叔が指を折って、うんうんと頷く。
「うん、計算もあってる」
「だから! 今すぐ結婚すれば、ちょっと早く生まれちゃったでごまかしが利く!だから今すぐ、陰麗華と結婚しろ!」
鬼気迫る表情で詰め寄る陰次伯に、劉文叔はあっさり頷いた。
「わかった。じゃあ、今夜にも……」
「それはダメ! いくら何でもあからさま過ぎる。誰が見ても怪しいって思うじゃないか」
「それはそうだけど――」
劉文叔が困ったように肩を竦める。
「でも明日から、すぐに潁川の方に向かうように命令されたんだ」
「明日? 今日戻ったばかりなのに?」
呆気にとられる兄妹に向かって、劉文叔も不満そうな表情を見せた。
「そう。……聖公、じゃなくて皇帝陛下は洛陽に遷都したいと思ってる。だから北の方の巡撫を急いでるからってね。本音は、どうも僕に宛にいて欲しくないらしい」
「どうして……」
陰麗華が首を傾げるが、劉伯升の下で働く陰次伯には、その辺りの事情も理解できるらしく、渋い顔で頷く。
「ああ、それは……要するに、嫉妬してるんだよ。自分はたいした手柄も立てることなく、皇帝に祭り上げられているから、伯升兄弟の活躍が妬ましいし、恐ろしい……」
文叔も頷く。
「兄さんが心配なんだよね。あのひと、変なところで自信過剰だし」
「……万一のことがあると?」
「それはわからない。ただ、聖公の周囲の人間は兄さんがただでも鬱陶しいのに、そこへさらに僕。……というわけで、北に追放なわけ」
「……今日を逃すといつになるかわからないのか?」
「うーん。……父城なんだよね。昆陽の東北にある県なんだけど、あそこがなかなか落ちなくて……頑固な人が守ってるんだなあ……でも、昆陽を守りきったことで、多分潮目も変わるだろうから、説得次第かな? そうしたら、十日くらいで戻ってこられるかもしれない」
文叔の話に次伯がうーんと腕を組んで考えこみ、決断を下す。
「わかった。婚礼はその父城から戻ってきてからだ。やっぱりさすがに今夜は外聞が悪い」
「そうか、兄さんは知ってるのかな」
「……子供のことは話してないよ。……突然、陰麗華が新野から出てきたから、薄々勘付いてるかもしれないけど」
陰次伯の言い方に文叔はふと思うことがあったのだろう。陰麗華に尋ねた。
「その……でも、麗華はわざわざどうして、宛まで出てきたの?」
「その……お母さまに妊娠がバレて……追い出されてしまって……」
その言葉に文叔が目を見開く。
「僕のせいで!……ご、ごめん、そんなことになってたなんて……ほんとにごめん」
慌てて謝る文叔に、次伯が忌々しそうに言った。
「全くだよ。本音を言えばぶん殴ってやりたいくらいムカついているんだぞ、僕は。君は女性の貞操を何だと思ってるんだ」
「それは……前に鄧仲華にも叱られたけど、僕はちょっと考えの足りないところがあって……申し訳ない。あの時はもう、二度と会えないかと思うと歯止めが利かなくて……」
陰麗華が真っ赤な顔で、身の置き所のない風情で俯いているのを見て、文叔も肩を竦める。
「ごめん、本当にごめん。でも、僕は今すぐにでも結婚したい。……僕のところにお嫁にきてくれる?」
「はい、喜んで……」
真っ赤な顔で頷く陰麗華を見て、陰次伯はやれやれと溜息をつく。
「……万一、麗華を泣かせたら承知しないからな。僕が当主として婚礼を認めるけれど、うちの母さんはしばらく臍を曲げている可能性もある。責任持って麗華を守ってくれよ?」
「もちろんだ、命にかけて守るよ」
そんな風に話がまとまって、宴会の準備ができた堂に三人で移動する。劉伯升も帰宅して、久しぶりに家族や友人たちが一同に会し、文叔らの帰還と勝利を祝った。
宴の間に、劉文叔と陰麗華は鄧偉卿の席に赴き、婚礼の媒酌を頼んだ。その隣にいた鄧少君が愕然とした表情で二人を見つめるが、陰麗華も劉文叔も、少君には全く注意を払うことなく、話を進める。
「媒酌?……もちろん、俺は二人の媒酌人のつもりだが……えらく急だな」
「うーん、ちょっと事情があって……今月中に婚礼を挙げろと次伯に詰め寄られたし……」
「今月中?」
鄧偉卿が胡乱気に二人を見て、あっと目を見開く。
「お前たちまさか……そう言えば、昆陽が包囲される直前に、お前、数日留守にしたな? まさかあれは……」
「いや、だからさ、まあ……いいじゃないか、若いんだから」
「何が若いだ、この馬鹿者が! 生き残ったからよかったのものの、死んでたらどうするつもりだったのだ? 陰麗華がどんな身の上になるか、少しは想像して自重しろ!」
鄧偉卿に叱られて、文叔も決まり悪げに頭をかく。
「うん……わかった。反省する。……でも、麗華のことがあったら、絶対に死ねないって思ったんだ」
「文叔さま……」
うっとりと見つめあう二人の様子に、耐えられなくなった鄧少君は、無言で席を立って出て行った。少君の気持ちを知っていた鄧偉卿は、失恋男の背中を見送って、溜息をつく。
「まあいいが……って、ちょっと待て、文叔お前、喪中じゃないのか?」
「え?……あ、そうか。母さんが死んだのいつだっけ」
「去年の十月、挙兵の日だそうじゃないか」
「あー。……もしかして、やばい?」
文叔があちゃーという顔をする。母親の死には斉衰三年の喪に服するのが決まりである。三年と言っても実際には二十七か月であるが、しかしその間、結婚などの慶事は行うことができない。陰麗華は、文叔の母が亡くなったと初めて聞いて、驚いて文叔を見る。
「お亡くなりなられていたのですか?」
「うん……去年の……それに、姉さんも……」
「それは……なんかもう、いろいろのことがあり過ぎて、遥か昔のことのように思えるな……」
鄧偉卿も遠くを見るような目をした。――彼の妻、劉君元とその娘たち三人が、小長安で非業の死を遂げたのは、昨年の十一月のことだ。
だがしばらく考えてから、鄧偉卿が言った。
「こんな戦乱の最中に、三年の喪もへったくれもあるまい。ボヤボヤしていたら、一生、結婚などできんぞ。文叔の喪が明けるころに、陰麗華の身内に不幸があるかもしれん」
「だよね。喪が明ける前に自分が死んじゃう」
どのみち、六礼を完備した婚礼など無理なのだから、と鄧偉卿が言い、略式ゆえに問題なかろうと結論づけた。
「まったく、あの腐れ大夫の横やりさえなければ、昨年の春に問題なく婚礼を挙げられたのにな……」
「ほんとだよ……ごめんね、麗華。こんな仮住まいみたいなところで、しかもあわただしくて」
「いいえ、そんなことは。わたしは文叔さまのところに嫁げるだけで十分です」
二人の醸し出す甘い雰囲気にすっかり当てられた鄧偉卿は、無言で立ち去るしかなかった甥の心情を思い、少しだけ複雑な気分であった。
翌日、劉文叔とその配下は再び潁川へと軍を向け、陰麗華は兄の家に戻る。数日後、無事に父城を下したという知らせが入り、ならば文叔の帰還早々にも婚礼を挙げるべく、陰麗華と小夏であり合わせながら婚礼の衣装を整え、張寧は子供たちに手伝わせて醪の準備をしているところに、陰次伯が真っ青な顔で飛び込んできた。
「大変なことになった……婚礼は中止かもしれん」
「どうしたんです? お兄さま」
「劉伯升が殺された」
その場にいた全員が息を飲む。
「劉伯升さまが?」
陰次伯が頷いた。
「皇帝が、殺した。……文叔もどうなるかわからない」
「どうしてそんな……」
劉伯升の配下に劉稷という武将がいて、武勇は優れているが、伯升への尊崇が少しばかり度を越していた。伯升が皇帝位を譲る形で劉聖公が即位したとき、劉稷は内心、不満を抱いていた。
劉聖公は劉稷を抗威将軍に任命しようとしたが、劉稷は自身はあくまで伯升の一将だと言い張り、受けることを拒否した。これに怒った聖公が劉稷を捕らえ、斬ろうとしたのを伯升が庇ったが、聖公は伯升をも捕らえ、即日、誅殺したという。
「もともと、李季文や朱長舒が皇帝に伯升は危険だと、讒言していた。まさか本当に殺したりはしまいと思っていたのだけど……」
陰次伯が額の汗をぬぐう。
「皇帝は伯升兄弟の名声が高いのを嫌っていた。……文叔もヤバイかもしれない」
「そんな……」
伯升や文叔の名声が高いのは、それだけのことを為したからだ。特に大した偉業もなく、周囲の思惑に乗って皇帝になっておきながら、彼らの名声に嫉妬するなんて、なんて器が小さいのだろうか。
「文叔さまの威名が高いのは当たり前ではありませんか。あれだけの……あれだけの不利をひっくり返して勝利を収めたのに。今、皇帝が宛を保っていられるのも、すべて文叔さまのおかげなのに……」
陰麗華が思わず言えば、陰次伯が人差し指を口に当てて、声を落とせと言う。
「それは全くその通りだと思うが、だからこそ皇帝からすれば、文叔や伯升の存在は邪魔なんだろう」
「でも……手柄を立てているのに、それが原因で殺されるなんて、どうしたらいいの。……手柄をたてない無能の家来ばかりだったら、負けてしまうじゃない」
「それもまったくその通りなんだが……」
陰次伯が眉間に皺を寄せる。
「当たり前だが、伯升の家臣たちは聖公に対して怒り心頭だ。文叔がいったいどう出るか……」
その翌々日、父城から駆け続けに駆けて劉文叔が宛に帰城し、皇帝の御前まで駆け込んだとの知らせが巡った。
兄を殺された劉文叔は、皇帝に対してどう出るのか。
結論から言えば、劉文叔は皇帝の前に跪き、兄・伯升の無礼を謝した。
もし皇帝が、昆陽の戦いの最大の功労者である劉文叔まで斬れば、急速に求心力を失い、あるいは漢軍は内部分裂するかもしれなかった。文叔が皇帝に対立する構えを示せば、それを理由に粛清するつもりだったに違いないが、はっきり恭順の意を示されれば、皇帝としては許すしかない。
劉文叔が兄の死を受け入れて復讐はもちろん、服喪もしないと宣言したことで、皇帝の正統性はひとまず守られた。弔意を表する者も無視して何事もなかったように振る舞い、陰次伯に予定通り、陰麗華との婚礼を行うと伝えてきた。
これには陰次伯が腰を抜かす。兄の死の直後に婚礼なんて、いくら何でも礼に悖る。しかし劉文叔の使いとしてやってきた王元伯なる男は、強硬に言い立てた。
「絶対にお連れせよと言明されております。どうか、某の顔を立てるつもりで……」
「それは……僕は伯升殿の下で働いていたんだ。状況が状況だから、弔問も遠慮しているけれど、吉服で、しかも婚礼だなんて、あんまりにも常識外れだよ」
王元伯は陰次伯と同じ年頃らしい、いかにも実直そうな男である。――潁川郡の獄吏をしていて、潁川郡にやってきた劉文叔に心酔して、押しかけて配下となり、文叔が昆陽の百万の包囲を突破したときも従い、現在は劉文叔の腹心の一人となっている。
「……劉将軍は現在、非常に厳しい立場に追い込まれておられます。伯升殿の死に不満を持っていないと皇帝に示すためにも、事前の約束の通り、陰麗華殿との婚礼は執り行わねばならないのです!」
王元伯が四角い顔を陰次伯に近づけ、唾を飛ばさんばかりに力説する。
「しかしだね……」
「今月中に婚礼をと、劉将軍に迫ったのは陰次伯殿と聞いておりますよ!」
たしかに、陰麗華の妊娠を誤魔化すためにも、婚礼は早めねばならないのだが――。陰次伯は王元伯の迫力に押されて、渋々、陰麗華を伴って当成里の劉家へと向かう。劉家で待っていたのは、文叔と、鄧偉卿だけだった。
「本当に婚礼をするつもりなのか。いくらなんでも――」
「するよ。兄さんの死を気にしていないという、振りをしないとね」
劉文叔が普段と違う、妙に冷めた顔色で陰次伯に告げた。兄の後ろからおずおずと入っていった陰麗華は、その声の冷たさにはっと身を強張らせる。文叔は陰麗華の様子に気づくと、立ち上がって陰麗華の手を取った。
「すまない、本当はこんな風に結婚するつもりはなかった。でも、わかって欲しい。これはどうしても必要なんだ」
陰麗華が無言で頷くと、文叔は露骨にほっとしたような顔をする。
「媒酌はするが、しかし……」
鄧偉卿が周囲を見回して、躊躇う。
「俺と、次伯だけなのか?」
「朱仲先は兄貴の護軍だったから、とてもじゃないが、今は婚礼に出る気にならないと言われた。……伯姫にもいくらなんでもひどいと詰られたけれど、裏方は手伝ってくれると言った。僕じゃなくて、陰麗華が可哀想すぎるから、だそうだ」
友人の言葉に陰麗華が胸を押さえる。
婚礼は女にとっては生涯で一番、華やぐ儀式だ。それをこんな風に済ますことを、伯姫は新婦の友人として非難してくれたのだ。
「……わたしは構いません。婚礼を挙げることが、文叔さまにとって必要なのですね?」
陰麗華の言葉に、文叔が顔をくしゃっとさせて微笑み、陰麗華の手を強く握った。
「ありがとう。済まない。……そうだ、まだ準備に時間がかかるから、その間に〈親迎〉だけはしよう」
「〈親迎〉?」
周囲の男たちも、そして陰麗華も不思議そうに聞き返す。
「『一たび之と斉しくなれば、終身改めず。故に夫死すとも嫁がず、男子は親迎す』。〈郊特牲〉の言葉だ。……僕は、生涯、陰麗華一人を妻とすることを誓って、〈親迎〉の儀式だけはしたい」
文叔の言葉に、だが陰次伯が困惑したように言う。
「……え、今からもう一回、家に戻るのか?」
だが、部屋の隅に控えていた王元伯がはたと手を打って、急いで馬車の支度にかかる。小夏も文叔の意図を理解したらしく、花嫁衣裳にする予定だった、刺繍の入った褶衣を取り出し、それを陰麗華の頭から被せた。
「よく知っているな」
文叔は小夏の機転に感心し、呆然としている陰麗華を馬車に乗せ、自身で馭者を務めて宛の街を一廻りし、再び当成里の家に戻り、陰麗華を抱き上げて馬車を降りて、家の中に入った。
その頃には堂内に簡単な宴の用意も出来上がっていて、陰麗華と劉文叔の婚礼が、しめやかに行われた。
李季文:李軼。宛の李氏。劉文叔兄弟とともに挙兵し、昆陽の包囲を文叔とともに突破したが、昆陽の戦いの後は劉聖公に接近していた。
朱長舒:朱鮪。もともと緑林軍の将軍で、劉聖公の側近。
王元伯:王覇。潁川潁陽の人。




