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約束の枷

 新野の県城を〈平林兵〉の一軍が包囲して投降を求めたが、県宰は門を閉じて応じなかった。陰次伯はこれを静観する。

 城門を閉じているので、門外に広がる畑は諦めるしかない。秋蒔きの麥の青い茎が踏み荒らされ、無残に刈り取られたりしているのを、陰次伯らも城門の上から目にした。


 ――飢饉はすでに数年に及ぶ。今年の収穫も見込めないとなると、陰家の支配下の民からも、とうとう餓死者が出るのを覚悟しなければならない。


 例年ならばもう、田起こしが始まっているころだ。用水路の修繕、ため池の浚渫しゅんせつも、今年は放棄せざるを得ない。


 陰次伯は広大な邸内の、可能な場所を耕して少しでも食べられる作物を植えるように命じた。門前のおがわの周辺も耕し、黍や稗、豆を植える。〈平林兵〉に追われ、城外の家を放棄して、新野の県城に逃げ込んできた下戸こさくにんたちを指揮し、庭のあちこちを掘り返して、畑に変えた。


 新野の県宰が包囲に抵抗を続ける中、地皇四年三月辛巳朔、もと舂陵しょうりょう侯家の一員、劉聖公が皇帝に即位したとの知らせが新野にも届く。即位と同時に、劉聖公は更始元年の二月辛巳朔と改元した。これは王莽が皇帝即位の時、初始元年(西暦八年)の十二月朔日を以て始建国元年正月朔日とし、漢暦に比べて一月進めたのを、元に戻したのである。故に、これ以後、常安の王莽政権と南陽の更始政権とで、ちょうど一月のズレが生じることになる。


 劉伯升ではなく、劉聖公が皇帝に即位したという知らせに、今後の相談に訪れた鄧仲華が言った。


 「やっぱり、伯升は農民兵からは敬遠されているんだろう。南郡の農民叛乱軍と、南陽の豪族の連合軍とでは、相当、意見の相違があるんじゃないかな。内部は相当、揉めてるだろう」

 「……仲間割れか。劉聖公って男が皇帝ねぇ……」


 陰次伯が腕組みをして考える。


 「伯升はどうして、そんなのに屈したんだ」


 鄧仲華が長い指で顎をつつきながら、考える。


 「……南陽の豪族の私兵と、南郡から北上してきたならず者の農民反乱の烏合の衆を纏めるために〈漢軍〉を名乗り、劉氏の皇帝を立てる必要があったわけだけど、家柄だけで言ったら、劉聖公の方が本家に近いし、もともと〈新市兵〉と関係は深いからねぇ。伯升はここは譲るのが吉、と判断したんだろうけど。――さて」


 劉伯升のもとならば、今すぐにでも馳せ参ずるつもりだった陰次伯だが、劉聖公の下で果たして〈漢軍〉の統制を保てるのか、不安になる。


 「返す返すも、小長安の敗戦が痛恨だったね。その後盛り返したとはいえ、〈下江兵〉とか〈新市兵〉とかの助力がなけりゃあ、郡大夫は倒せなかったわけで……足元見られちゃったんだよ、伯升は」


 鄧仲華の分析に、陰次伯も渋い顔で頷いた。

 

もともと〈新市兵〉と行動を共にしていた劉聖公の方が扱いやすい、という計算が、緑林の残党の側にあったに違いない。


 「伯升に書簡てがみを出したんだよね? 返事はないの」

 「うん――劉伯升の下になら、新野は降る、と送ったんだがなあ。やっぱり若造と舐められているのか」

 

 憮然とした表情で唇を突き出す陰次伯を、鄧仲華が慰めるように言った。


 「皇帝を誰にするか揉めてたのなら、新野のことにかかずらわっている暇はなかったんじゃないかな。でも、新野が陰家の財産ごと手に入る僥倖を、見過ごすことはないだろうよ」


 鄧仲華の予想通り、その翌日、新野の城門の前に、〈平林兵〉の首領とは明らかに異なる、身なりの整った男が馬を立てた。大司徒、漢信侯の劉伯升と名乗った男の前に、新野宰の潘叔は即座に門を開き、劉伯升の馬前に跪いて自ら叩頭した。ここに、新野県は〈漢軍〉の軍門に降った。




 


 劉伯升は新野県の投降を受け入れると、自ら陰家に足を運んだ。


 「貴公が陰次伯殿か。書簡をもらい、すぐにも来たかったが、知っての通り、新皇帝陛下の即位のこともあって、遅くなった」

 「いえ、我が家の財を閣下の功業に役立てられるなら光栄と思い、無礼にも書簡を送らせていただきました」

 「まあ、そう硬くならずに。……本当なら今頃は、親戚になっていたはずじゃないか?」

 「……その件は、本当に申し訳なく」

 「いや、陰家のせいではない」


 伯升は鷹揚に顔の前で手を振った。劉伯升は弟の劉文叔と面差しはよく似ていて、だが弟から書生っぽさと繊細そうな部分を抜いて、貫禄と豪快さを足したような風貌であった。豊かで濃い眉に、眼窩の落ち窪んだ大きな切れ長の目。面長で、鼻梁は高く、額も頬骨も高い。黒く艶やかな顎髭を蓄え、唇は半ば隠されているが、全体に顔の作りが大きく、はっきりしている。いつからか、劉伯升の顔は〈龍顔〉だと称され、どこか漢の高祖を思わせる容姿だと言われてきた。さらに任侠心溢れる豪放磊落な性格。彼こそ南陽を率い、天下の主となるに相応しいと、多くの者たちに思わせる、王者だけが持つ威圧感に、なんとなく陰次伯は気後れしてしまう。陰次伯の記憶にある限り、劉文叔にはそういう威圧感はない。彼にはそのかわり、繊細に他者の機微を読み、当意即妙に対応していく柔軟さがある。


 ――似ているようで、似ていない。そんな兄弟だと、陰次伯は思う。


 「……時に、貴公の妹御のことだが――」

 「妹が、何か?」

 「郡大夫は死んだ。こんな戦乱の最中になんだが、そちらの家が構わないというならば、弟との婚約を元に戻したい」

 「それは願ってもないことです。妹はもともと、甄阜しんふに嫁ぐつもりなどなかったのですから」


 陰次伯は家宰に言いつけて、陰麗華を呼びにやらせる。すぐに、陰麗華と母の鄧夫人がやってきた。

 劉伯升の牀前に跪いて拱手の礼をする陰麗華を見て、劉伯升はしばし大きな目をさらに見開いていた。――ただでも大きな目に妙な迫力が生まれ、陰麗華は内心、ぎょっとする。


 「……これは確かに!あの腰抜けに挙兵を決意させるだけのことはあるな!」


 伯升の言葉に、陰麗華が「え?」と首を傾げる。


 「文叔は最後まで挙兵を渋っていたが、あんたと郡大夫の婚礼が決まったと俺が教えたら、その夜突然、馬でどっかに走り去って、翌々日の夜に戻ってきて、挙兵に同意すると言いやがった。――何があったか俺は聞かなかったが、あんた、思い当たるフシはないか。昨年の八月のことだがな」


 昨年の八月と言えば、甄阜しんふとの婚約が正式に決まり、劉家にも通告したころだ。そう、ある夜、突然やってきた文叔が――。


 あの夜のことを思いだして、陰麗華の頬にさっと朱が走る。それを見て、劉伯升は何か悟ったのか、ガハハハハッと天井を仰いで大笑いした。


 「許嫁を取り戻すためなら、何でもする、と〈下江兵〉の首魁の前でも啖呵切ってたからな。あいつにはしばらく北の潁川郡の方の、地盤固めを命じていて、こちらには来られねぇ。だから、俺が可愛い弟の代わりに、約束を取り付けておこうと思ってさ」

 「文叔さまはお元気ですか?」


 陰麗華の問いに、伯升は精悍な顔を少しだけ曇らせた。


 「小長安で姉を死なせた直後は、少しへこんでたがな。馬が一頭しかなく、伯姫を乗せていたから、それ以上は無理だったらしい。後で戻ると約束したが、間に合わなかった」


 陰麗華が両手を胸の前で握り合って、目を閉じた。――劉君元と、幼い娘たち。それを失った鄧偉卿は、そして友人の劉伯姫は。


 陰麗華は一瞬、目を伏せたが、すぐに劉伯升の顔を見て言った。


 「あの……これを……文叔さまに渡していただけませんか」

 

 陰麗華が差し出したのは、ずっと縫い続けていた絮衣わたいれだった。


 「これから暖かくなりますけど、鎧の下にはこういう下着を着ると聞いていますので……」

 「あんたが縫ったのか!」

 「寸法が、合うとよろしいのですけど……」


 陰麗華が恥ずかしそうに俯く。文叔の寸法はよくわからないが、兄の次伯とだいたい同じくらいの体格だし、何とかなるだろうと思ったのだ。伯升は風呂敷に包まれた絮衣を一瞥すると、請け合った。


 「わかった。あいつに渡しておく」

 

 新野からは陰次伯と来君叔が新たに、劉伯升の軍に加わることになった。陰麗華のすぐ下の弟・陰君陵も従軍を望んだが、劉伯升は首を振った。


 「漢帝が立ったことで、長安の王莽は慌てて、大軍を編成して南陽に送るつもりだ。なに、そんなのはすぐに踏みつぶすが、それでも治安は悪くなるかもしれない。母や姉を守るのも、男の仕事だ」

 

 劉伯升に諭され、君陵は不満そうながらも引き下がった。


 その後、陰次伯は陰家の一族郎党、下戸こさくにんらで編成した私兵を率いて宛の包囲軍に参加することにし、また陰家の倉を開いて多くの糧食や武器を提供した。倉から運び出される陰家の財産を見つめ、母の鄧夫人が呟いた。


 「……馬鹿ね、あの子は。陰家の財産が目当てに決まっているのに」

 「おかあさま?」


 陰麗華が慌てて聞き直すが、母はじっと倉と中庭を往復する兵士や家僮たちを見つめたままだ。

 

 「あの、あんたの好きな男も、その兄も、要は同じよ。陰家の財産と、名声が目的なの。――あんな男と婚約していたおかげで、とんだことになったわ。わたくしたちの陰家は、この先ずっと、あの、龍のような顔をした兄弟の野心に、振り回されることになるのよ――」


 母が、陰麗華の婚約を喜んでいないことは確かだった。


 「そんな……戦乱の中で財宝だけ抱えても無駄よ。かえって命を狙われるかもしれないわ」

 「陰家の財産は、我が家や、我が家に連なる者たちのために使うべきもの。それを――あんな風に、天下への野心を剥き出しにする者に差し出すなんて。きっとご先祖様の罰が当たる」


 陰麗華の母はそれだけ言うと、踵を消して室内へと向かった。


 ――陰麗華の目に、その背中がひどく小さく見えた。





 

 四月、王莽は大司空王邑を洛陽に向かわせ、司徒王尋とともに河南、潁川の衆郡から大部隊を召集した。洛陽に集結した大軍は公称、百万。宛を救うために洛陽を発した軍は街道を埋め尽くし、新王朝を表す黄色い旌旗が青い空を染め上げるほど翻り、輜重は千里も続くほどだと言われる。


 「ひゃ、百万って、……どのくらい?」

 

 仲華に午飯の黍飯を差し出しながら陰麗華が尋ねると、仲華が肩を竦める。新野は〈漢軍〉の支配に下ったおかげで包囲は解かれ、遅ればせながら急ピッチで種蒔きが進んでいる。男手が兵隊に取られているので、例年より作付面積は減らさざるを得ない。それでも耕さないことには生きていけないから、種蒔きの時期に間に合ったのは幸いだった。〈漢軍〉への従軍を拒んだ鄧仲華は、貴重な男手として、あっちこっちの畑を手伝わされているのだ。


 「軍隊の人数なんてのは、大概、倍ぐらいに水増しするもんなんだけど、半分としても五十万だからね」

 「……〈漢軍〉は全部で?」

 「公称、十万だから、半分だとすると……五万? でもそんなにいないと僕は思う。せいぜい、三万かな」

 「……圧倒的過ぎない?」

 「……そうかも、しんない……」


 絶望的な気分で、陰麗華はもりの祠に詣でる。

 一時期、敗残兵を恐れて外出を控えていたが、最近は野良仕事の手伝いの合間に、陰麗華はほぼ日課のように祠に詣でていた。

 

 劉文叔らの叛乱軍によって郡大夫の甄阜しんふは殺され、陰麗華との結婚話も露と消えた。もう、文叔との結婚を阻む障害はなくなったのに、文叔はまだ戻ってこない。


 よく考えれば、当たり前のことだ。

 おかみに背き、官が派遣してきた地方長官を殺した。それで、全てが終わるわけはない。むしろ始まりに過ぎないのだ。常安の皇帝はさらなる大軍を南陽に向かわせ、皇帝に反旗を翻した南陽の諸豪族すべてを、一思いにひねり潰そうとしている。


 百万なんて大軍、陰麗華には想像もつかなかった。たぶん、新野県全体の兵力を集めても、一万には届かないだろう。近隣で一番の大都市の宛で、二、三万というところだろうか。


 (……だとしたら、宛の街が三十個とか、四十個とか?)


 今、宛城一つ落とすことのできない叛乱軍が、その三十倍の軍に対して、いったい何ができると言うのか。――いや、万が一にその百万の大軍を破ったところで、戦は終わらないのではないか。


 直感的にそう気づいて、陰麗華は思わず足を止める。

 

 ならば――いつまで?

 いつまで戦争は続くのか?


 官軍によって叛乱軍が蹴散らされ、首謀者の首が宛の城門に曝されるまで?

 そしてその後は再び、今までと同じ、官の圧政が続くだけ。――いや、叛乱を起こした南陽の諸県への、国の圧力はさらに厳しくなるだろう。陰次伯が劉伯升に付いたことで、陰家もまた、叛乱軍の一員へと組み入れられた。負ければ、陰家の財産は根こそぎ没収され、陰麗華もまた死罪か、あるいは官婢として没入されるに違いない。


 そしてもし今回、官軍を破ったとしても――数十倍の規模を誇る官軍が敗れるという想像が、すでにありえないのかもしれないが――その先にはさらに終わりのない官兵の派遣と、泥沼のように続く戦乱があるだけだ。


 四月の、晴れた青空の下を白い鷺が優雅に飛んでいく。樹々は一斉に芽吹いて若葉が目にも鮮やかで、あぜおがわの畔には、名もなき小さな野辺の花々が競うように咲き乱れている。長い冬が終わり、僅かな命の季節を謳歌するように、小鳥は巣をつくり、子育てに忙しい。

 今、仮初の平和の中で、人もまた作物を育て、来るべき収穫のために働き、未来のために土を耕している。


 でも、もう二度と、昨年までの安全の約束された日々が戻らないとしたら――。

 文叔との平和な未来など、もう、来ないのだとしたら――。

 

 それでも陰麗華はそのまま通い慣れた道を進み、いつものもりの小道に足を踏み入れる。杜の緑の樹々の隙間から、祠が見えてきたとき、祠の脇で一頭の馬が草を食んでいて、陰麗華の心臓が跳ね上がる。

 

 ……期待すべきじゃない、違った時の落胆はひどくなる……そう思っても、逸る心は抑えることができず、陰麗華は駆け足で祠の木戸に取りついていた。そっと扉を開けて、小声で呼びかける。


 「……文叔さま?」


 次の瞬間、陰麗華の目の前を、すごい勢いで木戸が開かれた。信じられない力で薄暗い中に引きずり込まれ、抱きしめられる。骨が折れそうな、身体が砕けそうな抱擁に、息もできずにただ、熱く硬い身体に縋りつく。


 「……麗華……」


 熱い息が耳元にかかり、そのまま薄暗い祠の壁に背中を押し付けられ、身動きを封じられる。唇が塞がれ、貪られる。


 「麗華……会いたかった……ずっと……」


 口づけの合間に、熱に浮かされたように何度も耳元で囁かれ、乱暴に身体をまさぐられる。男の唇と指が、陰麗華の素肌を這い、互いの呼気が絡まり合う。初めての夜のような恐怖は、もうなかった。ただ愛する人に求められるまま、陰麗華は目を閉じ、嵐のような愛撫に身を委ねた。



 


 

 狂熱が去って、だが互いに離れることができず、ぴったりと身体を寄せ合っていると、絡めていた陰麗華の左手の指環を、文叔の長い指がたどる。高い窓から斜めに差し込む光が、夕暮れの色を帯びて、祠の中に漂う埃を煌めかせる。


 「……ちゃんと、嵌めていてくれてるんだ」

 「……だって、そうしろとあなたが言ったから……」

 

 陰麗華が見上げると、額に額をくっつけるようにして文叔が微笑む。数か月ぶりに見る彼は精悍さを増して、顎に不精髭があった。

 

 「ああ、それから、絮衣わたいれ、ありがとう。普通の襦衣だと鎧がすれて痛かったんだよ。絮衣は都合がいい。……少し、暑いけどね」

 「無理をしないでくださいね。生きていてくださるだけで……」


 陰麗華の縋るような言葉に文叔は微笑み、陰麗華の顔についばむような口づけをいくつも落とす。


 「あの絮衣を着ていると、君が側にいるような気がして、僕はどんな敵にも怯まずにいられる気がする。……僕は、君とこの南陽を守るために、いくらでも戦える」


 だが、突然、文叔は鋭い目でじっと陰麗華を見つめた。その黒い瞳に狂おしいような光が灯って、陰麗華はドキリとする。


 「麗華……頼みがある」


 切羽詰まったような言葉に、陰麗華が目を瞬く。……自分にできることが、何かあるだろうか。


 「何でも、言って。わたしに、できることなら……」

 「僕に万一のことがあっても、誰のものにもならないと誓って」


 陰麗華が息を飲んだ。


 「文……」

 「誰か他の男が君に触れると想像するだけで、気が狂いそうになる。死ぬに死ねない」

 「……死なないで……」

 「君が、誓ってくれれば、死なない」


 文叔はそう言って、陰麗華を抱く腕に力を籠める。


 「僕も誓う。生き残っても、君以外は抱かない」

 「……危険なの?」

 

 だが、文叔はそれには答えず、ただもう一度、「誓って」と言う。陰麗華は文叔の肩に縋りつき、その目をまっすぐに見て、言った。


 「誓います。あなた以外の、誰にも触れさせたりしない。一生、あなただけ……」

 「麗華……僕も誓う。生涯、君一人を愛する」

 

 文叔の唇が陰麗華の唇を塞ぎ、陰麗華は貪られるままに身を任せた。


 


 儚い白昼夢のような、束の間の逢瀬と、約束。

 この約束が枷となって二人を縛ることになるとは、この時、陰麗華は思いもしなかった。


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