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十一

 暫くすると雨は小降りになり、仰向けに寝ていた私もようやく起き上がる。

 雨に濡れた衣服は肌に貼り付いて緩やかな曲線で構成されているボディーラインを際立たせる。それにも増して、貼り付いた白いシャツから透けて見える肌が妙な艶めかしさを醸し出し我ながらエロいと感じた。

 濡れた体を乾かすために、そのエロさが燃料になり、焼けるように体を温めて、濡れた衣服から湯気が立つ。

 惜しい!いまのこの私を見た世の中の男たちはは屹度、私の虜になること間違いないのに。

 ただし、ここには男たちははおろか女たちも、誰もいない。

 もっとも、エロくなった体を誰彼となく見られるのも嫌だ。

 特に課長や詐欺師、そしてあのアブラギッシュ。


「ねえ。本当に誰もいないの?」


 声を出して問いかけるけど返事がない。


「誰かいるなら返事をして!」


 耳を澄ませるけど何の音も返ってこない。

 少し悪戯を思いついた。

 でも実行するかどうか迷い、小さな声で言ってみる。


「返事をしてくれたら、彼女になってあげますよぉ」


 暫く息を止めて耳を澄ますけど、やっぱり返事は返ってこない。


「今だけですよぉ。お買い得ですよぉ」


 これではバーゲンの客引きだと思いながら言った。

 それでもやっぱり返事はない。


「掘り出し物ですよぉ」(骨董屋か?)


「今がチャンスですよぉ」(何屋さん?)


 何度も言っているうちに楽しくなってしまい、段々と内容が過激になって行く。


「今ならキス一回のサービスが付きますよぉ」


「お触り一回券もつけますよぉ」


「やりたい放題ですよぉ」


 結構な大声で叫んだあと、返事を確かめようと耳に手を上げたとき。

 直ぐ傍の葦の林から、ガサガサと言う乾いた音が聞こえた。

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