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この作品には 〔ガールズラブ要素〕が含まれています。
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仮面の崩れた日に

作者: 七八転
掲載日:2018/08/13

「ねぇ……放課後ちょっと話があるの」


親友であり、幼馴染である日山澄佳ひやま すみかにそう言われたときは、ドキッとした。

私、凩朱里こがらし あかりは澄佳が好きだ。

初恋の人であり、現在進行形でも絶賛片想い中である。

そんな人から話があると言われたのだから、1も2もなく了承した。


授業は耳に入らない。

その時の私は、彼女と両想いであったと舞い上がっていたから。

最後の授業が移動教室だったため、チャイムが鳴ってすぐ、自教室に戻る。

他の人たちは、下校か部活かしているだろう。


私は、教室の窓に写る自分が変に赤くなっていないか確認していた。

すると、教室のドアの開く音がした。

来た。 澄佳だ。


「ごめんね、呼び出して」


「良いわよ、親友なんだから、それで話って?」


入って早々謝罪なんてちょっとビックリした。

告白してないのにフラれたのかと一瞬思ったわ。


「あのね……お願いがあるの」


彼女は顔がオーバーヒートでもしたかのように真っ赤になっている。

来たぁッ!?これは告白じゃないかと思っていた。


「私、陽斗のことが好きで、でもどうしたら良いか分からなくて、こんなこと朱里にしか言えないから」


この言葉を彼女から出たとき私の心臓は一瞬止まった。

だが、すぐにバクバクと心臓が早鐘を打つ。

もう、私には分からなかった。

私を好きだと舞い上がっていた心が突然壊れたのだ。

泣きそうなのとちょっとした絶望感が心臓の音にリンクして体に染み渡る。


「ねぇ……聞こえてた?」


「っ!?……あ、うん聞こえてたよ。つまりれ、恋愛相談なわけでしょ?」


何で私じゃないの?と言いたいくらいだが、顔を赤らめて真剣に私に好きなのと伝えてくる彼女にそんなこと言えるわけがなかった。

しかも、相手の陽斗は私もよく知る人物だ。

だって、もう一人の幼馴染だから。

彼はイケメンだと周りの女子は言っていた。

さっぱりとしたツンツン頭の黒髪に整った顔、そして部活ではサッカー部のエースで勉強もそれなりに出来る。

所謂超優良物件なのだ。

私は、幼馴染で色んな彼を見たことがあるが別段なんとも思わなかった。

それが、普通だと、澄佳も同じだと。

でも違ったのだ。

そんなフィルターは何処にもないのだ。

実際は分かっていたのかもしれない。

だって、私は澄佳のちょっと明るめの茶髪をボブカットした髪型や大きくくりっとした小動物を思わせる顔、仕草全てが可愛いと思っているし、彼女の何にでも直向きに頑張ろうとするところや決して妥協せず芯が通った性格の全てが好きだ。

ぶっちゃけてしまえば、澄佳のことをそこら辺の女優さんやアイドルより可愛いと思っている。

幼馴染をそんな風に見ているのだから、澄佳も陽斗にそう思っていても不思議ではない。


「相談のってくれる?」


「うん、良いよ」


とても嫌だと言いたいがぐっとこらえる。

すぐさま笑顔で了承する。

引きつった笑顔だろうが案外バレないものだとこの時分かった。

こうして私の初恋は終わった。

その日は、相談にのってほしいということを伝えただけで澄佳は帰っていた。

残された私も帰宅する。

お帰り~と姉の声がしたが生返事を返して部屋に入る。

部屋に籠ってやっと実感が追いついてきて泣いた。

両の目からぼろぼろと涙を流し、鼻水を垂らして、顔を歪めて声にならない泣き声を出した。

人間諦めが肝心と言うがそう簡単に割り切れたら苦労はないのだ。

割り算の余りのようなもどかしさが泣いた後にも残る。

あー、私は本気で彼女が好きだったんだなと割と他人事のように思った。

いっそ、あのとき好きだと愛していると此方から言ったら彼女のことを諦められたかもしれない。

でも、私は告白してないがフラれたのだ。

そう言い聞かせる。

でないと心がおかしくなるから、まだチャンスがあると期待してしまうから。

ならば、彼女の恋愛を応援しよう。

彼女が幸せになれるのなら私は幸せだと心に刷り込む。

よし、大丈夫。


それから、私は彼女が陽斗と付き合えるようになるまで色んなことをした。


ゴールデンウィークには、友達何人かと陽斗、澄佳を連れ出して

遊び回った。


テスト前にはみんなで勉強会をした。

もちろん、陽斗と澄佳をペアにした。


休み時間も極力、陽斗と澄佳を一緒にさせ陽斗に好きアピールを送らせた。

最初女子からはあまり良い雰囲気はなかったが、陽斗がまんざらでは無さそうなのと澄佳の可愛さが相まって一学期終わる前には美男美女でお似合いよねと言う噂がたつようになった。

まぁ、噂の源流は私なのだが。


そんなキューピット大作戦の最中も、陽斗に向いている笑顔が私に向けば良いのに等と邪な気持ちになることが多々あった。

付け焼き刃の鉄仮面はその場では剥がれないが徐々に罅が入る。


だが、気づかれはしなかった。

その後も、夏にはキャンプやプール、夏祭り、夏休み後には体育祭で陽斗と澄佳の距離を縮めさせた。

澄佳とのやり取りで知ったことだが最近では二人で何処かに行ったり一緒に登校もしてるらしい。

そんな些細なことすら、嬉しそうに話す澄佳を見ていると胸が締め付けられる気分だ。

あらかた、のろけ話が終わると彼方から電話を切る。

それすら、私を苛ませる。


もう私を苛ませるもやもやした状態の生活には慣れた。

彼女の恋愛相談をしはじめてからもう半年ほどになるし。

夕飯を食べて、リビングのソファーに座りテレビを見る。

ちょうど、恋愛相談系のコーナーが始まると、慣れていてもほんの少し顔を歪めてしまう。


「ねぇ、あんた最近と言うか、半年ぐらい前からかちょっと変よ」


「……何でもないよ、それよりお姉ちゃんはどうなのよ。ちゃんと卒論書けてるの?」


「うるさいっ。私は良いのよ。 で、ホントに何でもないの?」


「うん、何にもない」


ひた隠しにしてこれたと思ったのに姉に突然変だと言われた。

しかも半年前から。

姉の話にすり替えてあまり話さなくて良いようにしたけど、内心とても戸惑っていた。

隠せてなかったの?

じゃあ、今までの私は端から見たら滑稽だっただけ?

澄佳にも陽斗にも回りにもバレてたの?

私が嫌々、くっつけようとしているのが。

これが鉄仮面への大きな罅になった。


「ねぇ、朱里。 何に悩んでるのかお姉ちゃんは分からないけど、後悔したくないなら自分が出来ることは全てやりなさい。 良い結果になるとは一概に言えないけど、全力でやったことなら結果がダメでも時間が解決してくれる。 でも手をこまねいているだけなら、永遠と自身に刺さった楔みたいに心に残るからね」


姉の言葉は私の中に入り込んでくる。

全力で……か。

でも、そんなことをして良いのだろうか?

私は、彼女の幸せを今願っているのだ。

自分のことなんて考えてなかった。

いや、考えたくなかったんだろうと思う。

考えてしまうと私と彼女の幸せが違うことを理解してしまう。

それが嫌なのだ。

だから姉の言葉に曖昧な返事しか返せなかった。

だけど、自分の思考は止まることはなかった。


そんな話から数日後、今も考えはしているが纏まることはない。

そんな中、澄佳から初めての恋愛相談以来に呼び出される。

また、放課後だ。


それからは授業が耳に入らない。

前とは逆で舞い上がってるんじゃなくて心から冷える感覚で脳内はクリアなのに耳に入らない。

午前も午後もそんな感じである。

ちなみに、もうお昼は澄佳たちと食べてはいない。

現在ボッチ飯である。

そんなこんなで放課後になった。

クラスは一緒だがコースが違う澄佳が移動教室から帰ってくるのを待つ。


「ごめん、待った?」


「良いわよ、で、話ってなに? 告白でもするの?」


自分で言っててあー、これはないわと思ってしまう。

言い方が冷たすぎる。


「いや、そうじゃなくて陽斗に告白された。」


「良かったじゃない。 受けたんでしょ?で、恋愛相談はもういいってことね」


はぁ、これで全部終わった。

泣きたくなるのを堪えて、でも今すぐここから離れたくて口調も早口になる。

だが、澄佳の言葉は予想外のものだった。


「まだ、考えさせてほしいって言ってる。だからそれを相談し……」


「何でよっ!! 好きなんでしょッ!? 告白してもらえたんだったらその場で即OKって言ってハッピーエンドで良いじゃないッ!!何でッ!! どうしてっ!?……」


今まで着けてた鉄仮面が壊れた音がした。

するとすぐに自分の感情が溢れてくる。

もう止められなかった。

初めて、こんなに怒っている私を見て、澄佳も戸惑っている。


「あっ、朱里、おっ落ちつ……」


「落ち着け? バカ言わないでよッ!! どうして落ち着けられると思うの? 澄佳のために、陽斗と付き合えるようになるまでずっと頑張ってきたのに、デートできて嬉しいとか一緒に登校できて幸せ過ぎるとかのろけ聞いて、澄佳のために夏休みも大学いくための勉強捨ててくっつけるように夏期講習とか行かずキャンプの予約とか夏祭りの日時とか二人きりになれるスポットとか探したのにッ!!考えさせてほしいってなに? じゃあ、私は、何のためにあんなに頑張ったのよッ!! 」


今までのもやもやを発散するように口から紡がれる言葉は、今まで、溜め込んだ全てを澄佳へぶつける。

悲しみ、怒り、絶望、羨望そんなものを全部ぶつけているのだ。

もう自分でもわけが分からなかった。


「朱里……」


そっと澄佳が私の名前を呼ぶ。


「……何よ?」


私は、ぶっきらぼうに言葉を返す。


「何で、言葉は怒っているのに顔は泣いてるの?」


「はぁッ? なに言って……」


最初は澄佳が何を言っているのか分からなかったが顔に手をやると指先が水に濡れる。

あぁ、私は、泣いてるのかとこの時に気づいた。


「何で、泣いてるの?」


再度澄佳はこちらに問いかける。


「そんなのっ!? そんなの……澄佳が私に、希望をちらつかせるから……私は、ずっと前から澄佳のことが好きだったのに陽斗が好きだって聞いて諦めて、澄佳の幸せのために頑張ろうとして来たのに、私の好きな人が私じゃない好きな人の話をしてるときも泣きたい気持ちも叫びたい気持ちも耐えて耐えて一生懸命耐えたのに……何でさっさと付き合わないのよっ!! そんなだから私は、まだ夢を見ようとしちゃうじゃないッ!!澄佳が私のことを好きで両想いだなんて勘違いをまたしちゃいそうになるじゃないッ!!」


今まで思ってたことを澄佳に伝えていく。

どれだけ好きなのか。

私は、幼稚園の頃から彼女が好きだった。

虐められていた私をいつも助けてくれて、初めて友達になってくれた澄佳を守りたいとそばにいたいと思った。

それは年を追う毎に次第に強くなってそれを恋だと認識したのだ。

鉄仮面が壊れた反動でそれを明け透けなく伝えていく。

すると、今まで、黙っていた澄佳が口を開く。


「私だってそうだよ!!私も、朱里のこと好きだよ!! でも、そんなの普通じゃないと思ってたし、こんなこと誰にも相談できないじゃない!!それに朱里は、頭堅いから私が好きだと知ったら嫌われるんじゃないかってずっと思ってたんだから!!朱里のことが好きだけど普通の恋を探そうと思って陽斗のことを好きになろうとしたけど、朱里の気持ちを知っていればこんなことにはならなかったもん!! 朱里が本気で応援しようとしてくれてたのは嬉しかったけど何となく寂しかったんだから!! 両想いじゃないんだって思って私だって泣いたんだからぁ!!」


「え?……はっ?ちょっ、えっ!?」


澄佳の告白にさっきまで溢れていた思いの丈が鎮まった。

が、逆に澄佳の方が溢れかえってしまったようだ。

冷静になってしまった頭で考えた。


まとめるとこうなる。


澄佳は私が好きだけど私に嫌われたくないから普通の恋を探していた。


私は、澄佳が好きだけど陽斗のことが好きだと澄佳に言われて諦めた。


結果どちらも相手のために悩んで、思い詰めて仮面(外面)で本心を隠していてすれ違ってただけってことらしい。


「ねぇ、澄佳」


「何よぉ」


私と交代して泣いてた澄佳に声を掛ける。

鼻声で返事が来る。


「好きです。 ずっと前からだから付き合って。 陽斗のところに行かないで。 ずっと一緒にいたい」


私は、初めて本音を彼女の前で言った。


「うん、私も大好きです。 陽斗にはちゃんと断る。 だから一緒にいよ?」


彼女も返す。

私達はどちらも泣きながら笑顔になっていた。

泣いて、喚いて、本音を言い合って最後にどちらの大切にもなれた。


帰り道久しぶりに二人で帰る。


「ねぇ、これからもっとよろしくね」


澄佳が笑顔で言う。


「うん。こちらこそもっと仲良くしようね」


私は、繋いでいる手に力を少し入れて笑顔で言い返す。

気分のお陰か木枯らしが妙に暖かく感じて帰路を行くのだった。




















こんにちは、初めて恋愛ものを書きましたけど難しいですね。

でも、たまにならって感じで良い経験しました。

また、書くことがありましたらそのときも読んでいただけたらなと思います。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 二人が告白する最後のところが良かったです。 [一言] 陽斗視点の話とおねえちゃん視点の話が見てみたいです。
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