5 そのための修行
翌日も同じ修行が続く。
午後には恭弥が進展を見せる。刀を左手に持ち替えて目を閉じ、青い炎を纏った剣をイメージして、右手で掴む。
目を開くとイメージした剣を握っている。剣を横に振ると、途中で消える。
「ダメか……」
「その調子で続けろ」
「言われなくても分かってる!」
こうして一週間かけて確実なものにしていく。
イメージを実体化した剣で竹を斬る恭弥。
「これくらいで十分だろ……」
林の向こうにいるゴブリンに向かって走り出すと、デッドオーバーが行く手を阻む。
「まだ邪魔をするのか。そこをどかないなら、お前から先に斬ってやるぞ!」
デッドオーバーは失笑して言う。
「お前は戦い方を知らない」
太陽はオレンジ色の炎を纏った刀を振り続ける。
それから半年かけて、身体作りから実戦のトレーニングを積み重ねた。そんなある日の午後、太陽が遠くに資材集めに行っている間に、デッドオーバーが恭弥に話を持ちかける。
「そろそろ両親に会いたくなる頃ではないか?」
「フン。その身なりで、そんな事を言うんだな」
「どうだ?」
「ハァ……最初に二度と戻れないと言ったのは、お前の方だぞ」
「確かにそうだな。直接会うことはできない。だが、一方的に見ることができたら……?」
「心配してくれなくても、戻らないことはもう伝えてある」
「ほう……なかなか人騒がせな奴だな」
「なんだと!」
「まぁそう怒るな。ではこうしよう。お前のその力、元の世界で使いたくはないか?」
「はぁ……だから、そんなの虚しいヤツがやることだろ」
「見ただろう。我は二つの世界を行き来できる。つまり、お前の行動を反映させることができる」
「……なに?」
デッドオーバーは元の世界の街の様子を見せる。
小屋に太陽が帰ってくる頃、恭弥は何事もなかったかのように勉強をしている。
その日の内に決断はできず、次の日を迎える。
この日は恭弥が資材集めに出かける。擬似サバイバル生活をすることで、知識と体力をつけ、精神を鍛える。
「どうだ? 昨日の返事は出そうか?」
デッドオーバーが声をかける。
「そうだな……」
この時恭弥は考えた。
犯罪者を殺せば、自分がやった訳じゃないから罪に問われないし、人助けにもなる。だったら犯罪者を殺せばいい。
「俺の行動を反映できると言ったな。じゃあ人を殺せばそいつは死ぬのか?」
「ああ」
「死因は?」
「そいつの持病の悪化や事故だな。不自然に殺す訳にはいなかないしな」
「ふうん……悪くない」
その日の夜。一人、小屋で夕食を用意する太陽。
デッドオーバーに質問をする。
「なぁ……恭弥は、どうしたんだ」
「ん? そういえば、まだ帰ってないな」
「そういえばって……ついていったんじゃないのか」
「ずっと付いてる訳ではないしな」
これ以上の追求は無駄だと悟った太陽は、静かに夕食を食べ始める。
就寝の時間になっても恭弥は帰ってこないが、布団を敷いて寝る。
「恭弥のことはいいのか?」
デッドオーバーの問いかけを無視して目を閉じる。
恭弥なら一日くらい帰ってこなくても大丈夫。それに恭弥のことだから、何か考えがあるんだろう。
特に気にかけず、深い眠りへ。