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4 努力は才能を選ばない

 就寝の時間。太陽はこっそりと小屋を抜け出す。


 少し歩くとデッドオーバーが姿を現す。

「どうした? 眠らないと体力つかないぞ」

「修行……させてほしい」

「フン、恭弥の眠っている間なら、付き添ってもらえると思ったか。よかろう」

 日中修行していたあの崖へ向かう。


「ここで大事なのは、重力の変化に慣れることだ」

 デッドオーバーからの言葉を胸に、落ちては登り、何度も繰り返す内に時刻は午前五時を回る。

「そろそろ恭弥が起きる頃だ。戻るぞ」


 小屋に戻り、太陽は布団に入ると五分もせずに眠りに落ちる。


 午前六時、恭弥が起床。

 更に一時間経って修行を再開しようという時、まだ太陽は眠っている。

「おい、起きろよ」

 恭弥が呼びかけても反応しない。

「まぁ放っとけ。疲れてるんだろう」

「本当に体力ねぇな」


 正午になり、修行を中断して昼食を摂っていると、太陽が起きる。

「はっ! 今何時?」

 味噌汁をすすって恭弥が返事をする。

「昼だ」

 太陽は口をすすいでから冷蔵庫を物色する。

「おい、食わないのか?」

「え……食べていいの?」

「何言ってんだ。ここにいる()()は俺とお前だけだろ?」

 向かいに座って、二人で食べる。


 午後の修行。例の高い崖を登る。

 先に登り切る恭弥。

 続いて太陽が登ってくる。

「ふぅ……」

「お前……夜中にやってたんだな。だから昼まで寝てたんだろ」

「うっ……まぁ」


 デッドオーバーが一瞬で崖を飛び越え、二人の後ろに降りる。

「次だ。これを持て」

 そう言って差し出した手の上に、二本の白い日本刀が浮いている。受け取ると、重さを感じる。

「うわ、こんなに重いんだ……」


「先ずは……」

 二人の視界をマントでさえぎる。マントを下ろすと、向こうの林にゴブリンが現れる。

「あのゴブリンを狩れ」

「フンッ」

 我先に走り出す恭弥の前に、立ちはだかるデッドオーバー。

「待て」

「邪魔だ! どけ!」

 横を通り抜ける。

「人の話は最後まで聞けと、習わなかったのか?」

 歯を食いしばり、振り向く恭弥。

「もったいぶってんじゃねぇ! さっさと言え!」

 両手を広げ、呆れたように息を吐き出し、喋り始めるデッドオーバー。

「そいつをそのまま使うんじゃない。そいつはただイメージをつかむための物。いつでも取り出せるようにしなければならない」

「はぁ?」

「つまり……」


 デッドオーバーが右手を振り下ろすと、いつの間にかその手には黒い日本刀が握られている。

――間を空けずに、分身のように黒い日本刀が十本落ちる。

「こういうことだ」

「そんなモン、どこに隠し持ってやがったんだ」

「隠していた訳ではない。創り出したのだ」


 太陽はゲームで剣を振るうのと同様に、刀を振ってみる。するとオレンジ色の残像が見える。

 何回も振ると、残像が出たり出なかったりする。

 それを見ていたデッドオーバーが一言。

「筋が良いな」


 恭弥がくうを斬っても何も出ない。

「お前、普段からそういうことばっか考えてんだろ」

 太陽に向かって、小馬鹿にしたように言う。


 しばらく振り続けるがそれ以上進歩しないので、デッドオーバーが手本を見せる。

 デッドオーバーが右手を掲げると、暗黒の煙が渦を巻き、暗黒の炎をまとった大剣を召喚する。


 ガチャッ……と鳴らして体の前方に振り下ろす。

「うわぁ……かっけぇ……」

 太陽が見惚れている横で、恭弥は茶化す。

「フン、そんなことやらないクセに。見せつけなくても、俺は俺のやり方でやる。お前らは二人でやってろよ」

 少し離れて目を閉じる。


「言わずとも育つ。手のかからない奴だな」

 恭弥が目を開くと風が起き、横斬りすると紺色に近い青い煙が発生する。

 この調子で、修行すること三時間。

 恭弥は刀に濃い青色の炎を宿す。

「今日はここまでにしよう。眠って復習しろ。知ってるか? 何時間も続けてやるより、眠った方が作業効率が良いんだ」


 デッドオーバーが指を鳴らすと、ゴブリンが消えた。

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