表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
61/63

3章3‐2 空いた隙間。

「……柴崎らいな。慣れ合うつもりはないから関わって来ないで」


 みんなが目を丸くして私を見ていたのは覚えている。私はこう生きると決めた。実力があれば大丈夫だから。実力は裏切らない。後は要らない。

 ずっと1人で生きると決めた。なのに――


「……なに?」


「……あ、いえ、その……一緒にご飯……とか」


「私は一人で食べるから。あっち行って」


「はぅっ?! ――むんっ!!」


「……なんで座るの? あっち行ってって言ったよね」


「一人は駄目です!」


「私はそれでいいの」


「あっ、ちょっと、何処へ?」


「関わらないで」


「あぅぅ……」


 この女はしつこかった。

 一人がいいのに。毎日毎日。何度も何度も。どんなに罵倒しようが、涙目になりながら寄って来る。うっとおしい。しつこい。


 ――また来る日も、


「今日こそ一緒に食べるひょも~!」


 まただ……。毎度拒絶しているのになんで……。もう限界だ。


「もういい加減にして!!」


 手元にあったお茶を奴に掛けてやった。賑わっていた室内は一気に静まった。少しスッキリしたが、同時に過ぎた行為に罪悪感も湧いた。でもこれでいい。ここまですればもう関わってこないだろうから。


「おい、お前! かこむはお前の為に――」


「止めてゆいかちゃん! 私はいいひょも」


「でもよ……」


「かこむちゃんも悪いわよ。放っておけばいいの。ああいうタイプは」


「そうよ。あんな奴と関わる意味ないでしょ」


「そんなこと言わないでください!! らいなちゃんは――」


 私は気付けば立ち去っていた。

 効果覿面だ。やった。これでもう誰も私には近寄って来ない。

 これで私は快適な学園生活を送れる。嬉しい。嬉しいのに……。


「なんで泣いてるひょも?」


「――っ!? なにしに来たの?」


 制服にお茶が染み付いたみっともない姿で。


「私達、やっぱり仲良くなれると思うんです。……怖いですよね。非力な自分を見せるのが。私もそうだから、分かります」


「違う。私には実力があるから要らないの。邪魔だから捨てただけ!」


「らいなちゃん――」


「なっ――!?」


 一瞬なにが起きたか理解できなかった。お茶で濡れた髪が頬に張り付いてるのを認識して、初めて抱きしめられてることに気付く。

 懐かしい感覚だ。小さい時以来だろうか……。


「らいなちゃん。あなたになにがあったかは分かりませんが、一人になるのだけは駄目なんです。一人って、とても暗くて、辛いんです……。知らなくていいです。でも分かってください。一人は駄目だと。この世界に一人になりたい人なんていないんです。人はいつでも心の繋がりを求めてるんです。だから冗談でも、一人がいいだなんて言わないでください」


 決意を否定されて、それを全力で否定したい。したいのに。何も浮かばない。理屈で納得できてないのに、この女の言葉には強い説得力があって、出る杭が壊されて。丸くなって。包み込まれていく。


「らいなちゃんの生き方を否定したりしません。これからもそのままでいいと思います。だから、私だけでいいです。他の人とは変わらずに。私だけ。私とだけは一緒にいましょう。それなら二人ですから」



 ……今も生き方を変えたつもりはない。ただ、一人分くらいの隙間なら空けてもいいかなって。そう思えてしまった。


 ――こうして私は抱えられた。


 私は黄谷かこむを信じていた。唯一心を許していい人間だと思っていた。友達でいてほしかった――




「本当は違うって、分かってるんだろう?」


「鹿誠!?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ