3章3‐2 空いた隙間。
「……柴崎らいな。慣れ合うつもりはないから関わって来ないで」
みんなが目を丸くして私を見ていたのは覚えている。私はこう生きると決めた。実力があれば大丈夫だから。実力は裏切らない。後は要らない。
ずっと1人で生きると決めた。なのに――
「……なに?」
「……あ、いえ、その……一緒にご飯……とか」
「私は一人で食べるから。あっち行って」
「はぅっ?! ――むんっ!!」
「……なんで座るの? あっち行ってって言ったよね」
「一人は駄目です!」
「私はそれでいいの」
「あっ、ちょっと、何処へ?」
「関わらないで」
「あぅぅ……」
この女はしつこかった。
一人がいいのに。毎日毎日。何度も何度も。どんなに罵倒しようが、涙目になりながら寄って来る。うっとおしい。しつこい。
――また来る日も、
「今日こそ一緒に食べるひょも~!」
まただ……。毎度拒絶しているのになんで……。もう限界だ。
「もういい加減にして!!」
手元にあったお茶を奴に掛けてやった。賑わっていた室内は一気に静まった。少しスッキリしたが、同時に過ぎた行為に罪悪感も湧いた。でもこれでいい。ここまですればもう関わってこないだろうから。
「おい、お前! かこむはお前の為に――」
「止めてゆいかちゃん! 私はいいひょも」
「でもよ……」
「かこむちゃんも悪いわよ。放っておけばいいの。ああいうタイプは」
「そうよ。あんな奴と関わる意味ないでしょ」
「そんなこと言わないでください!! らいなちゃんは――」
私は気付けば立ち去っていた。
効果覿面だ。やった。これでもう誰も私には近寄って来ない。
これで私は快適な学園生活を送れる。嬉しい。嬉しいのに……。
「なんで泣いてるひょも?」
「――っ!? なにしに来たの?」
制服にお茶が染み付いたみっともない姿で。
「私達、やっぱり仲良くなれると思うんです。……怖いですよね。非力な自分を見せるのが。私もそうだから、分かります」
「違う。私には実力があるから要らないの。邪魔だから捨てただけ!」
「らいなちゃん――」
「なっ――!?」
一瞬なにが起きたか理解できなかった。お茶で濡れた髪が頬に張り付いてるのを認識して、初めて抱きしめられてることに気付く。
懐かしい感覚だ。小さい時以来だろうか……。
「らいなちゃん。あなたになにがあったかは分かりませんが、一人になるのだけは駄目なんです。一人って、とても暗くて、辛いんです……。知らなくていいです。でも分かってください。一人は駄目だと。この世界に一人になりたい人なんていないんです。人はいつでも心の繋がりを求めてるんです。だから冗談でも、一人がいいだなんて言わないでください」
決意を否定されて、それを全力で否定したい。したいのに。何も浮かばない。理屈で納得できてないのに、この女の言葉には強い説得力があって、出る杭が壊されて。丸くなって。包み込まれていく。
「らいなちゃんの生き方を否定したりしません。これからもそのままでいいと思います。だから、私だけでいいです。他の人とは変わらずに。私だけ。私とだけは一緒にいましょう。それなら二人ですから」
……今も生き方を変えたつもりはない。ただ、一人分くらいの隙間なら空けてもいいかなって。そう思えてしまった。
――こうして私は抱えられた。
私は黄谷かこむを信じていた。唯一心を許していい人間だと思っていた。友達でいてほしかった――
「本当は違うって、分かってるんだろう?」
「鹿誠!?」




