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1‐4 部活動なんて、本当はしたくない。

「あー酷い目にあった……」


 親睦会終了後、3学期初日ということもあり、適当なホームルームを済せすぐに放課後となった。

 明日からはまたいつも通り授業が始まるのか……やだなぁ。


「あはは、お疲れ様……楽しい親睦会だったね」


「ふざけんな、誰のせいだと思ってやがる」


 放課後とはいっても、部活動の時間が残っているので、俺は瑛介とアイドル新聞部の部室へ向っている。

 瑛介とは同じクラスなのでこうして共に行動している。

 それにしても寒いな。真冬の廊下は凍える程に寒く、自然と早足になってしまう。早く部室の暖房で暖まりたい。

 ちなみに、瑛介の裏切りの件は焼肉食べ放題を奢る、という示談で事なきを得た。


「まぁまぁ、楽しい部活が待ってるんだし気を取り直していこうよ」


「お前反省してねぇだろ」


 本当は部活なんて面倒だし心底やりたくないのだが、この学園は原則として必ず部活に入らなければならない。

 なので1番楽であろうアイドル新聞部に入部している。


「変な病気だね。普通アイドルが近くにいるってだけで、アドレナリン溢れまくりなんだけどね」


「お前みたいな基地外の基準でものを言うな……」


 とは言っても、ここの生徒なんて基地外ばかりだがな。


「うーん、僕は文空みたいな人間の方が余程理解に苦しむよ。あんなに可愛い子が詰め寄ってくれているのに、何も感じないどころか拒絶反応を起こすなんてさ。それとも、もしかしてそっち系かい……?」


 口に手を当てながら目を逸らす瑛介。


「俺はあくまで、アイツの様なぶっ飛んだ奴が苦手なだけだ。別に女が無理って訳じゃねえよ」


「えー、けど凄くいい子だよかこむちゃん。ちゃんと見てるのかい?」


「俺はしっかりアイツに投票してるんだ。とやかく言われる筋合いなんてないな」


 そう言い、俺はアイフォンの画面を見せる。

 そこには『黄谷かこむに10票、投票しました』と記されている。

 アイドルへの投票は、このアイフォンから行うのである。

 その後、学園側で集計し、数日後に結果発表される。誰が入れたかどうかも学園側は把握しているので、投票し忘れた生徒には連絡がいく(1敗)。

 俺は票なんてどうでもいいので、黄谷にファンだと思わせる為に消化している。今回の件で無駄になったがな。

 けれど、アイドル側は誰が入れたかは分からないから、自己申告制だ。


「いや、大切なのは気持ちさ。心からの応援がアイドルのエネルギーになるのさ。心の込もっていない票なんてなんの価値もないね」


「んな訳ないだろ。アイドルが俺達に見せているのは、あくまで表の顔。今頃、裏では悪口パーティーだろうよ」


「そんな精神の人間が、この流創学園のアイドルになれるわけないだろ! 例え、生徒の目を誤魔化せようと、プロの面接官の目を誤魔化すなんてできやしないさ」


 空想上のことを話してもキリがないな切りが無いな。さっさと流してしまおう。


「あー、確かにそうかもな。悪かったよ。もう止めにしよう」


「んー、なんか癪な言い方だけど、まあいいさ。そもそも僕と文空は人種が違う。ライオンとパンダが食の好みで揉めているようなものだ」


 気を使って合わせたつもりだったんだがな。何が気に入らなかったのか。

 そんな会話をしている内に、アイドル新聞部の部室に到着する。

 1年の教室と同じ4階にあるので結構近い。

 瑛介はポケットから部室の鍵を取り出し、ロックを解除するなり勢いよく扉を開けた。


「へーい、新学期初部室~!」


 新年初は冬休みの内に済ませたのだろう。


「……とりあえず暖房付けてくれ」


「おいおい、新年初の部活初めの台詞がソレはないでしょ~」


 なんでこいつはこんなに元気なのだろうか……。その気力少し分けてくれ。

 俺は部室の中心に置いてある無駄に大きなテーブルに腰を掛け、鞄を脇へ置く。


「ふぅ……」


 溜まっていたものを吐き出すかのように溜息を漏らす。やはりここは落ち着く……。


「おじいちゃんじゃあるまいし」


 誰がおじいちゃんじゃい。

 まったく誰のせいでこんな疲労する羽目になったと思ってんだ。

 まぁ、その恨みは焼き肉で晴らすとして、


「で、さっそくなんだが、朝に言ってたアレを貰いたいのだが」


「本当にさっそくだね……少しはノスタルジーを感じてほしいものだね」


「何がノスタルジーじゃ」


 たかだか、2週間程度の冬休みがあっただけで懐かしさなんざ感じまい。

 瑛介は椅子の横に置かれた鞄を漁りだす。何をそんなに詰め込んでるんだと、問いたくなるくらいに鞄はパンパンだが、それは聞かない。どうせ『夢』だとかほざいて茶化すだろうからな。


「お、あったあった。文空が欲しがってるって言ったら、喜んでOKしてくれたよ」


「そんな人間、検討もつかんが……」


 俺みたいな人脈が皆無な人間に喜んで渡す奴なんて――


「はい、かこむちゃんの撮れたて写真。他には一切出回ってないプレミアだよ~」


「ちょっと、職員室いってくる」


「はいタンマタンマ。嘘だからね、う~そ」


 本当にこいつは……。もういちいち怒るのも面倒だ。

 瑛介はその写真を鞄の中にしまい、再び鞄を漁りだす。元から自分の物にするつもりだったんだろうな。


「ほら、去年の過去問ね。頼まれてたのはこれで全部な筈だけど、一応確認しておいて」


「……本当に入手してたのか」


 俺が頼んだのは、去年の学年末試験の過去問。予習の為に目を通しておきたかったのだ。

 瑛介は部活の関係上、学年関係なく生徒間で広い顔を持っている。それを見込んで、冬休み前に頼んでおいたのだが、こんなに早く集めてくるとは、流石である。


「ふむ、問題なさそうだな」


「問題はその紙に沢山乗ってるけどね」


「うるせーよ」


 こいつは毎回、何かしら言わないと気が済まないのか。

 ざっと確認するが、抜けは無さそうだ。それどころか――


「なあ、同じ科目が2種類あるんだが?」


「それは昨年のやつさ。けど、野打先生が作ったやつだから約に立つと思うよ」


「まじか……」


 野打先生は1年の数学の教師だ。去年は3年というのは聞いていたが、昨年は1年だったのは知らなかった。

 他にも去年のものではないのが混じっていた。

 俺が頼んだのは去年のやつだけで、そこまでは頼んでいなかったのだが、


「なにが目当てだ?」


「なにがってなにさ、失礼な」


 瑛介とは半年くらいの付き合いがあるが、こんな気前がいい奴ではない。

 となれば、何か目当てがあるに違いない。


「相談があるなら素直に言ったらどうだ?」


「だから何もないさ……僕が親友に優しいのは周知の事実だろ」


 初めて聞いたわ。


「まぁいい。ならこれは恩としてはカウントしないからな」


「えっ……ま、まぁいいさ。僕は親友には寛大だからね」


 こう言っておけば後で何を言われようがキッパリと断れる。

 向こうも今は隠したいみたいだから、それを上手いこと利用させてもらおう。


「さてと」


 俺の活動内容はただ居るだけなので、今日はこれを眺めていよう。

 部員は実質、俺と瑛介の2人。人数が少ないのは人気が無いから、という訳ではない。

 寧ろ入部したい人間なんて山程いる。なんせ、アイドルと触れ合える機会が増えるのだからな。

 だからこそだ。瑛介はその特権を、易々と他人に与えたがらないのだ。

 俺が部員になれたのも、アイドルへの欲が無い、口出しも何もしない、ただいるだけ、だからだ。


「それにしても、喉が渇いたな」


 俺は急に切り出す。


「ほう、今年もあれをやるんだね」


「うむ。じゃあ、新年1発目いくか」


 俺達は拳を構え、真剣な表情で向き合う。

 ひりついた空気が流れた刹那。互いに同じタイミングでその拳を突き出す――


「「じゃんけんぽんっ!!」」


俺がチョキ、瑛介がパー。よって俺の勝ちだ。やったぜ!


「ふん雑魚が」


「そんな、また負けだよ。なんでさ、体感3割くらいしか勝ててない気がするよ……」


 じゃんけんが運だと思ってる内は、一生そのままだろうな。

 完全に運要素を消すことはできないが、相手の人間性を把握しておくだけで勝率は五分を超すことが可能だ。ただ流石に7割は勝っていないと思う。


「んで、今日も紅茶?」


「ああ、砂糖は3本で」


「へーい……」


 これは飲み物じゃんけんだ。負けた方が相手の飲み物を用意するといったシンプルなものだが、これがまた面倒くさいので、割と毎回真剣に挑んでいる。


「新年明けなんだからしっかり洗えよー」


「あ~もうさっそく記事作成に取り掛かりたかったのに~」


 瑛介は渋々と棚に置いてある電気ポットを取り、水道へ向かっていった。

 改めて室内を見返してみるが、相変わらず殺風景な部室だな。新聞部特有の無駄にデカいテーブル、そこに俺達の椅子が2つ。後は資料を入れる為の横長な棚、その上に電気ポットにティーセット、プリンターとその横に、デスクトップPCとそれを置く机があるくらいだ。

 今時は新聞もデジタルな時代だから、本当に必要なものしか置いてない。

 アイドル新聞部という名前を聞いたら、壁中にポスターが貼られていて、常にアイドルソングを流している派手なのを想像するだろう。

 が、瑛介曰く、本当はそうしたいのだが、そんな部屋だとアイドルに変な印象を持たれてしまうから地味にしているそうだ。

 取材というのは、信頼関係が重要。by変態新聞記者。


「うー寒むっ」


「おーご苦労さん」


 ブルブル震えながら帰ってきた瑛介は、電気ポットをセットし、ティーセットに手を掛ける。ティーセットとはいっても、缶の中に業務用の紅茶とコーヒー、スティックの砂糖、紙コップが入ってるのを一括にそう名付けてるだけなんだが。


「まったく、文空もコーヒーを飲んでくれたら、楽でいいんだけどね」


「コーヒーなんて、ただ苦いだけだろ」


 俺と瑛介の意見はこんなとこでも食い違う。


「ま、大人の味だから、しょうがないね」


「お前は大人ぶりたいから飲んでるのか?」


「いいや、新聞記者といったら、コーヒーが定番じゃないか」


「まあ、分らんくもない……」


 ドラマとかでもよくそういった場面を見るし、その風景は思い浮かぶが。


「ほんとのこと言うと、最初はかっこつけて飲んでたんだけどね。でも飲んでいく内に、コーヒーがないとスイッチが入らない体になっちゃってね」


「そうだったのか」


 最初は好きではなくても、慣れてく内に好きになるというのはよくあることだ。


「だから、文空も飲んでく内に……いや、ないか。紅茶に砂糖を3本も入れてるような子供にこの苦味の良さは分からないだろう」


「分からなくて結構だ」


「そーかい……はい、どーぞ」


 紅茶の入った紙コップが目の前に置かれた。その脇に砂糖を3本を添えて。まったく、最後までやってほしいものだな。

 だが、そんな小さなことも、紅茶のいい香りでどうでもよくなる。

 心が安らぐ……。所詮は業務用の大量に入った安い紅茶なのだが、俺の鼻では、例え高級なものだろうと同じに感じるだろう。


「それにしても、そんなもの役に立つのかい?」


「なにもしないよりは遥かにましだ」


 過去問を眺める俺に問う。別に過信はしてはいないが、出題傾向が分かるだけでも結構変わってくるものだ。

 出題者である教師の心理の把握もまた予習の一環だ。出題予想を的中させる楽しみもできるしな。 


「やっぱり変だよね文空は。そんな備えはするくせに、勉強は一切しないなんてさ」


「勉強なんざしたくないから、備えるんだろ。ただでさえ、学校のせいで1日の大半を奪われているのに、それ以外でも時間を食われるなんてごめんだからな」


 だから、授業は真面目に受ける。後はテスト前にノートを見て復習する。結局テストなんて授業でやったことのおさらいでしかないからな。

 けれど、それが通用するのは学園内だけで、模試や大学受験などでは結果を見込めないやり方だ。

 それ故の大学付属高校だ。ここの受験勉強はすこぶるかったるかったがな。

 でもそのおかげで、大学受験をしなくてもいいという、大きなメリットを得た訳だ。受験という壁は心理的不安が大きいからな。

 それを考慮すれば、その時の苦労なんてお釣りが出るだろう。


「羨ましいね。僕もそんな風に時間を作れたら、アイドル新聞の刊行ペースを上げられるんだけど」


「なら、勉強時間を減らせばいいんじゃないか。お前は取材の関係でアイドルに会えるんだし、わざわざ票を作って媚を売る必要なんてないんじゃないか」


 瑛介は票を作る為に、21~50位のラインにいつも居座っているのだ。


「分かってないなあ……大切なのは、肩書きなのさ」


「アイドル基地外のか」


「そう。作り手の存在っていうのは、無意識でも手に取る人に伝わるのさ。それがアイドルの為に勉強もできない奴、なんて思われたら終わりさ。何故なら僕は、書き手であり、聞き手でもあるんだからね」


「お、おう……」


 胡散臭いが、同時に説得力のある返答に困惑する。


「何より、新聞を作ってて、勉強が手に付きません~、なんて言ったら、活動停止させられざるを得ないしね」


「そうだな。それは俺も困る」


 ごもっともである。


「さてと、それじゃあ作業に入りますか。新学期初の親睦会の記事。気合入れちゃうぞ~」


 瑛介は鞄からノートパソコンを取り出し、電源を入れる。

 俺も作業に入ろう。といっても、俺はただ過去問を眺めてるだけだが。



「「…………」」



 こうなると本当に静かだ。耳に入るのは、キーボードを叩く音と、外の運動部の掛け声くらいなものだ。

 こんな空間で、人が淹れた紅茶をすすりながら、適当に時間が過ぎていく。

 ふむ、いいものだ……。病原体を浴びた後だから尚更に和む。平和すぎて、どんどん英気が抜けていくのを感じる。

 これで椅子がふわふわなソファとかだったら最高なんだが。それは高望みしすぎだな。


「ねえねえ、文空」


「なんだ……」


 一度ゆったりし始めると、声を出すのにも気力を使う。


「いや、かこむちゃんって、裏ではどんな子なのかなって」


「…………」


 返事した俺が馬鹿だった。


「一風変わったキャラしてるけどさ、常にあんなんじゃないと思うんだ」


「…………」


 いいから、自分の作業に取り掛かれ。


「実際、僕も取材を通じて会ったりしてるけど、常にあのキャラだから分からないんだよね」


「…………」


 俺はそっぽを向いて、話かけるな、というオーラを出す。


「それで、考えてみたんだけど、かこむちゃんは実は凄く真面目な子なんじゃないかって――」


「ありえないっ!!」


 思わずテーブルを叩き、叫んでしまった。


「いいや、案外あるんだよそれが。アイドルっていうのはキャラ作りがとても重要でね。真面目な子程、考え込んで振り切ったキャラになる。っていうのはそんな珍しいことでもないんだよ」


「にしてもだ。真面目な人間があんな基地外染みたことをする訳ないだろうが」


 あの黄谷が真面目な奴だなんて絶対にない。F1グランプリを三輪車で優勝するくらいありえない。


「ほう……言うね。なら、賭けてみるかい? ちょうど明日かこむちゃんの取材の機会があってね、そのときに聞いてみるよ」


「そんな簡単に素性を見せるわけないだろ。それに、素性を暴いた記事なんて投稿されようものなら活動にも影響が出るだろ」


 アイドルの素性を晒すなんて営業妨害もいいとこだ。


「いや、いい考えがあるんだ。それに記事になんてしないさ。あくまでも秘密でね」


 明らかに不自然だな。まさか、本当に黄谷が……いや、ないない。何が目的だ?


「そうか。で、何を賭けるんだ」


 だが、乗るふりをして探りを入れよう。

 こいつが何を考えて、こんな提案をしたのかを知りたい。


「そうだね……スタンダードにラーメンでも奢るよ」


「ラーメンか。まあ、それなりだな」


 焼肉食べ放題の件、忘れてないよな?


「あ、いやいや、勘違いしないで。文空には別のことをしてもらうよ」


「何だと?」


 もう臭すぎて裏があるのがバレバレだ。怪しまれないとでも思ってたのか。


「そうだな……かこむちゃんの記事を文空に書いてもらおうかな。取材をするところからね」


「待て、それはラーメン1杯と釣り合ってないだろ」


 他のアイドルならまだしも、黄谷への取材と記事作成だなんて冗談じゃない。


「そりゃ、取材や記事を作るのにはお金は使わないし、そんな手間でもないしね。十分釣り合ってると思うけどね」


「そうじゃねえよ、分かってて言ってるだろ」


「けどさ、これからのことを考えれば、そういう機会を作って少しずつ免疫を付けてく方が有意義だと思うけどね」


「……それは確かにあるかもしれんが」


 確かに瑛介の言う通りかもしれない。これからも逃げ続けるより、抗体を作っていく方がいいのかもしれないが。


「何より、僕がこの賭けに勝ったのであれば、かこむちゃん真面目説は白ということになるよね? そんな子の記事を書くのも苦痛なのかい?」


「うーむ」


 瑛介の提案に裏があるのは分かりきっている。

 だが、この賭けの内容は簡単に言うと、黄谷が真面目な人間であるかどうか、だ。

 瑛介が自分が勝つことを前提にこんな提案をしているのであれば、それは黄谷が実は真面目な奴という、とんでもない真実の裏付けということでもある。

 罰ゲームは黄谷の記事を作成。ただ部室にいるだけの俺からすれば大した手間にはならない。どうせ部活の拘束時間は一定だしな……。


「よし、その賭け乗った」


 このままこの仮説を水に流すのは大きな心残りになるだろう。というか、もう既に気になってるから、今答えを教えてくれてもいいんだぞ?


「決まりだね。録音もしておいたから、忘れたはなしだからね」


「おいおい……」


 瑛介はしたり顔でポケットに忍ばせていた録音機を見せ付ける。抜け目の無い野郎め。


「僕には思い浮かぶよ。かこむちゃんがプライベートでは紅茶を嗜みながら、小説を読むような子で、主語は常に敬語の清廉潔白な姿が」


「馬鹿じゃねーの。アイツは1人で公園に行って奇声あげながら遊びまわってるような奴だぞ」


「ふふ。楽しみだよ。取材のときがね」


 なんでそんなに自信に満ち溢れているんだ。流石にあり得ないだろ。ないよな?


「ったく、そんな黄谷を見ようものなら拝め称えてやるよ」


 俺が意気揚々と言い放った、その時だった。

コンコンと扉ノック音が響く。ここに来客が来るとは。珍しいな。


「どうぞー」


 瑛介がそう返事をすると、扉がゆっくりと開けれた。


「お前は!?」


 なんてタイミングだ……。


「ど、どうしたの……かこむちゃん!?」


 病原体KK―M。黄谷かこむだった。

 けれど、様子がおかしい。顔色が悪く、何か焦っているような。


「あ、あの……す、すみません……た、助けてもらえませんか……」

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