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EX2 流創カードゲーム。後編。

 ――いざ撮影が始まる。

 スタジオはいつものラジオ放送などで使う場所だ。

 オープニングでは軽くこのカードゲームについて触れ、それじゃあ実際に対戦! と、これから2人の対戦が始まる。

 対戦の撮影はなるべくカードが見やすいよう上部に固定カメラを設置しているので2人の手元しか映らない。その横に俺がいてカンペでアドバイスできる様にしてある。

 スタジオのガラスの向こうには、何故かプロぶって腕を組む瑛介と、先程一仕事終えた橙田がいる。今回はそっちの機材を使わないから裏方はいらないんだが。


「それじゃあ勝負ひょも! 私はこの『城塞の聖母』を使うひょも! これはななみちゃんとやずるママのデッキひょもね」


 固定カメラに向けてデッキを映す黄谷。表紙には2人が描かれたカードの絵が記載されている。本当は表紙の一部をプラスチックにして目玉カードが見えるタイプにしたかったが、コスト掛かるから駄目と却下された。


「ふんっ、ならオレはこの『夜雲の協奏曲(コンチェルト)』を使わせてもらうぜ!」


 本番でいきなりキャラ変えるんじゃねぇよ。黄谷が困惑してるじゃねぇか。そのネタ知らんから。未だにアンパンマンで感性が止まってるんだぞ。

 オタクだからという理由でキャスティングしたがそこまで網羅してる奴だったとは……。

 ちなみにこれらのタイトルやカード名はほぼ瑛介任せだ。


「美しい……!」


 同じく表紙の絵を映す緑沢。こいつは語録のみで撮影を乗り切るつもりなのだろうか。オタク共はこういうの好きそうだから止めはしないが。大した打ち合わせをしなかったのも悪いしな。


「それじゃあ、開封ひょも~! わぁ、中身はこんな風になってるひょも~!」


「中身は40枚のデッキが入っているぜ」


 ルールガイドはもう作成済みで、瑛介に作らせたルールブックと解説動画を出す予定だ。動画は既に編集を終えており、後はナレーションを入れるのみ。今さっきその役を橙田に頼んだ。

 この2人は予めその動画を見たというスタンスで撮影に臨んでいる。


「じゃあこれ1つですぐに戦えるひょもね~!」


「ああ、そうだぜ!」


「ならさっそく――」


「待ちな。このままだとカードに傷が付くぜ。こいつを使うんだぜ」


「わぁ~私のスリーブひょも~!」


「オレはオレのスリーブを使うぜ!」


 ひとまずカット。スリーブに入れる作業は時間が掛かるので予め入れた物を用意してある。それに入れ替え撮影再開。


「私のプレイマットひょも~、かわいいひょも!」


「オレのも買ってくれよな!」


 プレマの販促も欠かさずに。


「それじゃあ始めるひょもよ~!」


 『アイドル活動スタート!』これがこのカードゲームのバトル開始の合図。打ち合わせ通り、せーのと黄谷が小声で合図を送る。


「アー―」


「決――」


 すかさずカンペで緑沢を殴る。

 仕切り直して――


「「アイドル活動、スタート!」」


「「じゃんけんぽん!!」」


 戦いの火蓋が切って落される。順調に1発で終わらせてほしいが……どうなる事やら。これはあくまで販促用の撮影。いい感じの試合が撮れなきゃ永遠に終われない。帰れない。


「先行はオレがもらうぜ!」


「じゃあ私は後攻ひょも」


「最初にアイドルカードを置けるんだったな。オレはオレを召喚するぜ!」


「私はやずるママを出すひょも! で、まずはお互い5枚引くひょも」


 視聴者に向けた説明口調。


「さぁいくぜ! オレのターン! 先行はドローできないぜ。ターンエンド!」


 どうやら使えるカードはなかった様だ。というか――


「Fカード出すの忘れてるひょも」


「忘れてたぜ。自分のターン開始時にこのFカードを1枚置けるんだったな」


 あるあるだな。俺もよく忘れて置いたか確認を取ったものだ。


「それじゃあ私のターン、ドローひょも! Fカードを出して……この1Fを使って『母性の蓄積』をプレイするひょも!」


「なに!?」


「このカードはアイテムカードなので場に残り続けるひょも。これでターン終了ひょも」


 母性の蓄積。これは言うまでもなく瑛介の案で生まれた概念だ。橙田特有の動きで本人がいないとただの置物だが――。


「オレのターン、ドロー! オレは2となったFカードでアクションカード『(うた)の構想』を発動! このカードはソングカードを1枚デッキから手札に加える事ができる。よってオレは『Re:berate(リベレート)』を手札に加えるぜ!」


 ソングカード。アクションカードではあるがその中でのカテゴリの1つである。


「うぎっ、そのカードは……」


 こらっ、一応初見という設定なんだから。


「これでターンエンド!」


「私のターン……うーん……」


 選択肢が複数あるようで悩む黄谷。


「――じゃあ、場の『母性の蓄積』の効果を発動するひょも! デッキから『母性の蓄積』を2枚まで手札に加えられるひょも。ただし1枚につき1Fを払うひょも。なので2F使って2枚加えるひょも! 私はこれでターン終了ひょも」


 母性の蓄積は1枚出せば手札になくても複数蓄積可能だ。


「オレのターンドロー! ならばオレは3になったFで、さっき手札に加えた『Re:berate』を発動するぜ! このカードは相手のF1枚を1ターン使用不可とする。ただしフィールドにオレが存在する場合、使用不可ではなく破壊するぜ!」


 正確にはFデッキに戻すだが。


「いや~~~」


「ふんッ、ターンエンド」


 これが緑沢の特性、破壊。カード名は緑沢の曲のタイトルから来ている。リベレートとは、解放を意味する。なのでファンを悪徳な詐欺から解放するという名目でもピッタリなカード名と言える。英語の綴りをReにしているのはそういうお年頃だからだろう。

 相手のファンを減らす強力な効果。こんなのが序盤に打てていいのか、と異を唱えたくなるが――


「くっ、これじゃあ一気にピンチにぃ……ならないんだひょも!」


「なんだと!?」


「私のターン、私は2F使ってアクションカード、『アイドル食堂』をプレイ! カードを1枚引くひょも! さ~ら~にぃ、起死回生ひょも! これによって更に1枚引くひょも!」


 起死回生。自分のFカードが減ったり、使用不可状態になった場合に起動できる効果。

 このシステムが思った以上にゲームに深みを生んでくれていた。これにより考えなしに破壊をするのが躊躇われるようになり、相手を優位に立たせない為に破壊できてもあえて破壊しない、という読み合いが発生する様になり結果戦略性が広がった訳だ。

 これを最初に見せれたのは大きい。まだこの戦いが採用されるかは分からないが。


「小賢しい真似を。だが、オレにそんな小細工通用しないぜ! オレのターン! ならば3Fで柴崎らいなを召喚! ターンエンド」


「私のターン、ならこっちもななみちゃんをプレイするひょも!」


 とりあえず2人目のアイドルはすぐに出せと打ち合わせてある。戦略的にいうなら手札や戦況と相談だが、場にいる恩恵は大きいので、主力アイドルは早めに出した方が良いだろう。

 そんなこんなでもう緑沢のFは5か。試合が動き出す頃合いだ。


「オレのターン、チッ……5F使い『曇天バイアス』を発動! 次の相手ターン終了時まで、相手はターン開始時以外のドローは不可となる。更に柴崎らいなが場にいる場合、ターン開始のドローも不可にするぜ!」


「ぎゃあああああ」


 柴崎の特性、行動抑制。ファンへの当たりのキツさを再現している。2人はカード名に曲名を採用されたカードが多い。何故なら考えるのが楽だからだ。


「くぬぅ……私のターン、ドロー……はできないひょも……でもドローしないアクションカードは使えるひょもから……4Fを使って『鋼鉄の威信』をプレイひょも! これによって次の相手ターン終了まで、私は相手カードの効果を受けないひょも!」


 藍坂の特性、鉄壁の守り。藍坂のカードのみの特性なのだが、藍坂のカード全ては本人が場にいなければ使用不可である。これは藍坂の要望によるもので、困るっちゃ困る要望だが、揉めるのもなんだしそれで手を打つ事にした。己の道を往く藍坂のカードとしちゃ解釈一致ではあるしな。

 話を戻して、今プレイしたこのカード正確には、効果を受けない。ではなく、自分プレイヤーに対してのカードを使用できなくする。なので自分のアイドルやFカードは対象外である。例を挙げるなら、先程のドローできない効果みたいのが対象となる。

 効果に対してコストが重めな気がするが、この手の無効化効果は使いやすいと悪さしかしないと先人からの知恵を頂いている。


「この状況でも喰らい付いてくるとはやるな。だが、守ってるだけじゃ勝利には辿り着けないぜ! オレは常に先を往く――5F『Jamming true(ジャミングトゥルー)』を発動! このカードは相手ターン終了まで相手アイドル1人の存在を無効にするが、オレがいる場合、更にそのアイドルを破壊するぜ! 破壊するのは勿論、厄介な藍坂ななみだぜ!」


「ななみちゃああああああん!!」


 正確には破壊ではなくアイドルデッキに戻るなので再び召喚可能だ。先程説明したが、これはアイドルカード対象の効果なので、黄谷が発動した『鋼鉄の威信』の効果をすり抜ける。恐らく緑沢はそれを理解せず使っているが問題はない。面倒だが編集で説明を書いておくか。

 シンプルなルールにしたつもりだが、やはりカードゲームと言うべきか、こういった面倒な要因は生まれてしまう運命なのか。


「ひどいひょも……私のターン、今は5Fひょもね……ならななみちゃんを呼び戻すひょも! 残りの2F使って2枚の『母性の蓄積』をプレイひょも!」


 5Fで3Fで出せるカードを戻すというのは割損に見えるが、元々相手が3F使ったカードにまた3F使わせる為1F分お得だ。


「オレのターン、ドロー! 一気に畳み掛けるぜ――まずは3Fで2枚目の『Re:berate』、相手のファンを1枚破壊! 更に3Fで『ワーキング☆バケーション!!』を発動! このカードは相手ターン終了時まで相手はアイテムカードを発動できなくするぜ! 更に、柴崎らいながいればアイドルカードも召喚不能!」


 1Fを使い切れなかったがこれは手痛い猛攻。これにより黄谷は4FへとなりFは4‐7。危機的状況と言える。だが諦めるには早い。なんぜ今の黄谷の場には――


「負けないひょも! 私のターン、ドローひょも――わッ!! これなら……私は『聖母の手抱』をプレイひょも!」


「――待ちな。そのカードのコストは7。ズルは見過ごせないぜ――」


 知っているのにわざとらしい演技を挟む緑沢。


「ちっちっ、なんとこのカードは場の母性の分コストが下がるひょも!」


「なにっ!? 4Fで7Fのカードをプレイだと?」


「ふふん、このカードは自分のFカードを1枚増加、更にママがいると相手のFを1枚減らすひょも!」


「なんて強力な効果なんだ……これが母の力とでも言うのか……?」


 橙田の特性、パワー。コストこそ大きいカードが多いが、その分効果も強力。序盤は母性の蓄積などでやりくりして終盤に力で捻じ伏せる。

 これにより5‐6までFの差を縮める。次のターンで緑沢は7になるが、3母性橙田がいる事を加味すれば5分に近い状況と言えるだろう。



 ――そして、2人の戦いは白熱し終盤を迎える。


「オレはこれでターン終了。ククク……オレのFは10。次のターンがくれば貴様の敗北。さぁどうする? しかも貴様は現在『曇天バイアス』の効果によりドローを封じられている!」


 完全に悪役となった緑沢は勝利の11Fへ王手を掛ける。対する黄谷はこのターンでFは8だがドローができない状況。ここで何もできなければ黄谷の敗北となるが、その目にはまだ光が宿っていた――


「私のターン! ふふっ、やっとこのカードを使えるひょも! 私は8Fを使って、カップリングアクションカード『鋼鉄の聖母』をプレイするひょも!」


「なんだとッ!? カップリングカードだと?」


 カップリングカード。表紙を務めるSSRカード。いわゆる切り札。


「カップリングカードは特定の2人のアイドルが場にいる時使えるひょも、このカードは自分のFが10になるまで増やし、更に相手のFカードを2枚減らすひょも!」


「馬鹿な、一気に10だと!?」


「更に更に~~~、次の相手ターン終了時まで自分のFカードは相手のアクションカードの対象にはならないひょも~~~!!」


 カップリングカードは発動条件が厳しめな為、勝負を決めるレベルの非常に強力なカードとなっている。もう相手による妨害もない。これで黄谷の勝ちは決まったな!

 ――しかし、この状況下にも関わらず緑沢は不敵な笑みを零す。


「……アタシのFは8……アクションカードは機能しなくなったも同然……これはアタシの負けね。アンタのか…………ちなんだとでも思った?」


 キャラがブレすぎだろ。


「ひょもっ!?」


「アタシのターン。教えてあげるわ。緑沢みつなは歌だけじゃないってコト……」


「どういう意味ひょも……?」


「8Fを使用し、来なさい! 『アンラッキー・バニー』!!」


「ここにきてバニーちゃんひょも!?」


 アンラッキーバニー。これは緑沢考案のマスコットキャラだ。よく酷い目に合っている。


「……この子は呪いの人形なの」


「呪いの人形……?」


「そう。このカードは相手ターンにFカードを減らされてたら使えるの。呪いのカードだからね……この子の呪いはね、自分が受けた痛みを……相手にも与えちゃうの♪」


 呪いにちなんでヒステリックなキャラに切り替えた様だ。


「ひえええええ」


「それだけじゃないの……。私がいたらね、同じ枚数だけ手札も壊れちゃうから――」


「そんな~~~」


 まずい。一気に戦況がひっくり返ってしまった。これによって黄谷の手札は0、Fは8となり、更に――


「……このカードは呪いのカードだから、これが場にある限り相手はターン開始時Fカードが増加しないの。でね、この呪いを解きたいなら……仲間を一人犠牲にしてね♪」


 このカードは相手がアイドルカード1枚をデッキに戻せば効力を失う。これは非常に手痛い損失。――ったく、誰だよこんなカード考えた奴は。


「ふふっ♪ 可哀想なかこむちゃんに最後に1つ教えてあげる。今私の手札にはカップリングアクションカード『夜雲の協奏曲』があるの。このカードは墓地のソングカードが5枚につき1F増えるの。アタシの墓地のソングカードは11枚。次のターンの私のFは9。つまり――分かるでしょ?」


 終わりか……。見事な逆転劇だったな。まぁ1発でいい動画が撮れてよかった。どうせ編集するなら黄谷の勝利の動画にしたかったが、こればかりは仕方がない。


「もう、駄目ひょも……手札は0枚でFは増えない……終わりひょも……みんなごめんひょも……」


「あきらめちゃダメよ、かこむちゃん!!」


 ここに来て橙田が乱入。おい、なんか始まったぞ。尺伸ばすなよ。


「ッ!? やずるママ……どうして、やられた筈じゃ?」


 殺すなよ。


「ええ、でもかこむちゃんがそんなんじゃ、安心して天国にも行けないわ」


「……でも、ダメだったひょも……いいひょもよね? 私頑張ったひょも」


「何甘ったれたコト言ってるの!!」


「いたいっ」


 演技に熱が入ったのか本気ビンタする橙田。


「私はママなのよ!! だからこそ我が子の甘えは絶対に許さないんだから!!」


「そんなぁ……」


「どうしてか分かる?」


「……分からないひょも」


「かこむちゃんの先を信じているからよ! 先で成し遂げると信じて止まないから……だから絶対に許さない」


「ママ……そっか。ありがとうひょも! そうひょも、私のこの手にはママの想いで溢れてるひょも!」


「そうよ。それでこそかこむちゃんよ!」


 なんだよこの茶番。編集する方の身にもなれよ。


「……何さっきから独り言しゃべってんの? 早くして。どうせアタシの勝ちなんだからさ。サレンダーでもいいけど――」


「いいや。私は最後まで絶対に諦めないひょも! まだ私のターンは残ってるひょも!」


「……ふーん。勝手にしたら」


「いくひょも、私はこのドローに賭けるひょも! はあああ、私のターン、ドローーーッ!! こ、このカードは……ママの想い……ちゃんと届いてたひょも!」


「たかだか1枚のカードでこの状況をひっくり返せる訳ないでしょ。はったりは止めなさい」


「そんな事ないひょも!」


「なにっ!?」


「私はアクションカード、『ダイダロスの翼』を発動ひょも!」


「10Fのカード!? まさか――」


「そのまさかひょも! このカードも母性1つにつき1コスト下がるひょも!」


「つまり……コスト7ッ!?」


「このカードは自分のFカードをプラス2するひょも!」


「はっ、でもFは10。残念だったな。それじゃあ勝利には届かな――」


「まだ、効果はあるひょも! 更に自分の母性の解放を全て捨てて、その枚数分カードを引くひょも! よって私は3枚カードをドロー」


「だからどうした? 残り3Fでここから勝つ方法なんて――」


 基本的にFを増やすカードは横にして置く為、そのターンに使う事はできない。

 しかし、このカードはコストの大きさから縦に置く事ができる。よって現在黄谷が使えるFは3。しかし、縦にFを置けるカードは強力な為に最低でも4Fからとなっている。――起死回生時を除いて。


「――ッ!! 私は3Fで『直々の救済』をプレイひょも! このカードは起死回生時かつななみちゃんが場にいる時のみプレイ可能! 奪われたFを1枚、縦にして取り戻します、ひょも!!」


「なにぃぃぃぃぃ!? 馬鹿なッ――」


「はぁぁぁぁぁ、ウルトラななみちゃんローリングアタッー――ク!!!」


「うわああああああああああっっっ!!!」


 何故か緑沢は椅子から吹き飛び、カードが地面に散乱する。


「やったひょも~! 勝ったひょも~!」


 嬉しさで飛び跳ねる黄谷。嬉しいのも無理はない。練習試合に3戦したが全敗だったからな。それをこんな逆転茶番劇で勝ったのだから尚更だろう。

 いやぁ~変な茶番は入ったが、いい試合だった。最後までどちらが勝つか分からず見応えがあり、あの変な茶番もオタク達は受けそうだし、編集の甲斐がありそうだ。面倒だが。




 ――エンディングパートへ。

 カメラを横にし2人が映る様にする。


「いや~いい試合だったひょも~! 楽しかったひょも!」


「ふんっ、次は負けないんだから」


 仕事なんだから感情は殺してくれ。


「という訳で、最後に商品紹介の時間ひょも~! ぱちぱち~」


「まずはブースターパックね」


「7人が表紙のパッケージになってるひょも~!」


「で、値段はいくらなのよ?」


「こちら1パックカードが6枚入りで300円になるひょも~!」


「へぇ~ちょっと開けちゃおうかしら……おっ、このカード光ってるじゃない!」


「これはSRひょも! 必ず入ってるひょも!」


「なーんだ。でも必ず光ってるカードがあるのは安心ね。ちなみにSRって事はSSRとかあったりするのかしら?」


「ご名答ひょも! 中にはこ~んなSSRが入ってる事があるひょも!」


「へぇ~名前までピッカピカね」


「これがみつなちゃんのSSRひょも」


「ッ!? な、なんて素晴らしい絵なの!」


「それだけじゃないひょも! さらに低確率でSSRカードがさーらーに光り輝いちゃう、RSSRが入ってるひょも~!」


「うわっ、ちょっと派手すぎじゃない?」


「凄い光り方してるひょも~! 是非ともみんな手に入れてほしいひょもね!」


「箱で買いなさい! 箱買いよ!」


「ふふーん……」


「……ま、まさか、まだ先があんのか?」


「そのまさかひょも! なんとRSSRを凌ぐ究極のレアカード、流創レアがあるひょも~~~!!!」


「流創レア!? 何よそれ」


「と~~~っても低確率なんひょもなんけど、でーーーん! 超豪華イラストの私のカードが封入されてるひょも~~~!!」


「はぁ!? 何よそれ? アタシのはないの?」


「流創レアは私のみひょも!」


「なによそれズルいじゃない!」


「その代わりに私はスターターデッキにいないひょも……えーん、私もカップリングしたかったひょも……」


「なるほどね……だからアンタはスターターにいなかったのね。それじゃあアンタのアイドルカードはないの? カードの厚みも違うからパックに入らないでしょうし」


「それは大丈夫ひょも! なんと、この動画がアップされた翌日に私のアイドルカードをみんなに配っちゃうひょも~!」


「え、タダで貰えちゃうの?」


「当然ひょも! 教室で先生が配ってくれるひょも! 無料でもアイドルカードだからちゃ~んと光ってるひょも! しかも、これだけじゃなくて、他にも私のカードが6枚も付いてくるひょも~!」


「無料でそこまで配っちゃうなんて、随分大盤振る舞いね」


「みんなにそれだけ触れてみてほしいひょもよ!」


 そう、これが戦略。超低確率カードというのは話題になり易いのだ。超低確率が故に当てた奴は周りに自慢するから目立ち、所持しているだけで注目される。やがて周囲は次第にそのカードのキャラも意識する様になる。これは他のカードゲームでもよくある事なのでやらない手はない。

 それを鮮度の高いリリース初期、そこに黄谷を当てたかった。だが、なんの理由もなくその席を選定してしまえば、優遇になってしまう。だから免罪符としてスターターで省いた。これによって責める者もいなくなる。

 無論、この免罪符のデメリットを引き受けるつもりもないので、黄谷のカードは無料配布という手を打った。これによって誰もが黄谷を所持している状態になり、使用率が落ちる心配もなく、同時にカードの告知にもなる。強制的に所持させる事によって所持欲を掻き立てる。これがアイドルグッズなのだから尚更だ。


「ここまで言われたらもうオタク共は買うしかなくなるわね」


「そんな人達の為に、まずはこの3種のスターターデッキひょも~!」



 ――とまぁこんな感じで残りのスターター、サプライの紹介をして無事撮影は終了。


「はーい、おつかれさーん」


「ほんとお疲れたわよ。ギャラ出しなさい」


「おつかれひょも~」


「それにしても、あの粗悪な台本でようあんな喋れるな」


 2人で流暢に話していたが、台本には全体的な流れと、強調してほしい部分を書いただけだった。カードがこんなに早く完成すると思ってなかったから急になってしまったからだ。


「この前の脚本もそうだけど、人に仕事させたいなら舐め腐った態度見せるなって言ったわよね? 相応の仕事しか返ってこないって。……まぁ、今回はなんか成り行きでどうにかなったけど」


「みつなちゃんがトーク上手だったからひょも」


「まぁそれ程でもあるけど」


「いや~2人共素晴らしい仕事っぷりだったよ」


 奥で見ていた2人も混ざる。


「ありがとひょも~」


「私もゲスト出演させて貰っちゃったから、ギャラの振り込みよろしくね~」


 鉄でも握り潰してダイヤ売っとけ。


「あ、そうひょも、この流創レアのカード、超低確率って、具体的にどれ位の封入率ひょもか?」


「……ん、ああ、それは販売分の中でいうなら何パーというか、3枚だな」


 あまりポンポン当てられてしまっては価値が落ちてしまうからな。500ボックス中で3枚だ。

 どうせSSRのやつと効果は同じだから所持していなくても競技面において差は出ないしな。



「「「ええええええええええ」」」



 今日一のリアクションに俺まで驚いた。

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