EX2 流創カードゲーム。中編。
あれから瑛介と幾度となくカードバトルを続けバランス調整を行い、2週間でなんとか企画書提出。期間的には短く見えるが、土日は瑛介が俺の家に泊まりに来る程だったし、体育祭練習とタイミングが重なっていたから全然短くは感じなかった。
次に最も重要だろうといえる販売に漕ぎ付けるまでだが――それも意外な事に速攻で決まった。何が起きたのかと言うと、本来であればこの様な企画はグッズ販売部に相談するのが定石なのだが、面倒だからいつもの権力のある理事長に相談した。何故か怒っていたが、カードゲームには元より目を付けていたらしく、やってみんしゃいと速おっけーをくれた。
そうなると来るべきは瑛介君お楽しみのイラスト撮影だが、無論これは阻止。予算も気にする必要はないとの事なので撮影はプロに任せればいいか……と踏んでいたが、結局撮影なんて行わず、アイドルを模したイラストを使用する事となった。
これには色々なワケがあるのだが、実際にテストとして黄谷をモデルにカードにしてみたのだが、3次元の人間をカードにすると、なんというか不気味というか、シュールというか、とにかく何か受け付けなかった。
もう1つ、藍坂が撮影を嫌がったからだ。他の奴らは乗り気ではあったのだがな。――まぁ、後々考えてみると、最初はよくとも、新しいパックを出す度に撮影に付き合わせるのは迷惑だろうし、都合が合うとも限らない。なので結論そちらの方が好都合と言える。
ここまで行くと俺達にできる事は限られるので、後は開発部の人に任せながら、時折カードデザインの監修、カード効果の変更要請などを行いながら、時は流れていき――現在7月中旬。
「とうとうこの時が来たんだね」
「ああ、あんな落書きがこうにまでに成るとはな……未だに実感が湧かん」
期末テストからの解放も束の間。アイドル科グッズ倉庫にて、立派に製品化されたカードの箱の山を前に立ち尽くしていた。
「というか製品化早すぎじゃない? 企画提出したの体育祭の数日前とかだったよね?」
「……販売規模が小さくてそんな数作る必要がないからしい。ただし大赤字だと」
カードの製造は独自のルートがあったので理解できるが、問題はカードイラスト方だ。100種類を超えたイラストをこの短期間でどう用意したのか。聞いてみたところ、アイドル毎に担当の絵師を分けたり、既存のイラストを利用したりして1月程で完成させた様だ。相変わらずのストロングバイタリティー。
「そうなんだ……色々と有難いね」
「だな。というか申し訳ない」
「大赤字って割に沢山あるけど……これ全部で何ボックスあるんだい?」
「知らんのか。段ボールに入った状態ではカートンって呼ぶんだよ。で、それが26カートンある――」
「えっ!? この段ボールに20って書いてあるけど、まさか……」
「ああ。20ボックス入りだ」
「うえええええっ、つ、つまり500ボックス以上あるってことぉ?」
「1カートンは予備だがな」
「いやいやいやそれでも500ボックスは売れないでしょ?! 販売対象の2年は199人しかいないんだよ? 1人2、3ボックス買う計算になるけど……そもそも全員がやる訳でもないのに無謀すぎるって」
「別に短期間で売る必要はないんだ。卒業までに売り切ればいい。第1弾はスタンダードな汎用性の高いカードも多いから需要が途切れにくいし、コレクション性も加味すればまぁ売り切れるだろうさ」
「……ちなみに1ボックス何パック入りなの?」
「15パック」
「1パックいくらよ?」
「300円」
「たっか」
「しゃーないだろ。ただでさえ金が掛かってんだ。これでもガッツリ赤字なんだよ」
「1ボックス4500円……これを500ボックスって……僕らの財布をなんだと思ってるんだい?」
「カードゲーマーは金銭感覚壊れてるからいけるいける!」
「適当すぎでしょ……もし売れなかったら信用ガタ落ちで企画が通りにくくなっちゃうかもしれないんだよ?」
「適当じゃない。ちゃんと売れるって自信はある」
「その根拠は?」
「根拠か……なんだろうな……感覚的にいけるって確信があるんだよな。それ以上もそれ以下もないだろ」
この感覚を言葉で表現するのは難しい。世に出る前の商売なんて大体そんなもんな気がするが……。
「やっぱ適当じゃないか! 僕は責任取らないからな……」
「じゃあこれからは外側の人間だな」
「冗談だよ冗談。これからも君に付いていくよ!」
撮影こそできなかったが、このカードゲームを通して何回かアイドルと接する機会があったからな。それを手放したくはないだろう。これからも飴を与えつつ利用する。
「スターターデッキも結構な量あるけど……」
「各250個」
「もう、馬鹿でしょ!!」
スターターデッキ。右も左も分からない初心者が買うのはまずこれだ。予め構築されたデッキが入っている為すぐにゲームを始める事ができる。全3種類。
アイドルカードは実質これにしか入っていないためゲームをするにはこれを買うしかないのだ。だから強気の数を入荷してる。
よくスターターデッキは特定のカードが1枚しか入っていなく複数個購入なんて話をよく聞くが、このデッキは1つ買えば大丈夫な構造となってる。
「ふんっ。お前は商売がなんも視えとらんな。これがなきゃゲームがプレイできないんだぞ。それにファンの奴は保存用として複数購入もしたがるだろうよ。一応最初の内は1人1つまでにするが」
「うーん、確かに僕も複数買う予定だったけども……」
「いや、お前は開発側なんだから購入禁止に決まってるだろ。それと一般生徒との対戦も禁止だ」
「なんでえええええ!? 聞いてないよそんなの……泊まり込みまでして調整したのにあんまりじゃないか!」
「当たり前だ。先にカード効果を知ってる分アドバンテージがあって不平等だろ」
「じゃあ購入くらいはさせてよ」
「その点に関してはそうする必要がないってのが正しいか」
「っ!? と言いますと?」
「……この段ボールかな。開けてみろよ」
隅に置かれた一際大きな段ボール。もう既に開封済みの物で……。
「え? うん……うわっ、ボックスやグッズも入っているじゃないか!! もしかしてこれ全部僕へのプレゼントかい?」
「図々しいなおい」
「ははっ、流石に冗談だよ。文空と山分けだろ?」
「そのふてぶてしさはどこから来るんだ?」
「じゃあ何だっていうのさ」
「そりゃチェック用とかだが、まず不備はないだろうな。鑑識に通らないとここまでの量は刷らんだろうし。あくまでそれは建前みたいなもんで、好きに使ってくれって感じのヤツだな。マーケティング用だったり、身内に配ったりな」
端的に言えば色々用。この世の中、皆が思っている以上に商品は販売用意外にも様々な事を想定してかなり余分に数を作っている。
「そうなんだ……じゃあチェックも兼ねてさっそく開けてみようよ!」
「そうだな……じゃあ黄谷と緑沢も呼ぶか。打ち合わせもせんといかんからな」
「うおっ!! そりゃ楽しくなりそうだね」
露骨に瞳を輝かせ、急に窓に映る自分を見て髪型を整える瑛介。
気持ち悪いので次から打ち合わせはこいつ抜きでやろう。
☆
段ボールを抱え打ち合わせ室へと移動した俺と瑛介。
開封は黄谷が来てからにしようとの事で現在待機中。
暇なので瑛介が張り切ってアイドル達に気が利くアピール用に買ってきたレモンティーを口に含み、それを黄谷達が来るまで飲み込まない縛りを己に課している最中。
「かこむちゃん達まだかな……ちゃんと連絡はしたんだよね?」
スマホの画面に映る自分を見て身だしなみの最終調整をする瑛介が問う。
「ふんふふ」
「……そっか……」
何かを察した様で以後会話はなく――
「お待たせひょも~」
「きたわよ」
俺はぬるくなったレモンティーを飲み込む。
「いやいや全然待ってないよ。ささ、こっち座って」
長テーブル二つを並べ対面の2つの席へ誘導する。流石に隣に座らせる事はしないか。
「うわ~もう完成したひょもね」
「……やっぱりウチは何か異常ね」
「さっそく2人で開けちゃってよ」
「わぁ、いいひょもか!? それじゃあ遠慮なく~」
何勝手に仕切ってんだよ。ほんと女前にしたコイツ気色悪いな。
「……私は別にカードゲームなんて興味ないけど、仕事で来たんだからね。キャリアよ。キャリア」
そう呟きながらも視線が段ボールから外れていないが。
そんな緑沢を尻目に黄谷が段ボールを開封する。
「わお、こんなに沢山! これ全部好きにしちゃっていいやつひょも?」
「うん、そうだよ。この中のやつは全部開けちゃって大丈夫!」
いや全部はダメだろ。
「なーんであんたが偉そうにしてんのよ。考案したのはこの干物なんでしょ」
「えっ……あ、うん、そうだけど……でも僕も文空家で泊りで考えたり……」
草。
「まぁまぁ、みんな頑張ってるひょも~……わぁ~これは私のプレイマットひょもね~かわいいひょも~」
カードの他にも多数のグッズも作成されている。
今回はスリーブ、プレイマット、デッキケースの3種類となっている。これらもファンに喜ばれる品だろうと思い結構な数用意がある。
「これが私のね……ああ、素晴らしい。神よ神」
同じく自分がデザインプレイマットを崇める様に見つめる緑沢。
「いい絵だよね、こ――」
「でしょー!! これを描いて下さったのは、暗笑ねずみさんって方でね……ほらこの方なんだけど、もぅとーーーっても、てえてえ絵を描くお方なのよーーー!!」
自分のスマホの画面を見せ説明する緑沢。何故オタクは自分の好きな物となると、聞いてもいないのに勝手に早口で説明し出すのだろうか。やけに興味を示していたのはそのせいか。
「へぇ~サイケデリックなタッチで個性的な絵だね。こういう感情を刺してくる様な絵見ると、思わず一時停止して解釈を始めちゃうよね」
「深み理解してるじゃな~い! まだフォロワーは約1万しかないけどいつかテンペツ取るわよこのお方は! だから今の内にフォローしとくのよ!」
この学園での仕事内容を外部に漏らすのは禁止行為なのでキャリアにはならないが、その分報酬は弾むらしい。一体幾ら貰ったのだか……。激務だったろうからそれが報われる程だといいが。
「この表紙の絵もえもいひょもね~」
次々と商品を手に取る黄谷が次に着目したのはカードパックの表紙だった。いつの間にボックス開封してやがったのか。
本来であればカードゲームのパックの表紙はそのパックに封入されているカードの目玉カードであるパターンが殆どだが、この表紙はこの為だけの描き下しとなっている。
これは別に此方が頼んだのではなく、向こうで勝手にやってくれた事なのだが、学園側も力を入れてくれているのが伺える。
一方でボックスは文字がプリントされただけの真っ白なものでコストカット。企業努力も伺える。
「あっ、開けるのにハサミが必要だね。僕が持って来――」
「ほらよ」
「あ、ありがとうご、ひょも~」
口調の使い分けは大変そうだな。
瑛介は『クソが』という顔で俺を睨む。ハサミは2つ持ってきたので――
「ほらよ」
「……私も開けるの?」
めっちゃ開けたそうにしてたじゃねぇか。かと言ってそれを直接言うと拒むだろうし、どうしたものか。
「どっちがいいの出せるか勝負するひょも~」
「ふ~ん、そういう事ならいいわよ! SSR500枚出してあげるわ!」
「負けないひょもよ~!」
流石は黄谷。気が回る。
カードにはレアリティが存在し、ノーマル、SR、SSRと主に3種となっている。……主にな。
「それじゃあ1パック目いくひょもよ~」
緑沢の準備が終わったのでさっそく1パック目の開封が始まる。
「中のカード切るなよ」
「はいひょも」
パックの上部を豪快に切ろうとした黄谷に警告を入れる。それに対し緑沢は下部を細く切りカードを取り出す。
「……っ!? さっそく光ってるやつよ! これはどうなの!?」
光り物を当てて興奮を隠せない緑沢。だが――。
「残念だがそれはSR。1パックに必ず1枚は入ってる」
「――あっそ」
1パック6枚入りで最後の1枚には必ずSRが入っているので凄くもなんともない。ちなみにSSRは3パックに1枚の確率で入っている。つまり1ボックス15パックでSRが10枚、SSRが5枚手に入る様になっている。で、SRは16種類、SSRは7種類あるので2ボックス買えば確率上全てのカードをコンプリートできるようになっている。これはカードゲーム界全体で見ても優良といえる封入率であろう。まぁ、1デッキに同じカードは3枚まで入れられるので、3枚入手するとなるとこの限りではないんだがな。
「わぁ~これ凄い光り方してますー! 凄いやつー!」
あまりの興奮にキャラを捨て去った黄谷。まさかそれは――
「1パック目でレインボースーパースペシャルレアを当てただと!?」
「何よそれっ!」
「およそ3ボックスに1枚の封入率であるハイレアリティカード。RSSRだ」
「えー! 凄いやつ当てちゃったひょもー!」
まずSRはカードが光っている。SSRは名前が金色になりSRよりも輝いている。そして、RSSR。カードはSSRと同じなのだが、SSRよりも更にえげつない光り方をしている。
3ボックスに1枚と希少だが、折り紙の中に1枚だけ入ってるやつみたいなギラギラ光りしている為、当てた時の興奮はとんでもないだろう。現に黄谷は席を立ち飛び跳ねている。
「しかも自分のカードで出しちゃうなんて……」
「うるとらひょもひょもばーすと!! ひょもー!!」
カード名くらい真面目に考えてほしいものだな……。SSRカードの名前はアイドル本人が考えたものとなっている(ただし藍坂以外)。
まさか1パック目でRSSRを、しかも自分のカードで引き当てるとは、黄谷の運、恐るべし。
「ふんっ。なら私はそのRSSRを1000枚当ててあげるわ」
それは無理だろう……。
――開封の儀を終えて。
「や~初めてパック開封したひょもけど、ワクワクして楽しかったひょも~!」
楽しそうにパックを開封する黄谷を見て俺は少し心が安らいでいた。なんせ大金が掛かった大企画。失敗のプレッシャーを背負っていたが、これなら楽しんでもらえるという確信がより形と成った気がした。
「…………」
「そういじけるなよ緑沢。お前だってRSSR出ただろ」
「なんでよりによってアイツのカードなのよ! 最悪っ!」
RSSRを当てたはいいが、よりによって宿敵柴崎のカードを当ててしまった緑沢。テンションが黄谷とは
雲泥の差だ。
「じゃあ本人に渡しておくか?」
「嫌よ。あの方が描いた絵ですもの。手放す事なんてできないわ。――というかあいつの絵もあの方が描いてる事が気に入らない!」
机をバタバタ叩くな。
「まあまあ落ち着くひょも」
「だって~」
「まぁ勝敗は同点なんだしね?」
「私の大敗よ! いいわ。私は負け犬よ」
とことん面倒な女だな……。
まぁ開封も終わった事だし気にせず本題を切り出すとしよう。
パンッと手を叩き、視線を此方へ向けさせる。
「じゃあ仕事についての説明に入らせて貰うが、今回2人にして貰いたいのは事前にも話したが対戦動画の撮影だ。予め送付したルールガイドには目を通したか?」
「ええ、一応目は通しましたが……」
「私達はカードゲームなんてやった事ないから、ちゃんとできる自信はないわね……ってさっき2人で話してたわね」
「それでいい。初々しい方が返って初心者にも伝わり易いんだ。例えばプレイ中にも互いにルールを確認し合ったりすれば、それが視聴者にも伝わる訳だしな」
「まぁ事前にある程度は練習しとくけど……というか収録はいつなのよ?」
「はぁ? そんなのこれからに決まってるだろ」
「「えええええ!!」」
驚く2人に俺も驚く。ええ……なんで? そう言ったじゃん。
「僕は今日撮るっていうから色々準備してたけど、2人に言ってなかったのかい?」
「いや、言った筈だが……」
「放課後開けといてくれとしか言ってないわよ!」
言ってるじゃん。
「いや……それじゃあね……」
「そうひょも。軽く時間開けといてほしいってニュアンスだったひょもから、てっきり打ち合わせだけかと思ったひょも~」
「そうよ。アンタどんだけ常識ないのよ。普通、人を長時間拘束するなら事前に詳細を伝えとくべきでしょ! しかも私達はかの有名な流創アイドルなのよ。アンタらみたいな暇人のスケールで図るんじゃないわよ!!」
「すいませんでした」
アイドルの業界は奥が深いな。
「それで実際、2人は今日の撮影は難しいのかな?」
「……できない事もないけど」
「私は大丈夫ひょも!」
「じゃあやるか!」
「アンタ反省してんの!?」
「仕方ないだろう。夏休み前までにはアップしたいからな。編集の時間も考えると今日でなきゃしんどい」
夏休みになってもここに来る生徒は多いが、それでも登校日に比べたら来る人数は減る。初動は大切にしたい。
「今日撮れば投票日までにアップできるの?」
「ああ。元よりそのつもりだ。かなりギリギリだから保証はできんが」
「……分かった。じゃあ受けてあげるわ」
「それは有難い」
良かった。予期せぬアクシデントが発生したかと思ったが、どうやら暇だったようだ。
「じゃあ私はなんのデッキ使えばいいひょも?」
「好きなデッキ組んじゃ駄目なの?」
「今回はスターターデッキ同士でやってもらう」
「――ちっ」
緑沢がそれを嫌がる理由は察しが付く。
「だとすると私はどれひょも?」
「まぁ緑沢は自分のデッキとして、残りの2つ好きな方を選んでくれ」
「分かったひょも! じゃあ……私はこの、ママとななみちゃんのやつにするひょも!」
「……随分と決断が早いな」
「ママに私のカードをキッチリアピールしてねって言われたひょも!」
「成程な」
3種類のスターターデッキはアイドル2人が抱き合わせとなっている。本当は7種出せるのが理想だったが、流石に金銭的に厳しいだろうし、そもそもこのカードゲームはアイドル1人で戦うのは強い戦法とは言えない。故にこれが合理的と言える。
ラインナップは、藍坂と橙田、青松と赤宮、そして、緑沢と柴崎。緑沢が嫌がっていたのは柴崎のカードを使いたくなかったからだろう。
黄谷をこの中にラインナップさせなかったのは、そこに戦略があるからだ。
「もうぶっつけ本番な訳? 今日はなんもないと思ってたからメイクも碌にしてないんだけど」
「それは大丈夫だ。メイクさんの人を手配しておいた」
「そういう処は抜けてないのね」
「教育の賜物です」
人は怒られて学ぶ。
「こちらも色々とする事があるからな。撮影は16時頃を予定してる」
「どんだけ拘束するつもりなのよ。今14時にすらまだなってないんですけど」
「18時には終わる予定だ」
「……もうツッこむの疲れたわ。かこむ、今度しっかり教育しときなさい」
「文空君は物事を捉えてる様で、常識的な部分はズレてるひょもよね~」
そうだったのか……。
「うん僕もそれは分かる……」
「まぁその話は置いといてだな……とりあえず二人には時間までそのデッキで事前に軽く対戦をしていておいてほしい」
「まだ結構時間あるけど?」
「15時位まででいい。俺が横からアドバイスしつつ、撮影の流れの説明をする」
いくら初々しさを撮りたいとはいえド素人では撮影のテンポは悪くなるだろうから多少の予習は必要だ。
「僕も――」
「お前はスタジオのセッティングを手伝うんだろう。もう行っていいぞ」
「……あっ、うん、そうだったね」
下心は見せれまい。正直コイツがいても邪魔なだけだから除外するに限る。
「頑張れひょも~!」
「うん頑張るよ!!」
応援してもらえてよかったな。
そのお陰か瑛介は軽やかな足取りで教室を後にする。
「よーし、じゃあみつなちゃん、さっそく対戦しましょう!」
「いいわよ! ねじ伏せてあげるわ!」
さてと、これから忙しくなりそうだ。




