EX2 流創カードゲーム 前編。
久々なので本編に手を付ける前に短編でもやるか~となったのでいつかやりたい思っていたカードゲームネタ編を引っ張り出しました。
書く前は体感1万文字位でしたが、馬鹿なので3万文字位になったので対戦よろしくお願いします。
GW開けの登校日。その放課後。勤勉にも部活動に打ち込む俺は、腕と足を組み椅子に掛ける。
人の身体は連休明け初日の場合、疲労の蓄積が20倍になるという研究データがある。特に俺の場合は人よりも疲労を蓄積し易い体質、と体感している……のだが、不思議と今はあまり疲労を感じてはいない。錯覚……なのだろう。なんせ3時間しか睡眠を取れなかったのだからな。
では何が俺を錯覚させているのか。覚えはある。それは心の躍動だろう。……その正体は下らない物だ。なので『不本意ながら』、と前置きを付け加えたい。
持ち込み企画。俺は現在、それを第二者への発散の機を伺っている。別に相手の表情を伺ってるとかではなく、ただ疲れが抜けるのを待ってただけなのだが、それももう十分だろう。
そろそろいいか……体勢を整え、身体を伸ばし、大きく欠伸をする。すると、丁度よく前方の奴が此方へ呆れ顔を向けてきたので打ち明けるとする。
「……なぁ瑛介、企画を考えてきたんだが」
「なんだよ藪から棒に。僕は忙しいんだから壁とでもやっときな」
連休明けだからなのか、いつもよりも張り切って新聞制作に取り組んでいた瑛介は、心底嫌という気持ちを顔面で表現する。こんな顔、冷蔵庫で賞味期限の過ぎた牛乳を異臭きっかけで発見した時くらいなものだろう。それが人に向ける顔か。
「いいから一旦手止めろや」
「おいパソコン閉じるなよ。普段なんもしない癖に一人前に我を通そうとするなよ」
「心配するな。アイドルに関する企画だ」
「聞こうか」
はい、いつもの流れ。本来なら俺が持ってきた企画ならすぐに黄谷に関する事と結び付けていたのだろうが、この前の松屋のカルビソース甘口は何にでも合う説。という企画を現地に呼ぶまで明かさなかったのが尾を引いているのだろうか。
まぁ無事に瑛介の了承も得れた事なので、さっそく切り出す。
「今回考えてきたのは、カードゲームだ」
「カードゲーム!? まさか、アイドル達のカードゲームを考えてきたのかい?」
「ああそうだ」
その返答を聞いた瑛介の瞳に火が宿るのを感じ取る。やはり食い付くと思った。
「……まさかGW中にずっとそれ考えていたのかい?」
「……まぁな」
連休中にもアイドルコンテンツの提供は行われるのでマネージャーの仕事こそあるが、別に学園に直接赴かなくとも企画の考案、打ち合わせはできるからとにかく暇だった。別に俺は学園に行っても構わなかったが黄谷が連休は休めと遠慮した。
「流石はひ――文空だね!」
暇人って言おうとしたな。しょうがないだろう。飯を食う時くらいしか外に出る用事がないのだから。
「うちはこの手の属性の奴が多いからか流行ってるしアリだと思ったんだ」
この学園の生徒の大半はオタクしかいない事もあり、休み時間になればカードを広げ遊んでる生徒は多く見受けられる。今回はそこにターゲットを向けた。
「確かにいい着眼点だね。カードであれば遊ぶだけじゃなくて、コレクションとしての価値も高いからね」
「ああ。オタク共から金を巻き上げるいいマネジメントと見た」
「言い方……。ならカードイラスト用の写真の撮影は是非とも僕に任せてくれ!」
下心。もう少しは隠す努力をしろ。
「まぁそれは後々としてな。お前にはカードバランスの調整に付き合ってほしいんだ」
「うんいいよ! 付き合ってやろうじゃないか!」
もっぱら目当ては撮影なのだろうが、まぁ付き合ってくれるのであれば何でもいい。ちなみに撮影の可能性は極めて低い事は黙っておく。
「それじゃあルールを説明してよ! つまらなそうだったらリコール案件だからね」
「ああ。感想はハッキリ言ってくれると助かる。ちなみにカードゲーム経験はあるのか?」
「……うーん、中学1年位まではやってたかな。遊戯王とデュエマね」
王道物だな。ちなみにこの2つとポケモンカードを合わせ、日本では3大カードゲームとされている。
「十分だ。ちなみに今回考えてきたのは、どちらかと言えばデュエマに近い物になってる」
「へーそれなら分かりやすそうでいいね」
――で、さっそく説明に入る訳だが、どこから説明すべきか。とりあえず鞄からテスト用に作ってきたカードを、ダバダバっと机に広げる。
「うわっ、そんなに沢山!?」
「そりゃそうだ。カードの種類が少ないと自由さも落ちるし、戦略性も浅くなる」
カードの種類が約100種程あり、それが各3枚あるから相当な分厚さだ。カードの紙はダイソーで買った厚紙にテキストを印刷した紙を貼り付けた物だ。しかも、厚紙を綺麗に切る事に拘ってしまい、その為だけにペーパーカッターを買ってしまった為に結構な投資額となった。
瑛介はそんなカードを眺め、
「うわっ雑だなぁ……」
「テスト用なんてそんなもんだろ」
雑に文字が並んでるだけなのだからその感想は真っ当だろうが、テストカードなんて当人が理解できてりゃそれでいいのよ。
「この左上の数字はコストかな?」
「いや。ファンだ」
「はい?」
「そのカードの場合は4Fだから4ファンがあると使える」
「いや、だからファンって何よ?」
「そうだな。まずそこからだな。このカードゲームはファンの数で勝敗を競うゲームになっている」
「え、何それは」
「アイドル同士で殺し合いをするのもなんだからな。アイドルならではの勝敗としていい落しどころだろう」
「殺し合いって……。で、そのファンはどうやって集めるんだい?」
「ふむ。まずそれを説明する前に、カードの種類ついてだが、アイドルカード、アクションカード、アイテムカードの3種類がある」
略称の為にアイドルカードならAカードにしようと思ったが、全てAで始まる事に後々気付いた。
「へぇ~トラップカードはないのかい?」
トラップカード。相手のターンに発動でき相手の行動を妨害するカードの事を指すが、このカードゲームには、そういった要素はない。
「相手のターン中に行動できる要素はなくした。そういった要素があると複雑になっていくからな。今回はシンプルに理解し易くして、より多くの奴らに触れさせるようにした」
「ん~、うちの生徒だけがターゲットなら、カードゲーム慣れしてる人多いんだし、戦略性は深い方がいいんじゃないかな?」
「別に全員がやってる訳でもないし、何より調整が面倒だろ」
「そりゃそうだ」
仮に販売まで漕ぎ付けようが、次のパックを出すとなればこれからも調整をしてくのは俺達2人だけとなるだろうからルールはシンプルに限る。あと――
「売り上げの為に多くの奴を引き込みたいのもあるが、それを差し置いた最大のメリットがあるんだが……分かるか?」
「えっ……それは……」
「アイドルに直接プレイさせるマーケティングがやり易いって事だ」
「ああ成程! 確かにアイドル達が実際にやってたら自分もやりたくなっちゃうね! だからカードゲームにも疎い女の子でも理解し易くしたんだね」
「そういうこった」
多忙なアイドルに此方の都合であまり時間を割かせる訳にもいかないからな。
それにカードゲームオタクはゲームプレイの上手さについても五月蠅い。少しでもミスをすればすぐに指摘をしてくる。本人は親切のつもりだろうが、指摘される側はストレスにしかならない訳で、そういった公害を軽減する為でもある。
「流石文空。狡猾だね」
こいつは一々嫌味を言わないと気が済まないのか。
「で、ルール説明に話を戻すが、まずアイドルカードは各1名1種類しかない」
「え~、アイドルカードは沢山あった方がいいでしょ」
「まぁ聞けって。次にアクションカードだが、これがこのカードゲームの大半を占める物となっている。アクション。いわゆるアイドル活動だな。これでファンを増やしたりする訳だ。アイドルのイラストもここで養う」
「ああ、それなら良かった」
「で、アイテムカード。アクションカードは使用したら墓地へ送られるが、アイテムカードは場に残り続け恩恵を発揮してくれる物だ」
「永続カードみたいなやつだね」
「そしてようやく、このゲームの鍵を握るファンが出てくる訳だ。ファンはこのFカードを指す」
「Fって雑だなぁ」
カードの中心に大きくFと書いただけのカードとなっている。もし製品版が出るならもっとまともなデザインにする。学園の人が。
「このファンカードは自分のターンが来る毎に1枚場に置く。ファンカードはこのゲームでいうコストの働きをする。他にも、アクションカードで増やしたり、相手のFカードを減らしたりもできる。いわゆる奪い合いだ」
「へぇ……妙にリアリティがあって面白いじゃないか」
「いいアクションをすれば相手のファンが寝返る。アイドルのドロドロさを忠実に再現している」
他にも大きいアクションをする為には、ファンがより必要という解釈も我ながら気に入っている。
――とまぁ、一通り説明したがまだまだ頭の部分。さて、ここからどう説明するか……企画書なんて書いてないので一度ルールを整理し、未説明部分を洗い出し脳内企画書を組み上げる。相手は瑛介なのだから、適当でええわな。
「……デッキは40枚固定でアクションカードとアイテムカードのみで構成される」
「えっ、アイドルカードはどうなるんだい?」
「アイドルカードはまた別のデッキとして端にでも置く。デッキはアイドル1名1枚まで。ゲームスタート時に好きな1人を場に出す。アイドルカードにコストの概念は無いが、全員固定で3Fを使う事で場に出せる」
「へぇ~、じゃあ7人並べる事もできるんだ」
「できるが、メリットが無さすぎるからただの舐めプだな。アイドルカード自体には効果なんてないからな」
「それじゃあ特定のアイドルがいないと使えないアクションカードとかあるんでしょ?」
「ご名答。使えないなんて事はないが、様々な恩恵を受けれる様になる。効果が強力になったりな」
「特定のアイドルがいなくても使えるって事だね」
特定のアイドルしか使いたくない、という奴もいるだろうからな。そんな奴でも好きなカードを使える様にする為の配慮。
「まぁ、こんな形にしたのは、何よりテキスト無記載な方がコレクションとしての価値も高いだろ」
パンッ。とハイタッチの音が響く。
「この手の物はアイドル毎に特性があったりするやつでしょ?」
やはり経験者だけあって目の付け所がシャープだな。説明も円滑に進むってもんだ。
「ある。例えば黄谷であれば、潤滑油的な役割がある。ドローや特定のカードをデッキからサーチしたりな」
「……考えたね。なるべく多くのデッキに採用されやすい用にしたな?」
「ふっふっふ。なんの事だかさっぱりだな。自分の担当するアイドルだからとはいえ特別扱いはしないさ。皆平等さ」
「うん、もうそこには触れない様にするね。じゃあ、ななみ様は?」
「守り」
「らいなちゃんは」
「行動抑制」
「ゆいかちゃんは」
「ファン加速」
「みつなちゃん」
「破壊」
「みゆきちゃん」
「いやがらせ」
「やずるママ」
「パワー」
「色々とおかしいだろ!」
「何がだよ」
「何もだよ」
「例えば?」
「じゃあまず嫌がらせって何さ。というか行動抑制と何が違うのさ」
「赤宮にぴったりのテーマだろ」
「ファンのみんなはそんな印象持ってないから。ただの風評被害じゃないか」
「真の真実だろ。行動抑制とは差別化してある。はい次」
納得のいかない様子だが続ける。
「……パワーって何?」
「力だよ」
腕を曲げて力こぶを叩き表現する。これなら分かり易いだろ。
「そうじゃないよ。てか今までの説明聞いててパワーの要素が観測できなかったんだけど。そもそもやずるママがパワーなのがおかしいし」
「アレこそ力の象徴だろ。パワーはとにかく数字が大きくてストロングな戦い方が特徴だ」
「それは特性って言うのかな……」
「まぁ、やってく内に理解するさ」
「うーん……まぁ今は開発者を尊重するよ」
「それでいいのだ。これで一通りは……あぁ、後1つ」
「まだなんかあるのかい」
「アクションカードには起死回生ってワードが記載された物がある。これは自分が特定の行動をされた時に更なる効果を発揮する。例えばこのカードはコストが2Fで1枚引くだが、起死回生状態なら更に1枚引く。って効果が追加される。――と、こんな感じに駆け引きの要素も付け加えてみた」
これによって何の考えも無しにファンを減らす行動が躊躇われる訳だ。これによって戦略性が生まれてくれるといいんだが。
ちなみに、起死回生時でない場合は通常のカードよりも効果が弱めとなっている。そうする事により、デッキ構築の幅が広がり、カード種類のかさ増しにもなる。いい事尽くめギミックとなっている。
「なんだよ。結構奥深いじゃないか」
「飛び込んでみないと分からない深さならいいんだ。水位が浅そうに見えればそれでいい」
「うん、やっぱ狡猾」
「当然だ。あくまで商売なんだからな。結果が第一」
――とは言うものの、今回に関してはカードゲームの考案をしてみたかった。という俺の好奇心もあった。俺も中学の頃まではカードゲームが好きだった。景品目当てにカードショップの大会に出たりもしたな。結果は大人に惨敗した苦い記憶だが……。そんな俺も次第にやる相手、というか友達がいなくなり、次第にモチベーションも消滅した。――でも、まだ火は残ってた。それが行動原理だろう。
「よしっ、一通り説明も終わったみたいだし、とりあえずやってみようか。説明聞いてたら実際にやってみたくなってきたよ」
「そうだな。実際にやって覚えるのが手っ取り早い。――だが忘れるな。あくまでバランス調整だからな」
「分かってるさ。でも、さつ……素晴らしい企画の実現の為、頑張ろうじゃないか!」
「おー」
動機がどうであれ協力的なのは頼もしい限りだ。
「――って、最初は何枚引くの? というかファンを何枚集めれば勝ちなのさ?」
やっぱり説明って難しいね。
~ゲームの流れ~
・デッキは40枚。アイドルデッキは7種1枚ずつ計7枚まで。
・まず先行と後攻を決め、お互いアイドルカードを1枚決めて場に出す。
・初期の手札は5枚。ターン開始毎に1枚引くが、先行の最初の1ターン目はドロー不可。
・自分ターン開始毎に1枚Fカードを場に縦にして置く。Fカードはコストとして利用でき、カードによって指定されたコストと同じ枚数分縦のFカードがあれば使用でき、使用後Fカードを横にする。横になったFカードは自分のターン開始時に縦となる。
・最終的にFカードが11枚となったプレイヤーの勝利となる。ただし、11枚目のFカードは縦向きでなくてはならない。11枚目が横の場合ターン開始時に縦になったら勝利となる。




