2章2‐3 涼しい夜に飲むココアは格別だ。
「そ、それじゃあ着替えたら208号室に集合するひょも~」
シラけた空気を遮るよう、黄谷がパンッと手を叩き皆にそう促す。
「あ、おい、放せ」
隙を見て立ち去ろうとした赤宮の腕を再びホールドする黄谷。
「もう諦めるひょも。一緒にコンビニに行く運命を受け入れるひょも」
「もう、わかったから、放せって」
「よし、それじゃあいくひょも! ……文空君も一緒にいきますよね?」
「まぁ一緒に行くだけなら」
アイドル寮のコンビニは利用者があまり多くないからか、広さは駅にあるやつ程度の広さだ。
置いてある商品は主に、菓子、飲み物、アイスなどで、おにぎりや弁当などの生物や冷凍食品は置いていない。
だが利用者が少ない割に、頻繁に商品は補充されるし、商品の陳列も綺麗で新商品も欠かさずに置いてあるし、きちんと『NEW』の文字でポップまで貼ってあり、とても無人コンビニとは思えない手の入りようだ。
勿論、清潔感にも抜かりはなく、内装も新築のように綺麗だし、手動だが扉もある。
そんな扉に手を掛けようとすると、先客が店を出るみたいだったので道を譲る。先程、高咲を無視し立ち去っていった柴崎だ。手にはビニールをぶら下げている。
「お、おう、もう買い物終わったのか」
「…………」
俺の他愛無いない言葉だったが、どこ吹く風かのように無視しされてしまう。
悲しい。なんなんだよ……さっき話掛けて来たと思ったらこれかよ。
「まーたグミひょもか?」
「……うん」
「もう少しカロリーあるもの食べないと倒れちゃうひょもよ」
「……かこむこそお菓子ばっか食べてると太るよ」
「わ、私は大丈夫ひょもよ。カロリーコントロールは完璧ひょも。……今日だって運動したし……」
無視してきた人間が他で仲良く話をしているのを見ると、精神的に来るものがあるな……。
はぁ……気を取り直して中へ入ろう。扉を潜ったら変な音が鳴るのはコンビニっぽいな。
「わーい、おかしおかしー」
柴崎と会話を終えた黄谷が子供のように中に駆け込む。もう1年以上いるだろうに、何故そんなにもはしゃげる。
目をキラキラさせながら陳列された菓子を見つめているその姿は子供だな。
黄谷って普段は静かで大人びた奴なのだが、このように幼い一面も持ち合わせている。
ひょもを前にするとこんな感じになることから、何かをきっかけにスイッチが入ると精神が幼くなってしまうのだろうか。
「ほら、ここに入れろよ」
「あ、ありがとうございます!」
俺は手に持った買い物かごを差し出す。雰囲気を味わいたいが為になんとなく持ってきたものだが、手に抱えた菓子の量を見るからに正解だったのだろう。
「折角ですし、みんなの分も持っていってあげましょうか」
「それ全部食うつもりだったのか!?」
「あーいえ、みんなで食べるって思うとついテンションが上がっちゃって……」
「そうか。複数で集まるのなら適当につまめる菓子があると嬉しいな」
「みんなで食うならポテチっしょ~」
赤宮はLサイズのポテチを手に取り、俺の持つかごへ投げ込む。のりしお味とはわかっているではないか。
「もう~そんな脂っこいものばかり食べてたら太っちゃいますよ」
そういう黄谷の手にはチョコパイが握られていた。つっこみ待ちなのだろうか。
と、そんな調子で他にもかごへどんどんと菓子が詰まれていき、最終的に赤宮がファミリーサイズのコーラ、黄谷が緑茶をぶち込んで、買い物は終了した。……カゴが重い。
無料とは言うが、会計を済まさなければいけない決まりがある。手順はまず最初に無人レジにアイフォンをかざして、あとは商品のバーコードを読み込むだけだ。
黄谷と赤宮は着替えるからと先に自室へと戻っていき、俺が会計を任されることとなったが、さながら俺はその為に呼ばれたのだろうと気付く。
虚しい気持で会計を終え、商品をレジ袋へ詰めて208号室へと向った。
扉を開け中へ入ると、もう既に黄谷と赤宮以外の奴らは来ていた。
藍坂はデスク用チェアに足を組んで座っていて、柴崎は部屋の隅で先程買ったであろう菓子を食べている。この2人は相変わらず集団の輪には入ろうとしないな。
その他の3人はテーブルを囲って座っている。橙田は正座、緑沢は女座り、青松はあぐらをかいている。
こういった自由な場だと、それぞれの個性が出て面白いな。
「ちょっと、なに馬鹿みたいに菓子ばっか持ってきてんのよ。遊ぶ為に集まった訳じゃないのよ」
「一応言っておくが、これは黄谷と赤宮がカゴに入れたんだからな」
そう促し俺はテーブルの上に菓子をぶちまけ、ファミリーサイズコーラとお茶をドンッと置いた。
「おお、ちょうど走った後で小腹が空いてたんだよな~。じゃあ、いただくぜ」
「おう、好きなだけ取れ」
青松はさっそく煎餅に手を伸ばす。塩味でシンプルな煎餅だ。
「別にあんたの金で買った訳じゃないのに偉そうに……」
「ここまで運ぶのは大変だったんだぞ」
「たかだか2階じゃない――あっ、ハバネロスナックあるじゃない。流石気利くわね」
結局食うんかい。
「それじゃあ、コップを持ってこないといけないわね」
橙田は立ち上がり、コップを取りにキッチンへと向かっていくと、
「ねえ、紙コップってどこにしまったか覚えてる?」
「確か2番目の引き出しにあった筈よ」
「2番目だけじゃわからないでしょ。左右上下までしっかりと教えてよ」
「上段の左から2番目よ」
「はーい……って、何も入ってないじゃないの!」
「それじゃあ、次は下段の右から2番目よ」
「それじゃあってなによ。当ずっぽうなら自分で探すからいいわよ」
「いいから私の天性の勘を信じなさい」
「今外したばっかでしょ、もう……」
「――下段の右端よ」
下らない口論に間が指したのか、藍坂の仲裁が入る。
藍坂は嘘をいうタイプではないからか、橙田は疑うことなく棚を開ける。
「あ、本当だ。流石はななみちゃんね」
どうやら本当に入っていたようだ。藍坂がそんなこと把握しているなんて少し面白いな。
戻ってきた橙田は机に紙コップを並べてくれたので、俺はお茶の蓋を開けてコップに注ぐ。俺と黄谷はお茶だからとりあえず2つだけ注いで、と。
「お茶飲みたいのいるか?」
他に緑茶派がいないかを問うも、緑茶を希望したのは橙田のみだった……が、1つ忘れている点があったので。
「藍坂は緑茶でいいか?」
「ええ、それで結構よ」
やはりそうか。直々に聞かないと返答しないとか面倒な奴め……。
という訳で、緑茶を2つ注ぎ、消去法で残りのコップにコーラを注いでいると、
「黄谷かこむ着丼ひょも~!」
「おいーっす」
制服に着替え終えた丼ぶりと赤宮が合流する。これで会議を始められるようになった訳だが――
「よっこらっせっと」
赤宮は部屋に入るなり、押入れから布団と枕を取り出し、それを部屋の隅に引き寝そべりだす。なんという体たらくだろうか。俺でもここまで酷くないぞ。
しかも、そこから更にスカートを脱ぎ捨てる暴挙に出る。Yシャツで汚いとこは見えていないものの。場を弁えてほしいものだ。
「ふぃ~~~、おーい干物~、コーラとポテチとれや」
「みゆきちゃん。男の子がいるとこでそんなはしたない格好するなんて、デリカシーが欠けてるわよ」
「だいじょぶだいじょぶ~短パン履いてっから~」
赤宮は尻をパンパン叩き主張する。うむ、最早女としての自意識が欠落しているな。
「布団の上でポテチなんて食ったら染みになるだろうが」
「うっせーぞ干物。はよよこせ」
何を言っても無駄だと察し、俺はポテチとコーラを差し出した。もうどうにでもなれ。
一方で黄谷もテーブルには来ず、隅っこに座っている柴崎の元へと向かっていた。
「もう、またそんなグミばっか食べて。今日も食堂に来てなかったひょも」
「これがごはん」
「グミはご飯じゃないひょも!」
「おなかふくれるもん」
「そういう問題じゃないひょも」
柴崎は小さな粒のグミを1つ1つちまちまと食べていた。
あのグミ美味いんだよなぁ。味がフルーツとソーダの2種類あって、今柴崎が食べているのはフルーツ味の方だ。俺はソーダ味の方が好きだな。
容量が多いから、ああやって1粒ずつ食べていれば咀嚼法により満腹感が得られるのだろう。
「しっかり食べて栄養取らないと体壊しちゃうし、熱量を取らないといい声も出せないひょもよ」
「練習のときは問題ないし、大事なときは食べてるから大丈夫」
「だいじょばないひょも! そんな偏った食生活送ってたらいつか倒れちゃうひょも」
「大丈夫ったら大丈夫。それに、私が何をたべようと私の勝手」
「もう聞き分けのない子ね。――くわぁぁぁぁぁぁっ!」
「きぃぃぃぃぃぃ!」
こんなとこで威嚇合戦するな。
「もぅ……それじゃあなんか食べたいものあるひょも? 私がなんか作ってあげるひょも」
授業中だぞ。
「……タピオカ」
「前にみんなで新宿で飲んだやつは美味しかったひょもね~。でも、タピオカはご飯じゃないひょもね~」
「じゃあ何もない」
タピオカか。そういえば前にSNSで業務用スーパーのタピオカが話題になっていたな。それを勧めてみるか。
さっきは聞こえていなかっただけかもしれないし、リベンジも兼ねてな。
「タピオカなら業――」
「うるさい」
「ごめん」
泣きたい。
「……んで、今日は体育祭の出し物決める為に集まったんじゃなかったのか?」
メンタルリセットの為に本題に入ることにした俺。
「そうね。さっさと始めちゃいましょう。前みたく長引くと困っちゃうから」
「そんな縺れ合うもんなのか?」
「私達はみんなそれぞれでしたいことはあるけど、それ故にみんなでしたいことが合致しないのよ」
「成程な。で、今回は応援合戦で何をするかを決めるんだったな」
俺は常備しているメモを取り出し、ページの見出しに『応援合戦の出し物』と書く。
「もう、まとめるのはお母さんの役目なのに~」
「ああ、すいません。じゃあどうぞ」
「でもせっかくだから今回は譲ってあげる。さぁ、進行ちゃって!」
なら黙っとけや。
「……んじゃあ、まずそれぞれしたいことを述べてみてくれ」
基本的にまずそれぞれの希望を挙げてもらい、そこから体育祭での適合性や、面子的に実現可能かどうかを考えながら絞ってくのがセオリーだが、先程の話を聞くからにそんなテンポよくいくかどうか……。
「緑沢はどうだ?」
「ロックで刺激的ならなんでもいいわ」
「橙田は?」
「私も母性を発揮できればなんでもいいかしら」
「青松は?」
「オレはリレーの為に体力を温存したいから極力体を使わなくて、でもって、怪我のリスクがないものならなんでもいい」
「そうですかい」
それぞれ抽象的すぎるだろ。その全部を満たす出し物なんてあるのか。
しかもまだ半分も到達してないんだが。一体残りはどうなるのか。
「藍坂はどうだ?」
「醜く争うつもりはないから好きにしなさい。気に入らないなら参加しないだけだから」
意外にも低姿勢。こいつが一番のネックになりそうだと思ったのだが。
「柴ざ――」
続いて柴崎に振ろうとしたが、黄谷に膝枕をされてすやすやと寝息を立てていた。急に静かになったと思ったら……フリーダムな奴め。
「黄谷は?」
起こさぬよう、声のトーンを落として聞く。
「ひょもいやつで」
「了解」
王の権威を守りつつロックで刺激的で母性が発揮できて体力を使わずにできるひょもいやつ、と。
うむ……難易度どうのこうの以前に意味不明だ。
「おい干物、なに私をスルーしてんじゃ」
「お前にしたいことなんてないだろ」
「あ、あるわボケ。私はな……しないことをしたい!」
「はい。という訳で全部集まった訳だが。――誰1人としてしたいことなんてねぇじゃねぇか!」
こんな意味不明なことになったのは、したいことに具体性がないから他ない。
「この前みたいに揉めるくらいなら、他に譲ろうって考えだったわね」
「こんなことになるならちゃんと考えておくべきだったわ」
「オレも同じ考えだったぜ。へへっ、案外気が合うのかもな。オレ達って」
これが集団性心理というやつか。前のみたく揉めぬようにと全員が何も考えてこなかったと。
「なんなら始めから聞く必要なんてなかったな」
俺はメモ用紙をちぎって丸めてゴミ箱へと投げ込んだ。
「ちょっと、なに役割放棄してんのよ」
「放棄というか、もう会議は終わりだ。そもそも、話し合う必要なんてなかったんだ」
「はぁ?! どういうことよ?」
「皆でやりたいことがないなら、個人でそれぞれ課題を決めて、1人ずつなんか見せ物すりゃいいだろ」
「おお、いいアイディアだなそれ!」
「確かに、それなら揉めることもないから安心ね」
「だろ。一応、何するか決めたら学園側に相談しとくんだぞ」
乗り気な意見が多数見受けられたのに対し、
「なによ個人で見世物って。あくまで応援だってこと忘れてない?」
否定意見を挙げる緑沢。まったく面倒な奴め。
「そうだな…………なら、こんなのはどうだ。個人ですることを何か難しい課題への挑戦にするんだ」
「課題の挑戦って、さっきと変わらないじゃない」
「最後まで聞け。――で、その課題に成功したら、なんかいいことが……」
「いいこと?」
いいことがあるじゃ弱いな。うーむ…………っ!!
脳内に閃きの電流が流れる。これだ。
「成功したファンの推しは体育祭での健闘運が良くなりますってのはどうだ!」
「……ふっ……」
俺のアイディアが馬鹿馬鹿しかったのか藍坂が鼻で笑った。
我ながら凄くしょうもないことに思考リソースを割いてしまったと思う。
「どうだ。これなら一応、応援って体を成してるだろ?」
これなら緑沢も文句はなかろう。
「……馬鹿みたいなアイディアだけど、この学園らしくていいんじゃない」
馬鹿は余計だが、面倒な関門は突破できたみたいだ。
「それじゃあ、会議はこれで終わりってことでいいな」
「なーにやり切った感出してんのよ。課題だって私達が考えるんだし。結局他力本願じゃない」
もう緑沢が鬼姑に見えてきた。先程、柴崎に煽られた(自爆)せいで機嫌が悪いのだろうか。
「これが最適解なんだから仕方がないだろ。それどころか、個人でしたいことが出来るんだから、寧ろ有難く思ってほしいものだな」
「それ自分からそれいう、普通?」
「まぁいいじゃない。円滑に決まる以上のことなんてないわ。お母さんもそのアイディアは賛成よ」
「オレも文空の意見に大賛成だ。自分でしたいこと決められるなんて最高じゃねぇか!」
「藍坂はどうだ?」
「……異議なし」
「黄谷もこれでいいか?」
「勿論ひょも!」
寝ている柴崎の手を振り、承諾の意を示す。
「よーし、じゃあこれで解散だ!」
「おーい、私にも確認取れよ干物」
という訳で会議は即終了し、残り時間は各自各々自由に過ごした。
☆
その日の午後22時。アイドル科寮は消灯時間を迎える。
消灯時間までいたのは初めてだが、ロビーはまだ全然明るいんだな。オレンジっぽい色の照明が主体となって照らすようになり、落ち着いた雰囲気へと変わっている。
俺はそんなロビーのソファーでアイスココアを啜っていた。この涼しくて落ち着いた雰囲気で飲むココアは乙なものだな。
そんな新たな出会いを堪能していると、コツコツと階段を降りる音が無人のロビーに響く。
階段の方に視線をやると、その音の主もこちらに気付き、目が合う。
「わっ、文空君、なんでいるんですか!?」
「そろそろ来ると思って待ってたんだ」
「そうじゃなくて、なんでこんな時間にいるんですか?」
「そりゃ、1人でトレーニングは心細いだろうと思ってな」
「うっ!? ……あ、あははー。やっぱバレちゃってたみたいですね」
「当たり前だろ。青松があれだけ熱心に取り組んでんだ。なのに、お前が何もしない訳がない」
リレーは連帯責任。他がどんなに速かろうと自分が遅ければ敗北する可能性は増す。なのに、仲間想いの黄谷が運動は不向きだから、で済ますとは到底思えない。
「でも、それならどうして事前になにも伝えてくれなかったんですか?」
「伝えたとこで、しないと嘘を言うだけだろ。お前もまた俺がこうすると読むだろうからな」
走り終えた後に、他の部分で挽回できるよう頑張るひょも~と主張していたのは、他の仲間に気を使わせない為だろう。
同調圧力。ただでさえ青松が張り切っているというのに、そこから更に黄谷まで熱心に練習しだせば、次第に何もしないことが悪みたいな風習が生まれ、他の奴らに位心地を悪くさせてしまう。
だから、トレーニングをすることは誰にも知られないようにしなければならない。
そうなると、できる時間は必然的に限られていき、深夜か早朝しか選択肢はなくなり、更に青松は早寝早起きで朝の5時には起きてランニング始めるそうなので。つまるところ、深夜にするしかないという訳だ。
「これは私が勝手にしてることです。なのに、文空君まで巻き込む訳にはいきませんよ」
「担当アイドルが寝る間も惜しんで頑張ろうとしてるんだ。なのにマネージャーである俺がスヤスヤ眠る訳にはいかないだろ」
黄谷はいつも11時には寝るという。故に、この時間からトレーニングをするのは睡眠時間を削るということだ。
しかも寝る前に運動だなんて大変だろうにな。
そこまでしてるのを尻目に睡眠なんざする訳にはいかない。というか落ち着かずに眠れんだろう。
「でも、トレーニングなんて1人でできますし……」
「そうか。わかったよ……。あーあ、折角走りについての知識を付けて、トレーニングメニューまで考えといたのに、無駄になっちまったな~。あ~あ~。ついでにスポドリも買っといたのにな~。あ~~~」
「もう……。わざとらしいですねぇ」
「安心しろ。今日から暫くアイドル科関係者寮に泊まるから、俺のことなんて気に掛ける必要はないし、そもそも、これもまた俺が自ら進んでしてることだ」
「……やっぱ文空君は1度決めたら折れてくれませんよね――では、そうと決まったのなら一緒に頑張りましょうか!」
「いや、頑張るのはお前だけだろ」
「いいえ。どうせなら文空君も一緒にトレーニングしましょう!」
「待て、俺が鍛える意味なんてないだろう」
「そんなことないです。徒競走で1位を取って私に襷を貰いに来てください!」
「……お前、さっきと言ってること逆じゃねぇか」
運動なんてできればしたくないんだが……。
「というか、なんでビデオカメラなんて持ってるんですか?」
「これは、走りのフォームの矯正は自分で見てみるのが効果的だと思ってな」
走りはフォームが重要だということなので、予め用意しておいたフォームの解説動画と自分の走りを見比べるのが効果的だと思い、持ってきた物だ。
「えっ!? 私の走り方変でした?」
「やっぱ自覚なかったのか……」
こりゃ、体育祭まで大変な日々が続きそうだな。




