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2章1‐1 空腹の時に食う回鍋肉は格別だ。

『かこむ、ひょもやめるってよ』



 記事の見出しには大きな文字でそう記載されていた。内容の方は――



 2年生に進級したばかりで急ですが、この度、私黄谷かこむは今まで自分のキャラクターとして通してきたこの『ひょも』を捨てようと思います。

 今まで活動している中で度々、本当の自分を見せることができないことに悩まされてきました。

 そんな中、何度も変わるチャンスを伺っていました。

 でも、もし受け入れてもらえなかったらどうしよう。なんて不安に襲われて今までそれができないでいました。

 ですが、進学をして新たな活動が始まるのを見据えた上で、いつまでも逃げたままでいる訳にはいかない。そんな衝動に駆られ、急遽この場を借りて発表させて頂くことになった所存です。

 これからは今まで被っていた『ひょも』という皮を脱ぎ捨てて、ありのままの私になる為に脱皮をしようと思います。

 今まで私を応援してくれていた方々は戸惑ってしまうでしょうし、中には失望してしまう方もいるかもしれません。

 ですが、それが私、『黄谷かこむ』なのです。


 勝手かもしれませんが、よろしければこれからもそんな私の活動を応援していただけると光栄です。



 ――と、記載されていた。これは今日のアイドル新聞の記事だ。

 黄谷は本当の自分を受け入れてもらいたいが為に、今までの自分が使ってきたひょもを捨てる。といった内容だ。

 が、今日の日付は4月1日。これで分かるだろうが、この記事はエイプリルフールネタだ。

 妙にリアリティがあるが、この記事は真っ平な嘘だ。

 真面目な文章の中に脱皮とか書いているが、皮って単語を見て、我慢できなくなったんだろうなぁ……。

 まぁそんな訳で、黄谷はこれからもひょもキャラでやっていくことになっている。

 正直、まだ今の黄谷ではこのキャラなしで人前に立つのは困難だからな。

 だが、この文には本心も混じっているように見受けられる。ありのままの自分を見て欲しい。これが黄谷の願いなのであれば、それを叶える為の手助けは俺の役割ってことになるな。

 なんせ俺は黄谷のマネージャーなのだから。


 という訳で、今日から俺も2年に進級だ。今日も元気にこの流創学園の門をくぐる。

 春休みも残り僅かだというのに学園内は沢山の生徒で賑わっていた。

 他のとこであれば、休み中に学校へ行く理由なんて大抵は部活動くらいだろう。だが、この学園の場合は違う。

 なんとこの生徒ら、ほぼ全員がアイドルオタクなのだ。

 ここ流創学園は、アイドルによって生徒を育てる超特殊教育学校。テストの点数や部活動での成果によって、アイドルと触れ合えるなどの報酬があり、それを得させる為に生徒を突き動かす破天荒な学園。

 そして、そのアイドルもまたこの学園のアイドル科に属す生徒であり、お互いに高め合うことを教訓としている。

 そんなアイドル科には春休みという概念はなく、今日も懸命に活動に勤しんでいる。

 今ここにいるアイドルオタクらは、そんなアイドルの活動の一環であるライブ目当ての連中だろう。

 で、俺はというと、別にそんなライブを見に来た訳でも、部活動をしに来た訳でもない。

 先程にも言ったが、黄谷かこむのマネージャーとしての活動をしに来たのだ。

 アイドル科の校舎に辿り付いた俺は、入り口の機会に学園専用スマホ端末、アイドルフォンことアイフォンを翳す。

 すると入り口の自動ドアが開いたので、そのまま受付の方へと向かう。


「おはようございまーす」


「おはよう文空君。今日も勤勉ね。関心関心」


 受付の高梨さんに声を掛ける。この人はアイドル科の受付嬢だ。ここで暮らしているのかと思える程にいつもここにいる。

 にしても、俺が勤勉ねぇ……まぁ、毎日来てたらそうも思うか。


「好きでやってるだけですよ……それで、昨日言ってたやつ、届いてますかね?」


「ああ、届いてるよ。ちょっと待ってね……」


 俺はここ宛に宅配便を指定していたのだが、それが昨日届いたと連絡があった。


「結構大きい荷物ね、何が入っているの?」


「まぁ、色々とありまして――っと」


 荷物を受け取る。思っていたより大きなダンボールで届いたが、その反面重量は軽い。

 これなら持ち運びも苦労しなさそうだ。


「じゃあ、今日も頑張ってねー」


 頑張りまーす……とは言っても大したことはしないんだがな。



 ――目的地の扉へ到着したが、ダンボールを抱えながらで両手が塞がっているので足で扉を開け入室する。

 すると、空腹を刺激するような香ばしい香りが広がる。

 そう食堂だ。あまり作業をするのに適しているとは言えない場所だが、どうせ自分もここで食事を取る予定だったので、移動の手間を省けるのここにした。

 現在11時。こんな時間だが、もう既に昼食を取っているアイドルや教師がいるな。各2人ずづの2ペアか。まったく、女という生物は1人で飯も食えんのか。

 俺はそんな2ペアに気を使い、この人らと離れた処の机にダンボールを置き、その横に手に持っていた袋を置く。これは道中で自分のロッカーから取り出したものだ。

 さてと、開封……ってカッターないやん。

 仕方がないので、爪で地道にテープを剥がし蓋を開ける。

 中に入っていたのは、アクリルキーホルダーのプレート。それとシャープペンシル、数量各60個だ。

 これはグッズとして販売する為の物だ。別にこれをそのまま販売する訳ではない。

 これからこの2つに手を加えてオリジナルのグッズへと仕立て上げるのだ。

 さて、まずはアクリルキーホルダーから作成するとするか。

 このアクリルキーホルダーは長方形の小型のもので、蓋と本体が別々に分かれている。本体に何かプリントされた紙を入れるなりして蓋をすることにより、自分オリジナルのキーホルダーを作成することができるものだ。

 で、その中に入れるものはというと『ひょもちゃん』という黄谷が考案したヒョウモントカゲモドキがデフォルメされたキャラがプリントされた紙だ。それを両面に入れる。これは前日に予め用意していたものだ。

 たったこれだけの工程でひょもちゃんキーホルダーの完成だ。

 一方、シャープペンの方はというと、これは内部が透明のもので、1度分解して丸めた紙を入れて再び組み直す作業になる。

 そうすると外からひょもちゃんが見えるプリティーなシャーペンが完成する。

 当初は缶バッジの予定だったのだが、学生であればシャープペンの方が実用性があるしいいんじゃないか、とのことでこうなった。

 ……前までの俺だったらこんな作業苦痛でしかなかっただろうな。だが、今では働けることに寧ろ有難みを感じている。

 というのも、当初はマネージャーの仕事をしにアイドル科校舎に来たのはいいものの、如何せん仕事がなかったからだ。

 芸能事務所のマネージャーのように、仕事を取ってくる必要もなければ、スケジュール管理とかも要らないからな。

 だからといって、理事長に仕事を貰いに行っても自分で考えろの一点張り。

 当時はやる気が漲っていたこともあり、何もできないことが本当に苦痛だった。

 という訳で俺は考えた。どうすれば仕事を作れるのかと。

 その時のアイディアの1つがこのグッズ作成だ。

 きっかけは黄谷がホワイトボードに落書きしているのを見たときに思い付いたものだ。

 人気の貢献度としてみれば成果は薄いだろうが、何よりも提案したときに黄谷が乗り気だったのが実行に乗り出す大きな決め手となった。

 自分の考案したキャラが形となり認知されていく、というのが嬉しいのだろうか。

 そんな願望を汲み取るのもまたマネージャーとしての仕事の一環なのではないだろうか、と思う。

 まぁそれじゃあ作業に入りますか。


 ――それから1時間程が経過して。


「ふぅ……終わったぁ……」


 思わず漏れる声。各60ペア無事に完成した。

 数をこなしていく内にペースも上がっていき、作業が楽しくなってきてこの1時間があっという間に感じた。


「……んふぅ~……」


 体を伸ばし、作業で固まっていたこりをほぐす。

 ……そういえば、もう更新されている頃か。エイプリルフールは午後になったらネタ晴らしの時間だ。

 アイフォンを開き、アイドル新聞のページを開く。黄谷のページは……あら、文字はなくて、ビデオ映像が添付されているだけか。

 この企画は提案しただけで後は瑛介に任せっきりだったからまだ内容を知らない。どれどれ……。



『えー。私は午前にひょもを捨てると言いましたが――


 あれは嘘ひょもーーー!!! これこそが私なんだひょもー!!! これからも在りのままの私でやっていくひょもー!!!


 あー、午前中ずっと封印してたから鬱憤が溜まってたひょも。だから今ここで発散するひょもおおおおお!!! ひょもひょもひょもひょもひょもひょもひょもひょもひょもひょもひょもひょもひょもひょもひょもひょもひょもひょもひょもひょもひょもひょもひょもひょもひょもひょもひょもぉ……はぁはぁ……ひょもひょもひょもひょもひょもひょもひょもひょもひょもひょもひょもひょもひょもひょもひょもひょもひょもひょもひょもひょもぉ!』



 あーもうめちゃくちゃだよ……。

 だが、人はそう簡単に変わることはできない。それはつい最近自分自身でも実感したことでもある。

 俺は前の出来事をきっかけに、人としても大きく変われた気がした。

 期待に答えられるように頑張っていける気がしていた。活力に漲って誰かの役に立ちたいと思うようになったし、早寝早起きまでするようになった。

 が、結局1週間程度で元に戻ってしまった。

 結局人は先天的な部分を変えるのってほぼ無理なんだな、と。

 やはり面倒なことは面倒だし、寝ることが大好きだ。そう俺は先天的な面倒臭がり屋。これは一生変わることはないのだろう。

 ――だが、黄谷の為に全身全霊を尽くす。これもまた変わらないだろう。

 使命とか償いとかではなく、これが俺の心からしたいことだから。

 やりたくてやっているからこそ、面倒だなんて感じない。それどころか、貢献していることが誇らしくて、役に立てた日には睡眠がより快適になる。

 言葉にすると少し気恥ずかしいが、これが俺の本心なのだから、堂々掲げていたい。

 また、本心を偽ることで誰かを傷付けたくないから。

 もう二度と同じ過ちを繰り返さない為にも、これからもずっと素直に生きてきたい。


「おー文空、もう来てたんだね」


 後方からの挨拶。この声は瑛介だな。

 こいつは同級生でアイドル新聞部の部長を務めている。アイドルに取材をするという名目でこの校舎に足を踏み入れることができる存在。

 今日のエイプリルフールの記事を作成したのもこいつだ。

 このアイドル新聞含め、こいつは大いに利用できるからこれからもどんどん活用していくことになるだろう。


「……お前のことはとことん利用してやるからな」


「は?」


 しまった。つい本心を口走ってしまった。素直になりすぎたか。


「今日もいい天気だな」 


「誤魔化そうとするな! 今親友である僕のことをまるで道具かのような言い方……ああ、そっか、エイプリルフールか! そうだよね。よかったよかった……無垢な顔で言うもんだから一瞬真に受けちゃったよ……ね、そうだよね?」


 勝手に自己解決してくれたようでよかった。


「そんなことより悪いな。わざわざ来てもらって。これから任せたい仕事があるからよろしく頼むぞ」


「……うん、まぁ、かこむちゃんの為だしそれくらいお安い御用なんだけどさ……それよりもさっきのことだけど……」


 道具の癖にウジウジとうるさい奴め。


「さてと、飯の時間にするか……」


 こんなのほっといて腹も減ったことだし飯だ飯。

 作業が終わったことにより蘇る空腹感。朝飯をあえて抜いてきたからな。なんたって、アイドル科の食堂の飯は絶品。他の物で腹を満たすのは勿体ない。

 ここの食堂は専属でプロの料理人が仕切っているからか、料理全般のレベルが高い。

 しかもそんな料理がビュッフェ形式になっていて、好きな料理が取り放題となっているのだ。

 さてと、今日は何を食すとするか。トレーと食器を取り食事が陳列されている場へ向かう。

 ここのメニューは基本、生姜焼きやハンバーグなどのメジャーなメニューが殆ど。

 だが、プロの料理人が作っているから、その料理1つ1つの味のレベルが高く、そんじょ其処らの店では決して味わえない上質な品ばかりだ。

 また日によってある程度出てくるメニューにも法則性があり、和食や揚げ物だったり時にイタリアンだったりと様々だ。

 そして、今日は中華料理の日。やったぜ! 好物ばかりだ。

 麻婆豆腐、青椒肉絲、酢豚、回鍋肉などなど、食べ盛りの学生が喜ぶ料理の宝庫だ。

 どれも食べ尽くしたいところだが、腹の容量には限界がある。残すと印象も悪いし、それぞれ少量ずつ取っていくとしよう。いくつも皿を汚すのも悪いし大皿にまとめてな。

 ご飯も大盛りでよそろう――って、おおっ! 中華丼の具にチャーハンまであるのか、これも食べたいな……いや、でもやっぱりこのおかずは白米でいきたいよな……あぁ、なんて贅沢なことで悩んでいるのだろうか。


 苦難の末、選び抜いた料理を運び席に付く。瑛介はもう既に料理を取り終えて座っていた。


「おいおい、お前どんだけ麻婆豆腐好きなんだよ……」


 あろうことか、これだけの種類があるにも関わらず、麻婆豆腐のみという暴挙に出ていた。


「中華といえば麻婆豆腐一択でしょ。他の料理も魅力的だけど、麻婆豆腐の魅力には劣るね」


「……いや、けどよ、これだけ種類あるのに麻婆豆腐のみって勿体無くないか?」


「うーん、僕は他の料理で腹を埋めてしまう方が勿体なく感じるね」


 はぁ……つくづくこいつとは分かり合えないな。

 そんなことより、俺もさっさと食べるとするか。


「いただきますっと……」


 まず最初に箸を伸ばしたのは回鍋肉だった。中華料理の中で一番の好物だからだ。それ故に取った量も他と比べて多めだ。

 贅沢に大き目な肉を2枚、葱とキャベツも一緒に取り、底のソースによく絡め一口。

 ……あぁ、うめぇ……濃厚で甘辛いソースがよく絡んだ肉と野菜が、咀嚼という行為に幸福感を与えてくれる。

 そんな旨味のインパクトが消えぬ前に、更にご飯を口が膨らむ程にかき込んで追撃を決め込む。この濃い味は白米に本当によく合う……。

 箸が止まらない。回鍋肉、白米、回鍋肉、がループする。そして、あっと言う間に回鍋肉がなくなってしまった。

 他の料理もあるが、もっと食べたい……不本意だが、瑛介の気持ちが分かった気がする。


「ふふっ。そんなに頬張ってリスみたいです。食べ物は逃げないんですから、もっと落ち着いて食べないと駄目ですよ」


「ふふぉ、んふぁみは(んおっ、黄谷か)」


 リスである俺は食べることに夢中になっていたあまり、後方からの接近に気付かなかった。


「もう、飲み込んでから喋ってくださいよ」


 急に話しかけてくるからつい……。


「悪かった……撮影は終わったのか?」


「はい。緊張しちゃってたせいで少し長引いちゃいましたけど……」


 撮影というのは、企業のモデルとして広告に使う写真の撮影の仕事だ。それもよくTVで名前を耳にするような大手企業からの依頼だ。

 これは2年になったときから受けれるようになる仕事だ。

 最初聞いたときは驚いたと同時に疑問に感じた。本来広告というのは知名度が高い人間を起用し、本人の知名度と比例した宣伝効果を得る、という認識だったからだ。

 なので、いくらここのアイドルだろうと、まだ世間にお披露目されていないアイドルでは役不足じゃないだろうか、と思ったのだが――そこは流創学園。抜かりないトリックがあった。

 まず、まだ世に出てないが故にギャラが安いということ。そして、流創学園の箔が付いたアイドルだから故の将来の確約。から来ていた。

 というのも、ここの学園のアイドルは3年になると同時に世間に公開され、一般的なアイドルとしてデビューすることになる。

 アイドル公開時にはたちまちSNS間で大きな話題になる。けれど、デビューしたてとなればまだ話題として使える画像というのは少ない。そんなときに使われるのがこの広告の画像なのだ。広告の撮影で取る画像は映りがよく、参考資料として御誂え向けとなっている。

 SNSで貼られたその画像は沢山の人間の目に留まり、広告効果は絶大なものとなる訳だ。

 要約すると、安い内に種を撒いておき、先の未来で大きな木にする、という訳だ。


「そうだったのか。けど、今回の相手なんざわざわざ気張る必要もないだろ。あくまで消化の仕事と捉えていくのが気楽でいいと思うが」


 そんな広告でのリターンは世間的に認知されていて、企業からの依頼も殺到している。

 だが、アイドル1人にも受けれる数には限りがある。数字を挙げると月たったの2本だ。

 これはあくまでも仕事の経験を積む為のものであって、例え本人が希望しようとその枠を増やすことはできない。

 それ故に、人気アイドルからその枠は埋まっていき……不人気であれば、その逆。

 今回黄谷が受けた仕事も藍坂の枠が埋まっていたから、妥協してのことなのだそうなのだ。

 例えもしそんな理由があったとしても、本人にそれが伝わらないよう配慮くらいはするだろ普通。

 だから、そんな企業相手に真面目に向き合う必要はない、という趣旨で伝えたのだが。


「確かにななみちゃんがダメだったからって言われたときはショックでしたけど……消化だとか、そんな軽蔑はできません」


「どうしてだ?」


「確かに少し悔しい気持もあります。ですけど、企業さん側は私の為に大金を掛けてくれてますし、他にも撮影の為のセットや、この仕事の為に尽くしてくれている人がいるんです。なので、私はそんな人達の行為に全力で応えたいんです」


「そうか、黄谷らしいな」


 相変わらず眩しいな……。まるで俺が小物みたいじゃないか。現にそうなのだが。

 所詮、企業側は数字面でしかものを見てはいない。だから無神経なことを平気で言えるんだ。同時に悪意も無い訳なんだがな。

 そんな相手なんだから、自分も心を持って接するのではなく、ただ合理的に動いていればいいと思うんだが。黄谷にそれは出来ないんだろうな。

 なんたって、超ド級の他人想いなんだからな。

 自分へしてくれた行為の1つ1つを真摯に受け止め、全力で応えなきゃ気が済まない。それが黄谷だ。

 大半の人間は自分へ向けられた行為に気付くことすらしないのにな。

 ……悔しいな。そういった面が伝わらないのは。俺が悔しがってどうすんだって話だが。


「さてと、私もおなかぺこぺこですし、ご飯頂いてきますね」


「おう、いってらっしゃい」


 そういや飯の最中だったな。俺も回鍋肉おかわりしてくるか……いや、先に他の料理を食べ切ってからにしよう。

 黄谷は食べ物を粗末にしようとすると煩いからな。


「いやぁ、かこむちゃんいいね……素晴らしい」


 どこから目線だよ。


 ――俺達は食事を終え、食堂の人に元気な声で「ごちそうさまでした」と告げて食器を返し、再び席に戻る。

 どの料理も美味くて食べ過ぎてしまい腹が痛い。まずいな、これから軽く体を動かすことになっているというのに。


「ふぅ~美味しかったですね! これで午後も頑張れます!」


「うん、いっぱい頑張ろう! てっぺん取ろう!」


 お前はさっきからなんなんだよ。


「あ、そういや、ひょもちゃんグッズ完成したぞ、どうだ」


 俺はいったん閉まっていたキーホルダーとシャーペンを黄谷に渡した。


「おお、凄くかわいいです! 私の考えたキャラがグッズになるなんて感激です!」


「へぇ~そんなの作ってたんだ。僕にも見せてよ」


「2つで500円だ」


 キーホルダー200円、シャーペン300円だ。


「別に見るくらいいいじゃないか……まぁ、買わせて貰うけどさ」


 少し不服そうな瑛介から500円受け取りグッズを渡す。


「まいどありー」


「ありがとうございます!」


 好評であれば次のグッズ化に繋がるし、じゃんじゃん売り込まねば。


「いやいや、それ程でも……で、このキャラクターはかこむちゃんが描いたの?」


「はい! ひょもちゃんっていうんです!」


「へぇ、かわいいね。さっそくバッグに付けちゃおうかな」


「わぁ、ちょっと恥ずかしいですけど嬉しいです!」


「新聞で告知しとけな」


「うっせー。折角かこむちゃんに会話して貰ってんだから入ってくんな!」


「あーはいはい。悪かったよ」


 そういえば時間は……12時34分か。まだ次の予定まで少し時間があるな。何か適当に時間を潰せるものは……そういえば、このエイプリルフール企画は他のアイドルもやってるんだったな。

 折角だし見てみるとするか。

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