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毎年恒例、首がポロリもあるよ

 ホイホイはルークたちの住んでいた国ホンニとニアリスの両親が収めていた国イリアタを合わせた国だ。

 元々、隣国で十キロも離れてない仲の良い国同士だったが、今は、元姫のニアリスが王になったので、流れとしてホイホイの首都、メインの城はイリアタ側にある。 

ルークはホンニに長く住んでいて、まだイリアタ側のことはあまり知らないが、そこまで離れた土地同士でもないし、概ね同じなので特に問題はなかった。


しかし、二つの土地には一つだけ違う点がある。

 それはホンニは沿岸部に面し、イリアタは森林部に面すると言う点だ。

 なので、ある時期になると毎年ホンニ側から応援の兵を出して行う行事をルークはあまり詳しく知らない。

 勿論、書面上は知ったし、シグレに尋ねた時も、今の拡大した軍事力なら特に問題もないと言われていたので、特に深く考えずにラブジルへ出かけていった。


 そして、そのタイミングでイリアタ側にある毎年恒例の問題に直面した。




「魔物の群れ?」

「はい、そうなんですよ。そろそろそのタイミングかと」


 神崎と城内の廊下で話し込んでいたのは、サイドポニーテールのメイド、シエルだ。


「去年までは、この時期ホンニ側からも応援が来てくれて討伐や追い払うのに必死だったんですが、今年はまだ向こうからの兵士さんを見ないなーと思って」

「魔物がここを襲いに来るの?」

「いえ、別にそう言うわけでもないんですけど、産卵とか、寒くなったとかで移動のタイミングが複数の魔物で重なっちゃって、ここを通り道にする空腹の魔物に食べられたり、いたずら刺激しちゃって殺されたりと被害が凄いので、毎年躍起になっているんですよ」

「へぇ、それは大変だ。どんなのがいるの?」


 神崎はこっちの世界に来て、ほとんど魔物を見たことがなかった。

 ルークの話でいくつかは知っているが、実際に見たことはない。


 この世界では、馬車に使われていた馬や他の家畜となる生き物は動物と呼ばれている。

 しかし、人間では飼いならせない、また一般の人間より脅威であるとされる魔族以外の生き物を魔物と呼ぶ。

 魔物は基本的にコミュニケーションが取れないのも魔族とは違う特徴だ。

 魔族の中で最弱である人間よりも脅威だから魔物。

 それが魔物の一般的な基準となっている。


「色々いますよー、毎年メインとなって暴れているのは、手足の生えた木みたいな奴と背中が燃えてる奴ですね」

「何それ、想像もできないんだけど」


 神崎は元の世界にいた頃の知識で何か分かるかなと思っていたが、そもそも原型の想像も出来なかった。

 もし神崎が元いた世界で中二病全快で、神話や神獣、珍しい獣などをネットで漁っていたら違ったかもしれないが、神崎は普通の高校生だった。


 シエルはふっと息を漏らし、安堵した様子を見せる。


「まぁ、でもホイホイはイリアタより大きな国になりましたし、防衛団長のアシュバル様もセブンズのみなさんいますし、大丈夫かな」


 シエルはウインクして「神崎様もいますしね」と付け加えた。

 神崎はやれやれと息を吐く。


「出来るだけ頑張ってみるよ」

「期待してます」


 にこやかに笑いあっていると、二人の背後から声を掛けるものがいた。


「ここにいたのか、一番に見つけられるとは俺はやはり運がいい」

「ミックスさん」


 神崎がミックスと呼んだ人物はセブンズの一人だ。

 リチ国の王族を代々守って来た家系の末裔らしい。

 当然、リチ国とはルークたちホイホイの滅ぼした国の一つである。

 ミックスは長身で手足の長い二十代ぐらいの男性でマロ眉に細い目、まるで紅葉のようにザクザクに広がった髪型が特徴的だ。


「運の良い事に、アシュバルさんが呼んでるよ。今から、セブンズと神崎君を交えて年に一度の魔物の群れの対処についての話し合いだってさ」

「丁度、その話をしていたところだったんですよ」

「なるほど、それは運がいいね。元々、この話もアシュバルさんとセブンズ主導で解決する予定だったんだけど、運のよい事にルークさんが暇そうにしているなら、君とも仲良くやって欲しいと言っていたからね」

「僕はクラスに馴染めない転校生かなんかですか?」


 ミックスが妙な口調で神崎を会議に誘った時、城内にも聞こえてくる大きな鐘の音がした。


『敵襲! 敵襲だー! 魔物がこちらに向かっている!』


 その怒号にシエルは慌てふためく。


「そっ、そんな、もしかしてもうですか! 例年ならもう一週間ぐらいは余裕があるのに!」


 ミックスは落ち着いた様子で、神崎の方を見て笑った。


「運がいいですね、もう活躍の出番が回って来るなんて」


 二人は魔物を狩る為に街の外に向けて駆けていった。




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