彼らは進む、今日も明日も明後日も
城の前にあらかじめ用意していた馬車に乗り込み、耳をつんざくようなリオンの咆哮の感想を述べる強華とティグレ。
「リオン、怖かったね」
「ルーク、乙女心は大切にするものだぞ」
ティグレに対して、ルークはバツが悪そうに答える。
「俺なりの優しさだ。もう眠いんだ勘弁してくれ」
「逃げたな」
「逃げた」
「みなさん、どうしたんですか?」
唯一状況を理解していないシグレは首を傾げるだけだ。
馬車の中で、ひと眠りしようと、うとうとしていたルークはあることを思い出した。
それは、幼いルークがもう字を読んでいると母が褒めてくれると言う理由だけで読んでいた小説の思い出。
どれも大衆に媚びた英雄譚ばかりだが、この世界にも神崎の世界にあった小説家と言う職業はある。
ルークはその物語に出てくる主人公と言うものが嫌いだった。
彼らは己が正義だと一つも疑わずに力をふるう。
相手を間違っていると否定する。
自分の行いが正しいと行動する。
なんて醜い生き物だろうと、物語の中の架空の人物だがルークは嫌悪した。
力を他人に向けた時点で、相手と同程度だと何故気が付かない?
何故、自分は正しくて、相手を間違っていると思い込める? そこには何の根拠もないはずだ。
そして、何より、何故、自分の行動一つ正しさを振りかざさないと動けないんだ?
どいつもこいつも正義だ、正しさだと、大義名分を得て、水を得た魚のように生き生きと決め台詞を吐く。
こちらは吐き気がしそうだ。
正直に言えよ!
正義とか、正しさの為に動いてるんじゃないだろ?
後付けだろ?
俺は違うとルークはその物語の数々を読んで思った。
自分がしたいから、するのだ。
そこに正しさや正義はいらない。
俺はそんな後付けを我が物顔で振り回さなくても行動できる。
何かに頼った行動をとるな。
己がしたい事なら、例え悪と非難されてでもやればいい。
自分の生きたいように生きる、正しさなんかに誤魔化されはしない。
ルークは幼い頃から、そうやって己に誰よりも正直に生きてきた。
「ルーク、寝てる?」
「そのようですね」
「こいつも寝てる間ぐらいは眉間のしわも取れるんだな」
強華、シグレ、ティグレは幼き頃の夢を見ているルークの顔を覗き込んだ。
「そろそろ起こしてあげましょう」
シグレは、ルークの肩を優しくゆすった。
「ルーク様、起きてください」
ルークは目をこすりながら、ゆっくりと覚醒する。
「もうついたか」
「よくそんなに寝れるな」
ティグレは一周回って感心していた。
「ここ最近やることが多くて寝てないんだ」
目の前にはラブジルの国内の南側入り口である石造りで建物四階分ほどの高さのある門が見えてきた。
「さて、結婚するか」




