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異世界から来た奴がモテモテチート過ぎてウザい  作者: 痛瀬河 病
最終章 誰もが欲しいものへ手を伸ばし、勝者は只一人
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彼女の最終目標

 理論上、これで鬼々とは同スペックだ。

 ただ、吸血鬼化し生まれ変わったルークとこれまでの戦闘で多くのダメージを蓄積している鬼々。形勢は逆転したのかもしれない。


 鬼々の起き上がり際に再度拳を叩きつけるルーク。鬼々はこれを自身の特殊能力『触れたいものだけに触れる。触れられたくないものには触れられない』を発動させようとする。


「⁉」


 が、ルークの拳はしっかりと鬼々の頬を捉えた。

 

「わからないか?」


 鬼々は困惑している。

 何故、自分の力が効かないのか。


「違う。そうじゃない。お前の力は確かに発動しているよ」


 ルークは吸血鬼化により跳ね上がった身体能力で鬼々の顎を蹴り上がる。


「ただ、同等の力が働き打ち消し合っているだけだ」

「……同等?」


 鬼々は知らなかった。

 何故なら、自身の血を誰かに分け与えようなんて発想はなかったし、鬼族に誇りと選民意識があったから他の誰かにその領域を犯されることを酷く嫌っていた。無意識化でそんなことは起こり得ないと決めつけていた。


「裏技だよ」


 その言葉に鬼々は振り向いた。他の誰でもない尊敬してやまなかった姉の声だったからだ。ティグレは続けた。


「そいつは今一時的にお前と同じ領域にいるぞ」

「ちっ、もうネタ晴らしか。妹には随分甘いじゃないか」

「言ってろ、ナイフで切り付けられたお返しだ」


 ルークが茶化すとティグレは面白くなさそうに笑った。


「それはお前がわけのわからないことばかり言うからだ。まぁ、そこで大人しくしていろ。最後にその魔王の力も奪ってやるよ」

「ふっ、初めてを奪われるのにお前のような粗野な人間はごめんだな」

「はっ、初めてなんて年でもないだろ元吸血鬼」


 二人の、二人だけの世界で会話するルークとティグレに鬼々は苛立ちを覚えた。そして、それを今すぐにでも中断させたくなり攻撃に転じた。


「互いの『接触の任意選択』の力は打ち消し合っているんだ。そして肉体のスペックは同じ吸血鬼。いや、俺の方がお前の姉がベースの分少し上か。最後に肉体の疲労具合、俺は何と吸血鬼化で殆どリセットされている。わかるか? わかるよな?」


 鬼々の右ストレートは空を斬り、ルークの鳩尾への膝蹴りは鬼々を貫く。


「どうした、元最強! 今、どんな気分だ!」


 ルークの言葉に絶対に負けたくないと言う闘志だけは湧いてくる。ただ、肉体がついて行かない。こんな経験は初めてだった。


「お前なんかに鬼々の誇りは傷付けさせない‼」


 それは自分の自身のことであり、尊敬する姉のことでもあった。


「鬼々はお前を殺してお姉ちゃんを越える」


 鬼々は初心に戻った。

 そう、彼女にとって世界も魔王も手段でしかない。ただ、姉ティグレに認められたい。彼女を越えたい。それだけが鬼々の原動力だった。


(丁度いい)


 鬼々は沸点が上がりきった後に落ちていくように段々と頭の中がクリアになっていくのを感じた。


(もうどうせお姉ちゃんは吸血鬼には戻らないし、戻る気もない。だから、鬼々は焦っていた。どうやってお姉ちゃんを越えようって、どうしたらそれを証明できるのかって。見えないふりして祭り上げて居心地の良い№2でいようとしたこともあったけど、それじゃ絶対にお姉ちゃんは褒めてくれない)


「……お姉ちゃんの血で吸血鬼になったお前を越えれば、壊せば、殺せば、鬼々はお姉ちゃんを越えたことになるんだね」


 鬼々のずっとかかっていたままの頭の靄が晴れていった。

 そして、彼女は人生で一番の笑顔を見せた。

 見つけたのだ。

 最後の目標を。


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