幽霊の正体見たり
視界は悪いままだが、ルークが声のする方へ時間外労働を放つ。
しかし、対象を認識し辛いのか、上手く作用しない。
「どこにそいつはいるんだ。そいつさえ見つけてしまえば、僕らに一筋の光明がみえてくるのに」
「見付けさえすれば鬼々がぶった切ってあげるのに」
神崎はその言葉に何か引っかかりを覚え、その正体に直ぐに気が付いた。鬼々は以前一人の異世界転生者を殺している。ルークが呼び出した瞬間にぶった切ったのだ。
だたし、それは人ではなかった。
神崎はルークが以前呼び出したドラゴンを思い出した。
(いや、異世界転生者は必ずしも人とは限らないんだ)
水蒸気は地面に落ちていき視界は少しづつ晴れていく。
神崎はルークを視界に収める。勿論、それは同時にルークの視界にも神崎がバッチリと収められたことになる。
神崎とルークは互いに全く同じモーションを行った。
「「時間外労働」」
【能力名】
偽物技巧師
【LEVEL】
LEVEL9(Max)
【スキル詳細】
発動時、特定の人物のスキルを出力二百パーセントでコピーできる。
使用回数制限なし。
「こしゃくだな」
神崎がルークのスキルをコピーし互いに互いを攻撃する。
しかし、よりダメージを負ったのは神崎だった。
(おかしい、偽物技巧師は相手のスキルの出力二百パーセントでコピー出来るんだ。なのに、僕の方が力負けしている。つまり、これは)
追撃を加えようとするルークに神崎は両手をバリアのように広げた。
【能力名】
現実虚構
【LEVEL】
LEVEL9(Max)
【スキル詳細】
発動時、半径一キロメートルでスキルの使用は出来ない。
持続時間一時間。
インターバル一時間。
「無駄だ」
僅かにルークの攻撃の威力ウが弱まるのは感じるものの完全に打ち消せない。
(やっぱり、現実虚構でもルークの時間外労働を打ち消せない。もはやあれはスキルとは別の何かになっているんだ。合成? 融合? きっとその類に違いない)
神崎は身体にダメージを蓄積しながらも相手の正体に少しづつ近付いていた。
しかし、そこに辿り着くまでに肉体が持つのかかなり怪しい。だから、神崎は賭けに出ることにしたのだ。




