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エピローグとさようなら、そしてプロローグへ
始まりと同時に彼は口にしていた。
ピンチになればいつも口を出ていたその言葉を。
始まりの言葉をだ。
「異世界転生」
天井に円状の紋様が現れる。
魔王は笑った。
「それは知ってる」
神崎は俯き何も言わない。
シオンらしきものはバラバラになり死体となっている。
ヨハネはその死体に震え、回避に気力を使ってしまったのかその場に座り込む。
「……鬼々なのか? タンタリオンは敗れたのか?」
ティグレは自分の知っている魔王と別人となった別の新魔王に驚きが隠せず瞳孔が開き、その場に立ち尽くす。
その場で唯一、彼だけが動き、地獄へ足を進めた。
「異世界転生」
円状の紋様が二つになる。
彼はまた一歩進んだ。
「異世界転生」
紋様は三つになった。
空から三人の異世界からの訪問者が現れる。
最後にルークは鬼々と神崎へ宣言する。
「お前たちは邪魔だ。俺がこの世界の支配者になる」
リオンと強華はもう動かない。
だけど、それを見届けられずほんの少しだけ残念そうな顔をしたように見えた。




