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第二十二話 初陣、報酬

 悠然さすら感じる神崎はそれでも確かに一歩一歩距離を詰めていった。

 そして、バレッタの目と鼻の先に立つ。

 二人は静かに睨みあう。


「お前の目は、よく分からねーな。読めねぇ」


「最前線での光景を見たよ。君がやったんだろ? なんであんなことが出来るんだ」


 バレッタは緊張感のなく笑う。


「なんで? そりゃ、生き物ってのは殺すために生きてるんだ! だけど、人間、魔族は言葉があり、知恵がある。だから、殺さなくても、話し合えば色々解決してしまう。

 だから、殺す‼

 つまんないだろ‼

 馬鹿は! 言葉を持たない生物は! 好きなだけ生き物を殺してるのに、言葉を持った私たちが! 頭のいい私たちがなんで殺すのを我慢しなくちゃいけねぇ‼

 私は、殺し殺されそうになることで初めて生を感じる‼

 殺すのは! 殺されるのは! 生き物の義務だ!

 私は強い‼

 だから、殺す側に回って生き物の義務を全うする‼」


 バレッタの主義主張。生きている意味。

 それを喉を枯らす勢いで叫んだ。

 神崎はそれを大人しく聞いていた。


「……なら、僕の方が君より強かったら?」


「ありえねー仮定並べんな。そん時も私はお前を殺す」


「……」


 神崎は無言でバレッタの前に右手を開き、手を差し出した。


「何のつもりだ?」


「得意なんでしょ? 握りつぶすのが」


 バレッタは一瞬で沸騰し、その右手に自分の右手を重ねる。


 握力()超過()

 それはバレッタのスキル、自身の握力を百倍にする。


 偽物(ノーパクリ)技巧師(・オマージュデス)

 それは神崎のスキル。人のスキルをコピーし、出力百二十パーセントで使うことが出来る。


 つまり、神崎の今の握力は普段の百二十倍。

 基礎の握力の差こそあるが、神崎も異世界転生補正で身体能力はかなり高くなっている。

 バレッタに勝ち目はない。


「ぐぁぁぁぁああぁぁ‼」


「右手の骨、砕けたでしょ」


 バレッタはそのまま崩れ落ちる。


「まだだ!」


 しかし、すぐにその右手は回復して神崎の顔を捉える。

 そのままバレッタはスキルを発動させ、神崎の頭をザクロのように真っ赤に染める為に力を込める。


「あっ?」

 

 現実(スキャン)虚構(サー)

 それは神崎のスキルの一つ。このスキルを発動している時は如何なる者でもスキルの発動は出来ない。


「痛いなぁ」


 神崎はバレッタの右手を顔からどける為にスキルを発動させる。


 双頭(アクア・)(フレイム)

 そのスキルは、水と炎を無から生み出し、自由に操る。

 バレッタの鳩尾に突如現れた水が滝が逆流する勢いで集中的に注がれる。


「がぁあぁ‼」


 バレッタはノーモーションのその攻撃をもろに食らい、後方に弾き飛ばされた。

 しかし、その傷はバレッタの回復スキルによって一瞬で消える。


「うぜーな、何もんだよ、お前」


「そのスキル、面倒だね」


 神崎が面倒そうにしていると、地面に転がっていたルークが息も辛そうに声を絞り、助言をする。


「俺、の予想だが、恐らく、あいつの回復スキルは、地面に、足をついていることが発動条件の、はずだ」


 ルークが先ほど推測していたことだ。

 ルークの弾丸がバレッタを捉えた個所は二箇所。

 一つは頭に二発。

 二つ目は肩に二発。


 さきほど、撃たれる個所によって回復の速度が違うことは見抜いた。

 これは恐らく重要な器官の周り程時間がかかるのではないかとルークは予想を立てた。

 そして、さらに確信はなかったが、あえて全く同じ個所に銃弾を撃ち込むことで見えたもう一つの違い。


 それは頭にしても、肩にしても二度目のほうが早く回復した。

 ならば、一度目と二度目でなにが違うか?

 色々な仮説が立つ中、ルークが最有力としたのが、足の裏が地面に触れる面積の違いだ。

 一度目の頭は、完全に不意を突けたため、そのままバレッタは地面に倒れた。

 この時、足は踵しか地面についていなかった。

 二度目の頭は撃たれた時は、事前に攻撃されると分かっていたので、上半身が後ろに大きく反ったが、下半身はしっかりと残って足が地面についていた。

 だから、その分回復が早かった。


 一度目の肩は、片足をルークの腹を抉る為に使っていた。

 二度目の肩は、しっかりと両足をついていた。

 だから、二度目の方が回復が早かった。


(本来なら俺とルイで二人がかりで疲労させた後に足を浮かせて殺したかったが、やはり実力差で難しかった。結局、こいつが来るのを待って、試してもらうのが一番の方法だったわけだな)


「ありがとう、ルーク。試してみるよ」


 バレッタの足元から水源が発生する。

 勿論、神崎のスキルだ。

 そして、噴水のように湧き上がり、バレッタを宙に舞い上がらせた。


 滋養(マッスル)強壮(・アッパー)

 神崎のスキルの一つ、身体能力の爆上げ。


 神崎は宙に浮いたバレッタを殴る、蹴る。

 それを繰り返す。

 どんどんボロボロになるバレッタ。

 しかし、一向に回復する様子は見られない。

 どうやら、ルークの仮説は正しかったらしい。

 そして、適度に痛めつけると、噴水のような水を止め、バレッタは地面に真っ逆さまに落ちていく。

 それを神崎は落ち着る前に胸ぐらをキャッチし、足を地面につかせない。

 赤いワンピースの繊維が悲鳴を上げている。


 ここまでの力の差を見せつけられると、もうバレッタに焦燥感はなかった。

 ただ力なく笑う。


「まだ、殺されたくねーや、降参だ」


「わかったよ、君は今から生きて償うんだ」


 神崎のワンサイドゲーム。

 今までのルークたちの苦労を笑うかのような力。

 

 ルークは感じていた。

 神崎の変化を。

 これまでのただ甘かった神崎なら、今のバッレタとのような戦い方はしなかったはずだ。


(もしかしたら、今回の戦いは嬉しい誤算があったかもしれんな)


「立てる? 肩を貸そうか?」


 神崎が地面に転がるルークを見下ろす。


「頼む、あと向こうに転がっている女も担いでやってくれ」


 ルークは視線でルイの方を指す。

 

「分かったよ」


 こうして、ルークたちの初陣は終わった。

 神崎があらかたラブジルの兵を片付けていたのと、今回の敵のトップであったバレッタの討伐されたことを知り、すぐに残りのラブジルの兵も身を引いたことで終幕だ。


 こちらも多くの優秀な兵をバッレタたちとの戦闘で亡くしたが、後日、ラブジルが手を引き前国家の残党だけになった島も取返し、得たものもかなり大きかった。

 これにより、ラブジルをはじめとした多くのホイホイの建国に反対していた国も鳴りを潜め、国の中にいた反対派の残党も片付け終わり、ホイホイも国家として安定感を増した。


 だが、今回得たものの中で一番大きいものは、その中のどれでもなかった。


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