彼女の右腕③
リオンは人生で一番頭を抱えた。
両親になんて報告しよう。頭の中にはそればかりがよぎる。
「落ち着けリオン、お前の姉は元々変態だ。変態の下に族ってついただけだ」
「そうなんだけどさぁ」
「もうルー君、ルー君のお姉ちゃんでもあるでしょ」
「ほらな」
ルークはショックを受けて気落ちしているリオンの代わりに会話を引き継ぐ。
「つまりそのみょうちくりんな右腕は変態族になったことで手に入れた力と言うわけか」
「そうだよー。お姉ちゃんはね『未来の右腕』って呼んでるの」
シオンは濃い体毛に覆われた右腕を改めてじろじろと眺める。
「お姉ちゃんは元々強かったけどね。これを手に入れてから無敵になっちゃった。安心していいよ、ルー君。もうお姉ちゃん誰にも負けないから」
右腕を軽く振るとその体毛は針のように広範囲に発射され不意打ちを狙っていたバレッタとバルゴスを捉える。
「むぅ、お話の最中だよ」
バレッタは回復するが、回復スキルを持たないバルゴスはそうはいかない。だから、自己治癒能力を高めるあの姿に変身する。
ルークは時間を稼ぐようにシオンの気を逸らす。
「種明かしはしてくれないのか?」
「『未来の右腕』のことについて? 別にいいけどあんまり意味はないよ」
後ろではバルゴスとアレーニェがより凶暴な姿へ変身する。
ルークの作り上げた実績。
最強の人工兵。
濁血化。
バルゴスの頭からは鹿のような大きな角が生える。
アレーニェの背からは蜘蛛のような関節を持つ足が複数生える。
「強華‼」
ルークの叫びに強華は即座に反応し、地面を素手で割る。
ただ無策に突っ込んでいたわけじゃない。
アレーニェは見えない糸を地面に垂らし、ワンコが決められた位置の地面を軟化させていた。
【能力名】
理想政治家
【LEVEL】
LEVEL7
~次のLEVEL到達の詳細不明。
【スキル詳細】
触れた物質に不可視化を付加することが出来る。
ただし、付加できる物質は自身の体重と同程度までとする。
例)
スキル使用者が体重50キロとした場合。
10キロの物質5つまでに透明化を付加できる。
解除は自由。
ただし、同じものは連続では不可視化できず、対象物の不可視化継続時間は最大一日
までとする。
【能力名】
電気鼠
【LEVEL】
LEVEL7
~次のLEVELまで、七年三か月十一時間、人を殺めぬこと。
【スキル詳細】
触れた物質に電気を付加することが出来る。
ただし、付加できる物質は自身の体重と同程度までとする。
例)
スキル使用者が体重50キロとした場合。
10キロの物質5つまでに電気を付加できる。
電気詳細
・生き物に付加することは出来ない。
・付加された電気によって、その物質が破壊されることはない。
・電気は常に付加された物質に半永久的にとどまり、生物が触れた時点でその生物の身体に流れる。この場合、その生物は電気のダメージを負う。
・電気が生物に流れなくても解除は可能。
・威力300
【能力名】
成人不良
【LEVEL】
LEVEL8
~次のLEVELまで、何かを二千六百二時間撫でなければならない。
【スキル詳細】
自身の身体で触れた固体の硬度を下げる(柔らかくなる)
生物には使用不可。
硬度の下降する幅はスキル保有者の意思(ただし具体的にイメージ出来ていなければ発動しない)によって決定する。ただし、硬度はあくまで固体を保つ(どれだけ柔化させようとも液体にはならない)
このスキルに解除は存在しない。発動後、その固体の硬度が戻ることはない。
そして、それは強華が地面を割ることで凶悪なステージへと早変わりする。
予め打ち合わせていたルーク側の中でも更に身体能力に特化した混濁化したバルゴス、アレーニェと素で凄い強華の三人だけが移動可能。
トランポリンのように柔らかくなった地面を跳ね、電気の流れる糸を交わし、打っては離れるヒット&アウェイの要領でシオンを削る作戦だ。
「なになにこれー」




