その器に満たされるものは
「……お前たちはそちらにつくんだな。賢明な判断だ」
ルークは二人に声を掛けた。
その二人はルークの懐刀、セブンズの二人だ。
「ルークさん、あなたのやり方にはニニちゃんはもうついていけないんだぁい」
「あなたのパンツとニアリス様のおパンツ、どちらが魅力的か。ボクにとっては簡単な問いだ」
ニニはこれまで何度もルークのやり方に疑問を持っていた。そして、良き友であった元セブンズ、ナナキを失った。彼への周りのその後の対応に冷たさも感じていた。
彼女も限界だったのだ。
そして、同列に語るのもニニに失礼だが、ムッツリだって思うところはあった。彼にしてもナナキの死が転機かも知れない。ムッツリはセブンズの中ではヨハネの次に若い。ルークのやり方を飲み込めるほどには表面的な正義や正しさを捨てきれない。
「……貴様ら、ルーク様の敵に付くからには覚悟しておけよ」
ワンコはギリギリと奥歯を噛みしめ、怒りをあらわにする。
「ワンコ、気にするな。当然と言えば当然。俺の味方についたところで、ここでニアリスなり、神崎なりが腕を振り下ろし、全軍が襲い掛かってくれば、たった十三人、怪我人、拘束者込みの俺たちに万が一にも勝ち目はない」
「キングぅ、随分弱気ですです」
「まぁ、手持ちで一番の戦力の強華が重体。お前らも既にここまでの戦闘で負傷。ティグレ、リュミキュリテは拘束中。俺もこの様だ。無傷は非戦闘員のイチ、ニー、ドロクだけと来ている」
ルークは勝負は一瞬。
それも殆ど負けの確定したギャンブルだと考えていた。
負傷した戦闘員にまともな働きは期待できない。それでも相当な数の兵士と神崎を退けてこの場を逃走しなければならない。ついでに言えばティグレとリュミキュリテを確保したうえでだ。
「なぁ、神崎、ニアリス。最後に提案なんだが、そこに転がっている二人を開放して、俺たちを逃がしてくれると言う選択肢はないのか?」
神崎、ニアリスはルークをきつく睨むだけで何の答えも口にしない。
「言葉にするまでもないと言うわけか。いよいよ敵となってしまったな」
覚悟をしなければならなかった。
ここまで何度もそうやってきた。言葉にすれば安っぽくなってしまうから、謝罪はしない。ただ、自分を信じて彼は言葉を口にする。
ルークは背後の味方たちにだけ聞こえる最小の声でこの場を逃げ切る作戦を告げた。
その作戦にみな緊張が走る。
「は? どういう意味だ?」
ルークは「しまった」とニアリスサイドに目をやった。
そこには音を操るスキル、ルイがいる。今のような最小限の声でも筒抜けになってしまう。
時間はない。
ルークはこの場で鍵を握る二人に最後の言葉をかけた。
「最後に聞くぞ。いいんだな?」
「この場で誰かを切らなくてはならないのなら、それは私達でしょう。それに心配はしていません。あなたは魔王となり私達を生き返らせてくれるのですよね?」
「……切る。そうだな。俺はお前たちをここで切るんだ。だが、直ぐに俺は魔王となる。そして、お前たちを一番に生き返らせる。それは絶対揺るがない決定事項だ」
「ありがとうございます。なら、私達は少しだけ眠る。そう考えておきます。そして、起きた時には私達は世界を取った男の国の国民になっている」
「あぁ、最上位の貴族として迎え入れるよ」
「ふふ、奴隷だった私たちが貴族なんて夢みたい」
彼女は笑った。
ルークは胸元のポケットから何かを取り出した。
それに真っ先に反応したのは捉えられているティグレ。
「あれは」




