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異世界から来た奴がモテモテチート過ぎてウザい  作者: 痛瀬河 病
第四章 人を喰らえ、人共よ
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膿と大海

 全身を炎で焼かれたながらもその日生きる為の全ての力を、いや明日へと生きる力も全てだ。この場で出し切るのだ。

 膝が笑い、立ち上がれない。

 身体は焦げ臭く、皮膚の節々が焼け爛れている。


「ルーク様!」


 がくんと膝が抜けたのを心配し、その場にいたイチが肩を貸してくれる。反対側からドロクも肩を貸し、ようやく彼は満足に立ち上がることが出来たのだ。

 満身創痍、その言葉が今この場で最も似合う人物だろう。


「……驚いたか? 俺の悪行はこんなものではないぞ」


 そのか細い声は隣で肩を貸していたイチとドロクにしか聞こえていないだろう。ついでにドロクの背に背負っていたニーにも聞こえていたかもしれない。


「パンプキンケーキ、ルーク様が以前食べてはいけないと仰っていたのは何か細工があったからなんですね」

「あぁ、だから俺はニーのこうなった原因を作った人間だ。今、ここで捨てられても何も文句はない」

「食べるなと言ったのなら、あなたは私達に危害を加えたくないと思っていてくれたと言う事。ニーを無事に助けてくれたら忘れます」

「だが、俺にはもうそんな力は」

「忘れます」

「いや、しかし」

「忘れます」


 イチの目は叶えろと言っていた。

 ルークなら出来ると信じていた。


「そして、恩だけは忘れません」


 ルークの肩に少しだけ心地の良い重みが戻った。

 それは野望。

 叶えるべき目標。


「イチ、逃げるなら今だぞ。もう戦況がひっくり返ることはない。俺の負けだ。俺は後は生きてこの場を去ることしか考えていない。お前たちの身の安全までは保障できない」

「……心にもないことを。言ったでしょ。借りは返します」


(この場で隣りに立っていてくれるだけで借りは十二分に返せている)

 ここでルークの味方をした者はどれだけニアリスや神崎が慈悲深くても迫害は免れないだろう。


 ルークのその身にあるもの。

 逃げねばならないと言う冷静さと何故こうも全て俺は奪われなくてはならないのかと怒り。

 目の前に立つ壁。

 ニアリス、神崎、彼等に吐きかける。


「聞け! 俺は! 俺が‼ 俺がこの国を作った‼‼」


 怒りは燃える。

 燃やし尽くさなくては決して消えることはない。


「例えそうだとしても国民は、人は貴方の玩具ではありません‼」

「君のやり方で世界を平和にすることは出来ないよ」


 ニアリス、神崎の反論に、燃やし尽くさなければ消えない怒りは薄まることなく、それどころか濃く濃く燃え盛り始める。


「ならば‼ ならばだ‼‼ お前たちなら‼ お前たちなら‼‼ 変えらると言うのか‼‼ この人間が‼ 俺たち人族が最底辺で怯え続ける虫けらのような人生を‼‼‼ 絶対に無理だ‼‼‼ 結局、お前たちは似た者同士だ‼ 高い立場で、力ある上からの視点で、綺麗な言葉ばかり並べやがる‼‼ それで何が出来た? 何が変わった? 変えたのは、獲得したのは全て俺だろ‼‼ 俺が下したんだ‼ お前たちが出来ないから、それは汚い、駄目なことだ、やってはいけない、代案なんてろくに出さずに、否定ばかり立派にしてやがる。糞喰らえだ‼‼ 見て見ろよ‼ ホイホイが人類の頂点に立ったんだ‼ 誰のお陰か考えるまでもないだろ? 実績には褒賞を、成果には対価を、子供だって分かるはずだ」


 ルークは再度吠えた。

 何度でも吠えた。


「これは俺の国だ‼‼‼」


 醜い。

 それは人の醜さを集めたような演説。

 でも、それが全てだ。

 ルークにはそれが全てなのだ。

 その剣幕にニアリスも神崎も足を後退させそうになる。

 弱く、その上弱っている。そんな男の言葉にこの場にいる殆どを味方につけた者たちが後退しそうになったのだ。


「……ルーク。貴方の言う通りかもしれません。ですが、これ以上舵を貴方に任せていたら遠くない未來、この国は、いえ人類は最悪の結末を迎えるでしょう」

「……言ってくれるな、お飾りの姫」

「今はこの国の王です」


 ルークは「クハハ」と笑う。

 

「そうだ、俺の国のお飾りの王だったな」


 ルークの中の膿が零れだす。

 我慢して高く高く積み上げた物が今壊れようとしていた。


「君は自分以外の命はどうでもいいのか?」

「……神崎、それは誤解だ。俺は俺と使えると判断した命だけが大事だ。それが願いを叶える為に絶対に必要なことだからだ。お前も大事だったよ」

「……もう口を閉じろ。君も殺さないといけない奴のようだ」

「ほら見ろ、俺とお前で何が違う? ラインをどこで引いているかだけの違いだろ」

「そのどこに引くかがどれだけ大事なのか、何故わからないんだ」


 神崎は右手を上げた。

 あらかじめ示し合わせなくても意図は分かる。

 ルークをこの場から逃がさぬように各自警戒しろというサインだ。


 誰も彼もが武器を構える。


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