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異世界から来た奴がモテモテチート過ぎてウザい  作者: 痛瀬河 病
第四章 人を喰らえ、人共よ
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一人の主人公は詰みました

 ワンコのスキルにより切れ味を付加した手刀を短剣で受け止める女。彼女は深々と被ったフードを脱ぎ捨てた。


「ここまでみたいだな、ルーク」


 シシシと笑う。

 その女はどこから現れたのか誰も気が付かなかった。

 ワンコですらだ。

 まるで無音で近付き、その場にいたのだ。

 いや、まるでではない。彼女のスキルだ。



【能力名】

 調律師(ハーモニー)

【LEVEL】

 LEVEL6

 ~次のLEVELまで、二十九万七千十文字の会話が必要。

【スキル詳細】

 耳で捉えることが可能な音の波を大小、方向を変化させることが可能。

 また、完全な波をゼロにすることも可能とする。

 また、音の上限はスキル発動者が出せる音量(声)の最大までとする。

 なお、発動回数は無制限だが、連続での使用は最大十分までとし、発動時間分のインターバルが必要とする。

(例、五分発動する場合、次の発動可能になるまでに五分かかる)

 発動対象の音が自分から離れれば、離れおるほど持続効果時間も微減する。



 その名はルイ。褐色、アッシュグレーのボサボサ髪、そしてバルゴスの大切な人。


「……ルイなのか?」


 やはり一番に声を発したのはバルゴスだった。

 ギリギリと金属音を鳴らしワンコと刃物を突き合せながらルイは声のする方へ振り向く。


「おう、お前に開けられたどてっ腹の傷も治して地獄の淵から戻って来たぜ」

「ルーク様からは病院を抜け出し、行方不明だと聞いていたのに」

「こっちもこっちでお前を探していたんだけどな。どーも誰かさんの策略で鉢合わせないように仕組まれていたらしい」


 ルイはちらりとルークを一瞥した。


「ルーク、私はある組織を手を組んだ。それはこの国の根幹となる組織だ」

「根幹? 俺がこの国の全てであり、根幹だ。誰にもそれを揺らがせることは出来ない」

「それはどうかな?」


 ルイは指をパチンと鳴らす。

 それに反応し前に出た者たちの多くは何の変哲もない民衆のいくらか。強いて特徴を上げるなら女性が多い。それはそうだろう、彼女たちはこの国の国民だ。ただ、彼女たちは共通の仕事をしている。


「いくつか見た顔があるな。ミックスにとどめを刺したのはやはりお前だったか」

「あら、私は疑われていたんですね。ショックです」

「最初から全てを疑っていただけだよ、看護師長殿」


 白いマスクで顔を半分隠したその女は看護師長とルークに呼ばれた。

 彼女はこの国ホイホイで一番大きい国営病院で看護師長を務めている女だ。看護師長はルークの言葉など意にも解さぬように素通りし、ニアリスの前で跪く。


「ニアリス様、その手に持つ資料に書かれた行いは事実です。我々、医療チームの一部の金に眼が眩んだ者をルークたちは利用し、戦争負傷兵の一部をどこかへ運び出しておりました。我々が助けた命をこれ以上冒涜することは我慢できません。我々、看護師団はリン殿に指揮を執ってもらいニアリス派閥のチームとして動いておりました。コードネームは聖母。よく病院へ負傷者や病に侵された子供の為に足を運んでくださっている貴方様のことを指します。さぁ、時は来たのです。悪の権化、ルークをこの場で討伐しましょう」


 ルイはその様子を見て、ルークに言葉を投げる。


「この国の医療はもうお前の手にはない。戦って負傷しても助けてもらえないこの状況でお前についてきてくれる兵士が何人いるかな?」

「俺はお前にそこまで恨まれることをした覚えはないんだけどな」

「コノッッッ‼ バルゴスをあんな姿にしておいてよく言うな‼」

「ルイ、それは違うよ。これは自分で望んだ力だ」

「ちっ、なに寝惚けたこと言ってんだ」


 バルゴス、ルイの問答がその場の重点から逸れていく。

(そんなことはどうでもいい。医療チームが落ちたと言うことは)


「ルーク、我々チーム聖母はパンプキンケーキについても大まかな調べはついていますよ」


 駄目だ。

 当然のように詰んでいる。

 ルークの背後から踏み付けてきた過去が全て足を掴む。


(もう駄目だ。国民たちにも俺が王では自身に火の粉がかかってくると分かってしまった。そんな奴を誰も支持はしない)


 それでも立ち上がるしかない。

 地面に這いつくばったままでは何も得られないことをルークは誰よりも知っている。



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