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異世界から来た奴がモテモテチート過ぎてウザい  作者: 痛瀬河 病
第四章 人を喰らえ、人共よ
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俺の国

 ティグレ、ステニーはその場に残り、にやにやと笑う。


「珍しいものを見たな」

「うーん、お姉さんには十代の少年少女の青春は眩しいよ」

「余裕かましやがって、お前らも逃げてもいいぞ。どうせ戦闘の役には貸すほども役には立たないし、どうせ標的は俺一人だ。俺は神崎たちが合流するまで時間を稼ぐ」

「市街に逃げてはどうだ?」

「いや、城内の方が地の利もあるし、市外への被害は最小限に抑えたい」

「珍しく殊勝じゃないか」

「ここは俺の国だぞ。自分のものを壊されたいと思う人間がどこにいる」

「その前にお前が壊れても知らんぞ」

「そうなりそうなら迷わず子供でも女でも盾に使って逃げるさ」

「ふん、やっとらしいセリフだ」


 少し先に見える扉が吹き飛んだ。

 そこからゆっくりと歩いて出てきたのは『黒狩り』のリーダー、亜人族最強の男ハレル。


「まさか、俺を迎え撃つつもりか? 意外だな、卑怯者の貴様なら市街へ逃げるかと思ったのだがな」

「ふん、ほざけ」


(少し予定と違うが、仕方ないか)


 艶のある黒髪が静かに沈み、腰の『伝家』に触れる。

 距離にして二十メートル。

 ハレルが数歩踏み込めば簡単にルークを斬れる間合いだ。

 それをさせまいとルークは直ぐに手に持つ拳銃を発砲させる。

 伝家を発動させないためにハレルに斬るイメージをする時間を奪うためだ。

 弾丸をハレルは最小限の動きで躱し、前進して距離を詰めようとする。だが、ルークたちは撃ち終わったと同時に後方へ距離を取り、決してハレルの間合いに入らないよう心掛ける。


「とにかく死角だ‼ 死角に入り続けて身体を隠せ‼ 姿さえ見せていなければハレルに俺たちを斬るイメージは出来ない」


 ハレルの持つ『伝家』の攻略法としては正攻法も正攻法。拳銃と言う中距離型の武器を使うルークにとっても好ましい戦法。

 現在ルークはハレルに片腕を落とされ残りの一本で戦っている状態だ。それは鞭使いのルークにとって身体の重心のバランスが崩れ、いつも通りの鞭捌き、パフォーマンスが出来ない状態にある。

 だから、彼は現在拳銃で戦うしかない。

 だが、その近代兵器もハレルの前では大した効果を成さない。

 弾丸が向かってきた瞬間に、その軌道から斬るイメージを持てばルークの放った弾丸はハレルの射程に入った瞬間に斬り伏せられる。


 基本的に近付くことが間違いなのだ。

 ハレルの『伝家』を攻略したければ斬り捨てられないほどの圧倒的物量を持つ遠距離攻撃か、ハレルのイメージをする時間すら奪う程のスピードを持つ接近戦の二択である。

 

 城内の曲がり角を曲がった瞬間。

 ルークは床に敷かれた絨毯をめくり上げた。

 その絨毯は奇妙なことに九十度、くの字に曲がった一枚の絨毯で、めくり上げた絨毯はまだ曲がり角を曲がっていないハレル達側の方までまとめてめくり上がる。

 だからどうしたと言わんばかりにハレルは腰辺りまで巻き付く絨毯を掴んで、ルークを引き寄せようとする。


「特注だ」


 二枚の直線の絨毯を引くのではなく。

 一枚の九十度、くの字の絨毯。



【能力名】

 時間外(オーバー)労働(タイム) 

【LEVEL】

LEVEL6  

~次のLEVELまで、魔物討伐残り998体。

【スキル詳細】

 触れた相手(同時になら複数可)を、使用者の匙加減で疲労させることができる。触れるとは、肌と肌を介さなくても間接的(スキル使用者の武器を相手が素手で掴むなど)も可能とする。ただし、それは二点以上の間接を含むことはできない。

(例、スキル使用者の服の上から相手が手袋などの衣類ごしに掴んでいる場合はスキルは発動しない)

 ただし、死ぬほどの過労は不可。

 同時に、自分が相手を疲労させた程度の八割の疲労を追う。

 複数回使用の場合は、全快を百とした時、一度目に相手を二十疲労させると自分は八十四、二度目に別の相手を二十疲労させると、自分は残り六十八となる。



 ルークのスキル、武器が活かしやすいようこの城の細部は工夫が凝らしてある。


時間外(オーバー)労働(タイム)


 バチッ、とハレルの指先に違和感が与えられ、瞬時に体力の奪われていく感触に思わず手に持つ絨毯を離した。しかし、その絨毯はルークが巻き上げ、ハレルの身体に巻きついている。その時間帯にも疲労は増していく。


「こざかしい」


 ハレルは絨毯を『伝家』で切り伏せる。

 その足で曲がり角を曲がった時にはルークたちは足音だけを残して姿は見えない。


「……アメ、城の外からこの建物の外観を見てきてくれないか」

「はーい」


 肩に乗る小人のアメは廊下の窓から外に出て、ハレルの注文をこなしに出かけた。


「そろそろあいつも追いついてくるだろう。終わりは近いな」



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