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異世界から来た奴がモテモテチート過ぎてウザい  作者: 痛瀬河 病
第四章 人を喰らえ、人共よ
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成長

 ルークは全身を傷塗れにし走る。

 ティグレと二人分の足音が地下の狭い空間で反響する。


「はははっ! ざまーみろ! 無駄にいたぶって遊んでいるから逃げられるんだ!」

「馬鹿、まだ逃げきれていないぞ。直ぐに追って来る」

「ふん、ここは地下の下水路を改造工事して作った俺の庭だ。ここでならそう簡単には捕まりはしない」


 以前よりルークは外敵から身を守る意味と外からの敵を排除する意味で地下の下水路を複雑化、増設を繰り返していた。

 そして、アレーニェの率いる改造兵士である再狂士(リーカー)たちが地下を見張り外敵を排除してきた。

 まだホイホイ国内に入るまで数百メートルはあるが、ルークは既にホームに逃げ込んだ気分だ。


「間もなく戦争も終わる、神崎たちが『黒狩り』を仕留める。それで俺の手の中にはより多くの者が手に入る。獣族を‼ 亜人族を‼ そして魔王を‼ 支配するのは俺だ‼」

「私の妹を忘れてくれるなよ」

「鬼族は少数民族だ。結局、作られた時代には逆らえないはずだ。せいぜい至るとこでデモを起こす程度だ」

「前回、あれだけギタギタにされてよくそんなことが言えるな」


 ティグレの呆れ声を華麗にスルーしてルークは足元に一部膨らんだレンガを強く踏み込む。ググググッと重い音がして石レンガの壁が動いていくのをティグレは目にした。


「動く迷路だ。何か所もあるこの踏み込み式レンガでマップ自体を作り替えることが出来る。これで直ぐには追ってこれないだろ」


 ズシンッ。


 重く緩やかな音がした。

 それは切断された石レンガが地面に滑り落ちる音。

 敵を目視することは出来ないが、するまでもなくハレルたちだろう。


「……どうやら私達の足音のする方へ壁を切り捨てて真っ直ぐ向かっているらしいな」

「くそ、化け物め」


(一応、神崎たちがいない時の高戦闘能力持ちの排除策は二十パターン用意していたが、あのハレルに通用しそうなものが殆どないぞ。やはり、神崎たち待ちで身を隠す方法を取るのがベストか。なら、せっかくの地下だドロクたちの研究施設を目地すのが最適解か)


 ルークの足が真っ直ぐと行き先を定めた。




 ルークの放った緊急事態信号は戦場中に轟き、多くの味方の目にすることとなった。


「何があったんだ⁉」「ルーク様が襲われているのか?」「いや、フゴル様の方かもしれない」「俺たちはこの場にいていいのか?」「作戦では一部の戦力への帰還命令なだけで俺たちには関係ないはずだ」「だが、ルーク様か、フゴル様になにかあれば俺たちも戦争どころではなくなるぞ」


 やはりルークの危惧していた通り、味方の多くは不安感を湧き上がらせた。


「狼狽えんな‼ みっともねぇ‼」


 その声は怒気を孕み、周りの兵士たちに波及する。


「……バレッタ様」


 隣に立っていたバルゴスは彼女を見つめる。


「戦況は謎の影のスキルでごっちゃになっちまったが、基本的にはこちらが大きくリードを取ってんだ。後、半日もすれば大体の片が付く。ルークたちに何かあっても救助に私らの最高戦力が向かってんだ。いちいち狼狽えてる暇があったら、目の前の敵を一人でも多く殺せ‼」


 兵士たちは彼女の言葉に目を覚ます。

 戦闘狂であり場数を踏んできて生き残り続けた彼女だからこそ今すべきことだけははっきりと分かっていた。


「おい、バルゴス」

「なんでしょう」

「さっさと片付けるぞ。あとは残飯処理だ」

「心配なのですか?」


 バルゴスははにかんで尋ねた。

 彼にもまた守りたい人がいるからだ。


 だが、


「いいやぁ」


 バレッタは不敵に笑うだけだった。


「どう考えてもルークたちの方が面白そうな敵がいそうじゃねーか! さっさとここ片付けて向こうに向かうぞ!」


 バレッタをよく知るラブジルの兵士たちは青い空を見上げた。


(((これでも持ち場を放棄しないだけ成長してるんですよ)))


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