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異世界から来た奴がモテモテチート過ぎてウザい  作者: 痛瀬河 病
第四章 人を喰らえ、人共よ
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ダサい

 役割は時に人を縛る。

 そのせいで個人の持つ能力をフルに発揮できない時がある。

 神崎、強華はルークから与えられた役割に従順だった。敵の頭を落とすこと。つまりメアリカ、アシロの当主の首だ。

 アシロの帝王代理であるフライトをセブンズが捕縛したと言う伝令は届いた。あとは、メアリカの最大主であるウーノだけだ。

 しかし、彼女が見つからない。

 それもそのはず彼女は自身のスキルで戦場を混乱状態にし、その隙に敵の懐ホイホイ国内への侵入を図ったのだ。それを知らず、神崎と強華という最大の威力を持つ駒を使いどころのない役割で戦場に縛ってしまっている。

 これをルークの悪手と見るか、ウーノのファインプレーと見るかは意見の分かれるところだろう。


(直ぐに神崎たちに作戦の中止の信号を送り、ホイホイに呼び戻すか? いや、セブンズは戦場から拘束したフライトとオセロムを連れてホイホイの方向へ戻ってきてるはずだ。こいつらであのハレルとかいう亜人族を対処できればこの戦争の終結と『黒狩り』の処理を同時並行で進められるはずだ。だが、本当にセブンズだけで戦力が足りるのか? 『黒狩り』の構成人数もまだ不明なんだぞ)


 ルークはティグレと馬で森の中を逃亡する中、考えをも巡らせていた。後方にハレルたちの姿はまだ見えない。


「くっく、さっそく胸ポケットの小瓶の出番か?」

「馬鹿言え、あいつらを倒したところで俺が死んだら意味がないだろうが」


 ルークは頭の中で策を巡らせるも都合の良い名案は浮かばない。


「お前の読みでは戦争の方はあとどのくらいで片が付くんだ?」

「恐らくだが、単純な戦闘をちまちまやってるようじゃ一週間はかかる。何せ駒の数が互いに多すぎる。でも、相手の急所である最高戦力はうちの最高戦力で潰してる。二割から三割ほどの兵は消耗するが俺たちの勝利の形で幕を引くはずだ。だが、やはり理想は兵の消耗を抑え、短期で蹴りのつく頭を制圧することだ」

「ウーノとか言ったか、アシロの方の頭は捉えたんだろ。なら、やはり伝令を出すべきだろう。神崎、強華の位置が分からなくても戦場のどこかに入るんだろ。手当たり次第伝令をつぎ込めばどこかでそれは伝わるだろう。ウーノ一人なら一人なら神崎か、強華一人はこちらと合流させて『黒狩り』を討つべきじゃないか?」

「ティグレの癖にまともなことを言うじゃないか。そう、それが妥協して打てる最善手だろうな。だが、そのための肝心の伝令が今戦場の混乱状態のせいで機能し辛いんだよ」


 そう、ウーノは期せずして最高のタイミングで戦場を混乱させていた。ウーノのスキルで戦場を混沌とさせることでルークは細かい伝令を神崎、強華やセブンズに送り辛くなっていた。

 仮に伝令を出しても、いつ到着するか分からない味方を待つことになりそうだ。


「最悪、煙玉でホイホイに撤退の信号は遅れる。しかし、それでは二人ともを戻すことになるし、何よりその信号の意味を知る多くの兵士たちの士気を落とすことになる。自身の最高戦力の撤退なんて非常事態にほかならない。うちが優勢なのはあくまで今の状態を保ち続けた場合だ。味方の士気を落として、不安にさせればゆっくりと敵の方に天秤が傾き始める」

「ふーん、大体お前の真意は読めてきたよ。色々考えてるんだな」

「当たり前だ。この戦いを制したものが人族の頂点なんだ。大事なファーストステージを落とすわけにいかない。さっきまで俺の選択に文句はないとか言ってたくせに色々根掘り葉掘り聞くな」

「文句はないだけだ、命がかかってるんだ理由ぐらい聞きたい」


 後方にはまだハレルは見えない。

 亜人族なら高速移動のマジックぐらい持ってそうなものだがとルークは眉をひそめる。


「滑稽だな」


 視界には入らなかった。

 声だけがルークの元へ届いた。


 そして、次の瞬間には馬車がバラバラになっている。

 斬撃に斬られたように綺麗な切り口で元の木屑に戻っていく馬車。


(くそ、ホイホイまで後一キロぐらいなのに)


 ルークは戦闘態勢に入ると同時に、空へ銃に詰めた煙玉を発砲した。


「背に腹は代えられん! 神崎、強華たちを待ちつつ、ホイホイの方向へ逃げるぞ!」

「……ダサい。だが、お前のその切り替えの早さは美点だと思うぞ」


 ティグレと共にまだ見えぬハレルたちに警戒しつつ、足を走らせた。


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