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異世界から来た奴がモテモテチート過ぎてウザい  作者: 痛瀬河 病
第四章 人を喰らえ、人共よ
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寄る辺は揺れて波となる

「敵の兵士を消費してしまうけど、闇雲に敵のボスを探すより兵自体を消滅させた方が早いかも」

「今までの小国とは違う。一日作業になるし、それ以上に敵の最高戦力を抑えている二組がもたない」


 更にここは敵国よりも自国よりの地域。落とすべき城もない。

 強華は足元に転がる敵の兵士の一人の胸ぐらを掴み上げ、頭より高い位置に持って行くと低い声に冷たい視線で相手を刺す。


「あなたたちのボスはどこ? 言わないなら殺す」

「ちょっと! 強華‼」

「何、今更善人面? それはあんまりにも都合が良すぎる」

「……僕は最低限の境界は守ってきたつもりだ」


 強華は深い溜息をついて、兵士を地面に投げる。


「前々から言いたかった。神崎、ワタシはあなたが嫌い。全てが甘い。奪う側なのに、まるで奪われた側の味方のような顔をする」

「僕は誰もが奪われない世界を作りたいんだ」

「境界線なんてものは絶対に揺らぐ。何故なら、それを決めるのは自分だから。誰もかれも人の目がなく自分だけの世界では平気でズルをする。そこに制御は効かない」


 強華の金の髪に殺気が灯った気がした。

 神崎の瞳の中の光が一層輝きを増したように錯覚した。

 矛を収めたのは強華。


「……時間がない。ここでの討論に意味はない。ワタシは神崎がルークの味方である間はどんな主義主張を持っていても手までは出さない」


 強華はテントにかかった幕を上げると、神崎にも外に出るように促す。


「ここからはいくつかの選択肢が生まれる。セブンズに加勢するのも一つの手ではある。でも、ここからまた戦場の中央まで戻るのにも全力で飛ばしても数十分。なら、二手に分かれて敵陣を半壊させつつ敵のボスを探した方がいい」

「わかったよ」


 神崎に異論はなかった。

 今は互いに顔を合わせておける空気ではないので二手に分かれる案も都合がよかった。


「……ちゃんと殺すんだよ」

「……わかってるよ」


 強華が念を押し、二人は反対の方向へ別れた。なるべく兵士の流れてくる方向を読み、その先を探すように努めた。

 それが今、二人が取れる最善の策だと信じて。




 ウーノとフライトは同じ場所にはいない。

 それぞれがそれぞれの考えでスタンダードな後方部ではなく別の場所を選んだ。


「私が指揮を執る場所はここが最善だと思う」


 戦いの前、アシロのトップ、フライトはお付きのキースとノーボスの双子にだけ告げた。



「意表だ。意表が付ければなんでもいいんだよ」


 戦いの前、メアリカのトップ、ウーノは国の最高戦力であるオセロムにだけそう告げた。


 別にそれぞれ虱潰しに探されてしまえば自ずと場所は割れるだろう。

 しかし、互いに自身の従者の戦闘能力を信じて、戦況が自国側に傾くまで時間を稼げればいいと考えたのだ。


「場所が絞られなきゃいいんでしょ?」


「へへ、私の指揮なんざ、大事な場面の一回きりでいいんだよ」


 戦争の前、二人はそう言い残し、姿を消したのだ。




 人類の結末を決める戦争とは裏腹にホイホイ国内は静かだった。

 それは大抵の兵士を戦場に投入しているからなのだが、城下町の人気パン屋『ラフィジェル』ではそれどころではなかった。


「苦しい、苦しいよぉ」


 もう限界だ。

 元奴隷の少女イチは同じく元奴隷だった妹ニーの苦しむ姿を見て心を痛め、覚悟を決めた。パンプキンケーキの中毒に染まってしまった妹を店主とイチは店を閉めて一日中看護していた。それでも容体は一向に回復しない。

 ただ、パンプキンケーキだけを求め、それを欲する。


「イチ、このままじゃまずい。もう一度、病院に行ってみよう」

「それでも駄目だったじゃないですか! あそこは同じような症状の人たちに溢れて、一考に解決策がなかった」

「それでもここよりかは」


 イチは珍しく声を荒げた。

 病院ではニーと同じような症状の患者に溢れ、スタッフは大忙しだった。

 あそこではニーを助けられない、そう確信していた。


「店長さん、声を荒げてしまって、ごめんんさい」

「別に気にすることはない。たった一人の家族なんだろ」

「……はい……だからもう遠慮はしていられないんです。一緒についてきてくれませんか?」


 イチはニーの身体を起こし、そっと提案したのだ。

 見つめる先は、街の中心。

 彼女たちの希望だった。


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