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異世界から来た奴がモテモテチート過ぎてウザい  作者: 痛瀬河 病
第四章 人を喰らえ、人共よ
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捧げる全て

 オセアニアでの四国の会議から一ヶ月。

 ウーノやフライトの尽力もあって、パンプキンケーキの流入を最小限まで食い止めていたが、しかし時既に遅し。

 中毒者は国中に溢れ、今も裏の商人たちが高値で売買している。

 中には、華中、ホイホイではパンプキンケーキが公に認められているという理由だけで母国を捨て亡命するものまでいるそうだ。

 メアリカやアシロの研究機関でも麻薬ワントの対応策を探しているが、なにせ圧倒的に時間が足りない。

 このままでは国力は衰える一方、完全なじり貧だ。


「ホイホイか、華中の国内にワントを作った研究者がいるはずだ。そいつを攫うのが一番手っ取り早いだろな」


 オセロムは重々しい口調でウーノに進言した。


「分かってるよ。だが、向こうが大人しく差し出すはずがない。つまり私達側がせんそうの引き金を引くことになる」

「分かりきっていた事態じゃないのか」

「おいおいおいおい、分かっていても実際に行動に移すのはまた別だろ。このスイッチはとてつもなく重いよ」


 メアリカとアシロ、ホイホイと華中、この現在人類の四強の国がぶつかればその影響は計り知れないものになる。

 弱っているとみなされ、獣族や亜人族の今以上の侵略を受けるかもしれない。そもそもどこかの国自体が地図から消えるかもしれない。どれだけの人が死ぬかも予測できない。

 一度振るった矛は上手くおさめるタイミングは来るのだろうか。この戦争のどさくさに紛れて暴徒が湧くことも必至だろう。


「既に軍の準備はさせているぞ」

「勝手にするなと言いたいところだけど、こればっかりはありがとうと言っておこう」

「何を心配している? 兵力差は歴然だろう」

「……うん、そのはずだね」


 動かせる兵士たちの数を取って考えても明らかなはずだ。

 メアリカ十万人、アシロ四万人。しめて十四万人。

 華中五万人、ホイホイ五千人、ラブジル八千人。しめて六万三千人。

 大体にしても倍近い兵力差がある。

 これが簡単に覆るものではないことは子供にだってわか。


「しかし、それでも私達を挑発し、この形に持ってくるだけの秘策がルーク殿にはあるんじゃないかと考えてしまうよ」


 思案顔のウーノの頭にオセロムは大きな手を被せた。


「心配するな。メアリカには俺がいるだろう。現にあいつらの側近である二人には実力では圧倒していた。どんな策を用いてこようと問題はない」

「……信用は出来ないけど、信用してあげよう」


 ウーノは兵を動かす最終判断を下した。




 鏡写しの死双。

 アシロの帝王代理であるフライトの側近の双子であるキースとノーボスは、他国の兵士の間ではそう呼ばれ恐れられていた。


「キース、私達であの子を守れるかしら」

「守れるかじゃないわ、守るのよ、ノーボス」


 彼女たちは不安そうな声で話しながらも、戦闘の準備のため、長い髪を後ろで結ぶ。

 既に国にはパンプキンケーキによる中毒症状の出た民が溢れていた。子供、年寄り、兵士に女に男、無差別だ。

 諸悪の根源であるホイホイ、華中を叩く他解決策は見えてこない。


「こんな大規模な戦争は私達初めてね、ノーボス」

「えぇ、私達どころか人類史上初めてでしょうね、キース」

「これが終われば、どっちに転んでも人類は大きな転機を迎えるわね、キース」

「そうね、出来れば私達はその瞬間をあの子と見たいわね、ノーボス」


 キースとノーボスは実力者だ。

 しかし、それでもアシロで一番と言うわけではない。

 だが、それでも彼女、フライトは二人を選んだ。幼い頃から一緒に生まれ育った二人を選んだのだ。

 家令の家系である二人は、フライトの身の回りの世話を幼い頃から行ってきた。そんな二人を実の姉のようにフライトが慕うのは無理のない話だったかもしれない。

 二人もそんなフライトが可愛くて、フライトに盾突くものには徹底的な制裁を加えてきた。それが個人単位でも国単位であっても殆ど関係なしにだ。彼女たちの通り名はそこで畏怖の念を込めてつけられたものだ。

 しかし、今回は国は国でもあまりに大国、それもこの戦いの勝者には人類の命運が託されてしまうレベルだ。

 革の手袋をはめようとしたキースの手が震える。


「キース?」

「……ふふふ、聞いた? あの会議でのフライトの啖呵」

「えぇ、勿論よ。成長したわね」


 胸ボタンを留めるノーボスの指先も震えていた。

 そのことを互いに確認し合うと、異口同音に口を開く。


「「こんな時を待っていた」」


 二人は互いに微笑みあう。


「この戦さえ勝ってしまえば、人類の全てをフライトの手に収められるわ、キース」

「そうね、ノーボス。あとは、最後の邪魔なメアリカの女をどう始末するかだけね」


 彼女らの震えは武者震いだ。

 可愛い可愛い妹のようなフライトに全てを貢ぎたい。

 彼女たちの欲望は一点してそれだ。


 普段気弱だが、公の場では大人びるフライトが好きだ。

 寝起きは子供みたいに我儘になるフライトが好きだ。

 国を自由に出来る権利を持つ家柄に生まれながら、権力に溺れないフライトが好きだ。

 綺麗な髪が好きだ。匂いが好きだ。目が好きだ。口調が好きだ。太腿が好きだ。服装が好きだ、靴下が好きだ。好きだ好きだ好きだ好きだ好きだ好きだ好きだ好きだ好きだ好きだ好きだ好きだ好きだ好きだ好きだ好きだ好きだ好きだ好きだ好きだ好きだ好きだ好きだ好きだ好きだ好きだ好きだ好きだ好きだ好きだ。


 二人の部屋に上品なノックをする音がした。


「キース、ノーボス。準備は出来たの?」


 二人は血走る眼と興奮を抑えきれず溢れる鼻血を止めることもせずに返事をした。


「「はい、勿論です‼」」



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