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異世界から来た奴がモテモテチート過ぎてウザい  作者: 痛瀬河 病
第三章 祭りに群がる者たち
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エピローグ1 その後、彼の残した結末

 数人の兵士がニアリスの命を受けてバサギの死体を回収しに現場に戻ってきた。

 そこはまだ戦いの痕が生々しく残り、夜という時間帯もあってかほとんど人がいない。


「確か、ニアリス様がシートをかけてくださっているとか」

「うぅ、でもやっぱり怖いな。そいつ獣族なんだろ? それもその中でも幹部だったらしいじゃないか」

「馬鹿、もう死体だろ。ナナキさんが命懸けで倒してくれたんだ。俺たちがその程度の仕事を怖がってどうする」

「あぁ、そうだな。くそっ、ナナキさん、セブンズの中で唯一まともな人だったのにな」

「そうだな、他人に厳しく、自分にもっと厳しくを地で行く人だった」


 兵士たちが亡くなったナナキを悼みながら辺りを散策していると、お目当てのバサギの死体が見つかった。数枚の衣服をかけられ、その姿は隠されているようだ。


「あっ、これだな」

「よーし、運ぶぞ。荷車こっちだ」


 兵士たちが予め用意していた荷車を持ってくる。

 

「一応、間違ってないか確認しとくか」


 兵士の一人が死体にかかった布を剥ごうとしたその時だった。

 その一人は頭から地面に叩きつけられ絶命した。


「おや、随分臭いと思ったら、そこにいるのは僕の同胞じゃないか。迎えが遅いからこちらから出向いてしまったよ」


 闇夜の月に照らされて白と黒の混じる短髪が妖しい色を帯びる。


「お前は‼ とら―」


 その続きは言わせてもらえなかった。

 四人いた兵士は瞬きする間もなく殺された。


「『とら』の続きはなんだったんだろ? 捕らえていたはず? それとも僕の名前かな?」


 トライ。

 四老獣の一角にしてホイホイに単独で向かい神崎に返り討ちにあった男。

 中性的、というより女性的な見た目に騙されてはいけない。

 彼の中にはドロドロとした自由だけを愛する薄汚い雄の欲望が詰まっている。

 現在はニアリスたちの住んでいる城の地下牢に捕らえられていたはずだが、本人とルークや神崎のような数人は知っていることだが、彼ほどの身体能力の化け物を捕らえておく牢はホイホイにはない。出ようと思えばいつでも出られたのだ。


「迎えにまさか君が来てくれるとはね、バサギちゃん」


 トライはバサギに被せられた布を剥ぎ取った。


「……ト、ラ……イ…………さん?」

「やっぱり生きてた」


 驚くことにそこにいたのはバサギの死体ではなく。

 虫の息ではあるものの生きているバサギだった。

 あれほどのダメージを負って瀕死状態とはいえ生きているバサギ。やはり獣族の生命力は群を抜いていた。


「結構酷くやられたみたいだね。相手は誰だろ」

「………………」


 バサギは答えない。

 と言うより答えるだけの力がまだ回復していない。


「いや、言いたくないならいいんだ。人間にも手強いのがいるって僕も身に染みて分かったからね。中でもこの国はやばいのが多い」

「………………」


 バサギのただれた肌が夜風に沁みる。

 確かに彼女に油断もあった。人間を見下していた。

 それでも本来負けるような相手ではなかった。


「僕はこの国に訪れて人間って生き物を再評価したんだ。面白い。特にここは混沌が渦巻いている。僕の予想だともうじき破裂する。混沌はこの国から漏れだして世界に伝播するよ」

「………………」

「あっ、そうそうせっかく迎えに来てくれたんだっけ? じゃあ、一緒に行こうか」

「(ぱくぱく)」


 相変わらず要領を得ない会話に戸惑ったが、救助の意思はあるようでバサギは安心して口をパクパクと開閉させた。


「この辺だっけ?」


―ザクッ!


 バサギは胸部を裂かれ、心臓を鷲掴みにされた。


「ト、……ライ!」

「うんうん、君の無念は分かるよ。人間なんかにコケにされて辛かったろう。その無念はぜひとも一緒に晴らそうね」


―ボシュッ!


 トライはバサギの心臓を取り出し、鮮血飛び散る中、その心臓を自身の頬に充てる。

 そして、恍惚とした表情を浮かべるとそれを口に含んだ。


「うん、流石に四老獣の心臓は格別だ。ん? これじゃあ三老獣かな。でも、これで僕らは一つになったね」


 トライは何かを確認するように手の平を開閉させ、納得したように頷く。

 そして、国を出る方向へ歩いていく。


「せっかく僕好みの世界になってきたんだ。僕がそれを一番に楽しむには僕自身が強くなくちゃ面白くないよね」


 トライはどこまでも奔放に闇夜を歩く。




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